死を見る僕と、明日を夢見る君

シミテクト

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プロローグ

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今から少し、僕についての小話に付き合ってもらいたい。

その前に、前提として「死」とはどんなものとあなたは考えているだろうか。「死」とはタイミングを見計らって来る様なものではない。明日のご飯は何食べようかとか、あの子かわいいなとか、そういった事を考えてる間にふと訪れて、当人が気づいた頃にはもう遅い。それが「死」である。

しかし、僕にはその誰にも分からず、理不尽なはずの「死」というものが見えるという特徴がある。正確に言えばこれから死ぬ人、つまりあと寿命が1ヶ月を切った人の背後に、黒いモヤが見えるのだ。

僕がその黒いモヤ初めて見たのは、自分が12歳の頃である。小学校の校長先生が朝から長い話をしていた時だ。

(はなく終わらないかな…)

などと考えながら校庭の砂に最近はまっている戦隊モノの絵を描いていたときに、ふと斜め前の伊藤くんを見た時に、うっすらと黒いモヤが見えたのである。

最初はただの見間違いか何かだと考えて気にも止めていなかったが、その後も伊藤くんの背後から黒いモヤは消えず、むしろ数日たつと濃くなっていく一方であった。

そして、初めて黒いモヤを見てから1ヶ月後、伊藤くんは居眠り運転をしていたトラックに轢かれてしまい、帰らぬ人となってしまった。

それに対して恐怖を覚えた僕は先生や親に言ったが相手にされず、勘違いだと諭された。

それ以降も幾人かの人にはこの謎の症状を告げたが、信じる人は一向に現れずむしろ変な事を言うやつだと周りから馬鹿にされるようになってしまった。

終いにはこれが原因で小学校では一部の男子達から悪質ないじめを受けてしまい

「死神!」「悪魔!」「気持ち悪い」

などと毎日罵声を浴びる毎日になってしまった。

そのいじめは中学校に入っても終わることはなく、中学生になっても気持ち悪い奴という噂を同じ小学校からきた奴に広められてしまい、小中学校の思い出は散々なものとなってしまった。

この状況を危惧した両親は遠く離れた高校で知り合いのいない高校を受験させてくれて、僕は新たな一歩を踏み出すことになった。

いま思えばこれが僕の一生忘れられない出来事に繋がったのだと思う。

高校も近くの高校を受験していれば、僕は彼女に出会う事もなかったのだろう。そして彼女に出会わなければ、この不思議な力を憎むこともなかったのだろう。

…さて、僕が今から話す物語はお涙ちょうだいの感激話でなければ、抱腹絶倒の笑い話でもない。この話は僕が味わった救いもなく、慈悲もない、まぎれもない「悲劇」だ。
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