君の友達になりたかった

茉夜ママ

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一章

理由

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 彼女は案の定、学校に行かないのではなく、行けないという人だった。
事情を聞いてみようと思ったが、彼女からしてみれば僕は見知らぬ男だ。話してくれないのではないのだろうかと思った。
しかし彼女は普通に話してくれた。
「学校に行けないのは病気とかではありません。中学校の方から入学拒否されたんです」
思いがけない彼女の言葉に僕は驚いた。
「え、中学校って義務教育じゃないの?」
「そうなんですけど、私だけはどこも入れるところなくて・・・例外なんですよね、きっと」
彼女は普通にそう言ったけど、そんなことがあるのだろうか?
僕は不思議でしょうがなかった。
「えっと・・・なにがだめだったの?」
聞いていいのかわからなくて、遠慮気味に聞くと、彼女が急にこう言った。
「もし、その理由がわかる日が来るまで、私と友達になってくれませんか」
あまりにも唐突で言ってる意味がわからなかったけど、彼女は真剣だった。
その理由がわかる日が来るまで?
人に知られてはいけない理由なのか?
 戸惑っている僕の顔をみて、彼女は寂しそうに微笑んだ。
「ごめんなさい。学校に行ってないから、こんなふうにしか友達を作れなくて・・・。私が学校に行けない理由を知った人はみんな離れていってしまいます。すごくショックだし、悲しいし、寂しいけど、それが現実ってものです。もう慣れました。だからこういうことにしてるんです。きっとあなたも、私とどれだけ話して仲良くなれても、理由を知ったらいつか遠ざかってしまうと思います。・・・だから、その理由がわかる日まででかまわない・・・です」
彼女の声は最後の方は小さくてよく聞こえなかった。慣れたと言いつつも、悲しくて仕方ないのだろう。僕だって、仲のいい友達が離れていくのは嫌だ。でも彼女にとって、その何らかの理由のせいで何人もの友達を失ってきたのだろう。
僕は胸が締め付けられた。そして気づいたらこう言っていた。
「僕はずっと友達でいる。君が抱えている理由がどんなものであれ、友達で・・・はっくしょい!」
「大丈夫ですか?」
「うん、はっくしょい!・・・なんだろう、風邪かな?」
「そうかもしれませんね、今日はもう帰った方がいいかもしれません」
僕はその言葉でゆっくり立ち上がった。彼女に振り向き、
「明日もここにいる?」と聞いた。
彼女は嬉しそうに微笑んで、
「はい!」と答えた。
僕はベンチをあとにした。
家路に着いた時にはくしゃみは止まっていた。
一時的なものだろうか・・・。
 僕には今日、友達ができた。初めて、女の子の友達ができた。
わけアリみたいだし、不思議な子だったけど・・・とても綺麗で、可愛らしい子だった。



 彼がベンチからいなくなって、私は空を見上げた。
もう空が暗くなり始めている。帰らなきゃ。
「本当に、不思議な人だったな・・・」
そう呟きながらも、私の口元は緩んでいた。
 彼がくしゃみしていた理由は、きっと風邪ではない。私はそう確信していた。
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