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憂鬱な通学路
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「和臣はやく起きなさい!学校遅刻するわよー!」
「…ん…あと…2時間…」
「は・や・く!!」
「…はい」
朝から母親に怒鳴りつけられながらベッドから身体を起こす。
なぜベッドはこれほど人を縛り付けるのだろう。これは一種の魔法か呪いがかかってるに違いない。つまり僕が今からもう一度ベッドにダイブしてもそれは僕のせいではない。つまり僕はもう一度この呪いのかけられた忌まわしき寝床につかざるを得ないのではないか。
…とか無駄な事を考えていたがここで早く起きないと母にまた怒鳴られてしまう。 母は基本は優しいのだが、一度怒ると前世は般若ですかと言いたくなるほど怖い本性が出るため、ここはすぐ起きておこう。
洗面所に行き顔を洗い朝の支度を進める。ほんとこの朝の支度が一番めんどくさい。早くこの一連の流れを一気にできる機械とか作ってほしいものだ。
「ふあぁ…おはよかず兄」
「ああ、おはよう琴音」
このあくびをしながら話しかけてきたのは琴音、僕の2つ下の妹である。実の妹に対してこういう事を言うのはなんだが、琴音は綺麗な顔立ちをしている。鼻筋を綺麗に通っており、眼もぱっちりで可愛らしい。それに対して僕の顔面は中の中の中。普通オブザイヤーを取れそうなくらい普通だ。両親には僕にも妹のような優秀な遺伝子をわけてほしかったものだ。
「早くご飯食べて家出ないと遅刻するわよー」
「「はーい」」
朝ごはんを食べ高校に向かう。高校に入って1ヶ月が経つが、両親が気を使ってくれて地元から少し高校に通わせてくれたため、小中学校のようなくだらないいじめを受けている事もない。
新しい高校では友達もたくさんできて、楽しい生活を送っている…とは言い難いのが現状である。
だって考えてくれ。小中学校はいじめられてしかこなかったため、まともに友人と話した事も無いのにいきなり知らない人しかいない環境に入れられて友達作れとか難易度高すぎませんか?
そんな感じで高校に入った所で、いじめは確かになくなったが友達はすこぶる少ない。そろそろ本腰を入れて皆に話していかないと修学旅行や体育祭などの学校行事が全て嫌な思い出になりかねない。早く頑張って話しかけないとな。
今日こそ友達を作るために誰かに話しかける決意を決めていた時、前から小学生の女の子の3人グループが楽しそうに話しながら歩いていた。
(ああ、またか…)
そのうちの真ん中を歩いている女の子の後ろには黒いモヤが見えた。この子は1ヶ月以内に何かしらが原因で死んでしまうのだろう。不慮の事故か、病気か、それとも殺されるのか。はたまた何か別の原因があるのかは分からないがこの子はこれから1ヶ月以内、明確に言うと30日以内には死んでしまう。
そのタイミングがいつくるのかは分からない。僕が今まで黒いモヤを見てか死ぬまでの時間が最も長かった人が30日だったというだけだ。そしてその逆に最も早かったのが3日だった。
その経験から考えて最長で30日、早ければ数日と考えているのだが、もしかしたら実際はもっと長い人もいるかもしれないし、逆にあと数時間といった人もいるかもしれない。黒いモヤが濃いほど死が近いのは間違いないのだが、明確な日付までは分からないのだ。
ただ1つだけ確かなのが、僕に黒いモヤが見えた人は必ず死ぬ。
それだけはどれだけ足掻いてももがこうとも、変えられない現実なのである。
(あの女の子はまだ10歳くらいだろうか、僕になにか出来ることがあればいいのに…)
女の子は友達と楽しそうに話しながら僕の横を通り過ぎていった。彼女は自分の時間が残り短い事が分かってなどいないだろう。まだこれから明るい未来が待っているはずの子が亡くなってしまう。これ以上に悲しい事があるだろうか。
「…………あぁ、くそ。」
僕はその女の子を追いかけた。気がついたら動いていた。
「ねえ、お嬢ちゃん」
「うん?わたし?どうしたの?」
「最近物騒だから帰り道とかは気をつけてね。車とかにも気をつけて。」
「うん、わかった!ありがとうお兄さん!」
そう言って女の子は笑って友達と歩いていった。
しかし、友達とコソコソ話しながらこっちをチラチラと見ている。多分怪しく思われているのだろう。不審者じゃないから通報だけはやめてくれよ頼むから。
こんな事をしても意味は無いのは分かっている。今までも多くの手を尽くしてきた。自分に出来る事なら何でもやってきた。
しかし現実は無情であり、僕が何をしようとも結末は同じであった。自分が何をしようとも結果は変わらないのである。
それでも、それでも何もせずに見過ごす事が出来るほど僕の心は強くはないのである。だから、少しでも変わる可能性があるなら何でもやってみたいのだ。
(損な性分だよな、ほんと)
前を向き、学校へ向けて歩き出した。このままでは遅刻である。
次は自分の友達がほとんどいないという現実と向き合って友達作りに励まなくてはならない。
「はあ、なんで皆あんなに仲良いんだよ、僕にもそのコミュ力分けてくれよ…」
何はともあれ、そろそろ友達作りを本気で頑張らないと高校生活もぼっちまっしぐらだ。華々しい高校生活には程遠い。
(今日は1人ぐらい誰かに話しかけてみるか…)
とりあえず1人は友達を作ろう。話はそれからだ。
「…ん…あと…2時間…」
「は・や・く!!」
「…はい」
朝から母親に怒鳴りつけられながらベッドから身体を起こす。
なぜベッドはこれほど人を縛り付けるのだろう。これは一種の魔法か呪いがかかってるに違いない。つまり僕が今からもう一度ベッドにダイブしてもそれは僕のせいではない。つまり僕はもう一度この呪いのかけられた忌まわしき寝床につかざるを得ないのではないか。
…とか無駄な事を考えていたがここで早く起きないと母にまた怒鳴られてしまう。 母は基本は優しいのだが、一度怒ると前世は般若ですかと言いたくなるほど怖い本性が出るため、ここはすぐ起きておこう。
洗面所に行き顔を洗い朝の支度を進める。ほんとこの朝の支度が一番めんどくさい。早くこの一連の流れを一気にできる機械とか作ってほしいものだ。
「ふあぁ…おはよかず兄」
「ああ、おはよう琴音」
このあくびをしながら話しかけてきたのは琴音、僕の2つ下の妹である。実の妹に対してこういう事を言うのはなんだが、琴音は綺麗な顔立ちをしている。鼻筋を綺麗に通っており、眼もぱっちりで可愛らしい。それに対して僕の顔面は中の中の中。普通オブザイヤーを取れそうなくらい普通だ。両親には僕にも妹のような優秀な遺伝子をわけてほしかったものだ。
「早くご飯食べて家出ないと遅刻するわよー」
「「はーい」」
朝ごはんを食べ高校に向かう。高校に入って1ヶ月が経つが、両親が気を使ってくれて地元から少し高校に通わせてくれたため、小中学校のようなくだらないいじめを受けている事もない。
新しい高校では友達もたくさんできて、楽しい生活を送っている…とは言い難いのが現状である。
だって考えてくれ。小中学校はいじめられてしかこなかったため、まともに友人と話した事も無いのにいきなり知らない人しかいない環境に入れられて友達作れとか難易度高すぎませんか?
そんな感じで高校に入った所で、いじめは確かになくなったが友達はすこぶる少ない。そろそろ本腰を入れて皆に話していかないと修学旅行や体育祭などの学校行事が全て嫌な思い出になりかねない。早く頑張って話しかけないとな。
今日こそ友達を作るために誰かに話しかける決意を決めていた時、前から小学生の女の子の3人グループが楽しそうに話しながら歩いていた。
(ああ、またか…)
そのうちの真ん中を歩いている女の子の後ろには黒いモヤが見えた。この子は1ヶ月以内に何かしらが原因で死んでしまうのだろう。不慮の事故か、病気か、それとも殺されるのか。はたまた何か別の原因があるのかは分からないがこの子はこれから1ヶ月以内、明確に言うと30日以内には死んでしまう。
そのタイミングがいつくるのかは分からない。僕が今まで黒いモヤを見てか死ぬまでの時間が最も長かった人が30日だったというだけだ。そしてその逆に最も早かったのが3日だった。
その経験から考えて最長で30日、早ければ数日と考えているのだが、もしかしたら実際はもっと長い人もいるかもしれないし、逆にあと数時間といった人もいるかもしれない。黒いモヤが濃いほど死が近いのは間違いないのだが、明確な日付までは分からないのだ。
ただ1つだけ確かなのが、僕に黒いモヤが見えた人は必ず死ぬ。
それだけはどれだけ足掻いてももがこうとも、変えられない現実なのである。
(あの女の子はまだ10歳くらいだろうか、僕になにか出来ることがあればいいのに…)
女の子は友達と楽しそうに話しながら僕の横を通り過ぎていった。彼女は自分の時間が残り短い事が分かってなどいないだろう。まだこれから明るい未来が待っているはずの子が亡くなってしまう。これ以上に悲しい事があるだろうか。
「…………あぁ、くそ。」
僕はその女の子を追いかけた。気がついたら動いていた。
「ねえ、お嬢ちゃん」
「うん?わたし?どうしたの?」
「最近物騒だから帰り道とかは気をつけてね。車とかにも気をつけて。」
「うん、わかった!ありがとうお兄さん!」
そう言って女の子は笑って友達と歩いていった。
しかし、友達とコソコソ話しながらこっちをチラチラと見ている。多分怪しく思われているのだろう。不審者じゃないから通報だけはやめてくれよ頼むから。
こんな事をしても意味は無いのは分かっている。今までも多くの手を尽くしてきた。自分に出来る事なら何でもやってきた。
しかし現実は無情であり、僕が何をしようとも結末は同じであった。自分が何をしようとも結果は変わらないのである。
それでも、それでも何もせずに見過ごす事が出来るほど僕の心は強くはないのである。だから、少しでも変わる可能性があるなら何でもやってみたいのだ。
(損な性分だよな、ほんと)
前を向き、学校へ向けて歩き出した。このままでは遅刻である。
次は自分の友達がほとんどいないという現実と向き合って友達作りに励まなくてはならない。
「はあ、なんで皆あんなに仲良いんだよ、僕にもそのコミュ力分けてくれよ…」
何はともあれ、そろそろ友達作りを本気で頑張らないと高校生活もぼっちまっしぐらだ。華々しい高校生活には程遠い。
(今日は1人ぐらい誰かに話しかけてみるか…)
とりあえず1人は友達を作ろう。話はそれからだ。
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