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ボロボロの宝箱
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「……いたい」
真っ暗で何も見えない中、私は仰向けに転がりそう呟いた。
一体どれほどの高さから落ちたのだろうか。
「〈光源〉――うわっ」
魔法で明かりを確保し、周囲を確認してみると、思わず声を漏らしてしまった。
あまりの凄惨な光景に口元を押さえ、目を背ける。
積み重なって山となった狼たちが、私のクッション代わりになってくれたみたいだ。
可哀想ではあるが、生きている幸運を噛みしめ、魔法で穴を掘り狼たちを土葬する。
手を合わせ黙祷。私は狼たちに感謝した。
「さて、どうしようかな……」
おそらくダンジョン下層のどこかだとは思うのだが、こんな場所は知らない。
パーティーを転々としていた頃、何度かこのダンジョンに潜ったこともあり、下層まで足を運んだこともある。
しかし、何百年も人が利用していることもあり、「始まりの洞窟」にはどこの道にも魔鉱石の明かりが設置されている。
故に、こんなに真っ暗な道などある筈もないのだが、もしかすると未探索の通路でも発見してしまったのだろうか。
それを理解した途端、口角が吊り上がるのを感じた。
助けを望めないこの状況で、どうやら私はワクワクしているみたいだ。
「まあ、悩んでいても仕方ないよねぇ~。どうせ最後なんだし、楽しんでみますか。……どうか強い”侵略者”は出ませんように」
そうして私は、未探索だろう通路を歩き始めた。
これが最初で最後の自分の冒険。どうしよう、ドキドキが収まらない……っ!
◇◇◇
――そんなドキドキも、長くは続かなかった。
ほんの数分、通路をただ道なりに歩いただけ。
小さな、安宿の一室ほどの小部屋に辿り着いてしまった。
小部屋の中央にボロボロで年季の入った宝箱が置いてあるくらいで、他の通路も存在しない。
狼たちの墓所からこの小部屋まで大体二百メートル。私が落ちた場所も行き止まりだった。
つまり、ここは「始まりの洞窟」の中で、完全に隔離された空間だということだ。
「……あれ、もしかして、私の人生ここで終わり……?」
いやいや、まさかまさか。そんなことがあるわけ……。
とにかく、私は自分のこれからを後回しにして、目の前に置かれた怪しげな宝箱に目を向けることにした。
こんなボロボロの宝箱がポツンと置かれているだけ。いかにもな罠じゃない。
ダンジョンには、「ミミック」って言う宝箱に扮した”侵略者”もいるとケイトに聞いている。
絶対それだ。間違いない。とりあえず、足元に落ちていた小石を宝箱目掛け放った。
カツンッ………………シーン。
特に何も起きなかった。
警戒しつつ、近づいてみるも動く気配はない。
ええい、女は度胸! 私は勢いよく宝箱を開いた!
「なに、これ……?」
宝箱の中身は、私の拳と同じ大きさの綺麗なルビー。かなり大きい。売れば絶対お金になるわ。
それと、宝箱と同じくらいボロボロで年季の入った一枚の紙切れ。
どうやら文字が書いてあるみたい。……読めないわ。一体どこの国の文字?
それら二つを見比べ、頭を悩ませていると、突然ルビーが光を放った。
「え、なに? まぶしっ」
あまりの眩しさに、目を細め手で目元を隠し遮光する。
しばらくそうしていると、徐々に光が収まってきた。
やっと収まったと思い、目を開けようとしたそのとき――
「……ふわぁ~あ。随分と長い間眠ってしまったみたいだね。一体どれくらいの時が経っていることやら。おや、君は誰だい?」
場にそぐわぬ可愛らしい誰何する声。
目を開けて確認してさらに吃驚。
「――へ?」
私の眼前でふわふわと浮かんでいる、額に先ほどのルビーが嵌めこまれたモフモフなリス。
……いや、リスにしては大きいし、耳長いし尻尾二股だし、浮いてるし。
何なんだ、この不思議生物は。
「どうしたんだい? そんなに呆けた顔をして。ボクの愛らしい姿に見惚れてしまったのかな? ふふん、相変わらずボクは女性を魅了してしまうみたいだ。
――それはさておき、自己紹介をしておこうか。ボクはカーバンクル。未だ主を得られずいるしがない使い魔さ。せっかくこうして出会えたんだ。仲良くしようじゃないか」
この不思議なカーバンクルとの出会いが、私の運命を変えた――。
真っ暗で何も見えない中、私は仰向けに転がりそう呟いた。
一体どれほどの高さから落ちたのだろうか。
「〈光源〉――うわっ」
魔法で明かりを確保し、周囲を確認してみると、思わず声を漏らしてしまった。
あまりの凄惨な光景に口元を押さえ、目を背ける。
積み重なって山となった狼たちが、私のクッション代わりになってくれたみたいだ。
可哀想ではあるが、生きている幸運を噛みしめ、魔法で穴を掘り狼たちを土葬する。
手を合わせ黙祷。私は狼たちに感謝した。
「さて、どうしようかな……」
おそらくダンジョン下層のどこかだとは思うのだが、こんな場所は知らない。
パーティーを転々としていた頃、何度かこのダンジョンに潜ったこともあり、下層まで足を運んだこともある。
しかし、何百年も人が利用していることもあり、「始まりの洞窟」にはどこの道にも魔鉱石の明かりが設置されている。
故に、こんなに真っ暗な道などある筈もないのだが、もしかすると未探索の通路でも発見してしまったのだろうか。
それを理解した途端、口角が吊り上がるのを感じた。
助けを望めないこの状況で、どうやら私はワクワクしているみたいだ。
「まあ、悩んでいても仕方ないよねぇ~。どうせ最後なんだし、楽しんでみますか。……どうか強い”侵略者”は出ませんように」
そうして私は、未探索だろう通路を歩き始めた。
これが最初で最後の自分の冒険。どうしよう、ドキドキが収まらない……っ!
◇◇◇
――そんなドキドキも、長くは続かなかった。
ほんの数分、通路をただ道なりに歩いただけ。
小さな、安宿の一室ほどの小部屋に辿り着いてしまった。
小部屋の中央にボロボロで年季の入った宝箱が置いてあるくらいで、他の通路も存在しない。
狼たちの墓所からこの小部屋まで大体二百メートル。私が落ちた場所も行き止まりだった。
つまり、ここは「始まりの洞窟」の中で、完全に隔離された空間だということだ。
「……あれ、もしかして、私の人生ここで終わり……?」
いやいや、まさかまさか。そんなことがあるわけ……。
とにかく、私は自分のこれからを後回しにして、目の前に置かれた怪しげな宝箱に目を向けることにした。
こんなボロボロの宝箱がポツンと置かれているだけ。いかにもな罠じゃない。
ダンジョンには、「ミミック」って言う宝箱に扮した”侵略者”もいるとケイトに聞いている。
絶対それだ。間違いない。とりあえず、足元に落ちていた小石を宝箱目掛け放った。
カツンッ………………シーン。
特に何も起きなかった。
警戒しつつ、近づいてみるも動く気配はない。
ええい、女は度胸! 私は勢いよく宝箱を開いた!
「なに、これ……?」
宝箱の中身は、私の拳と同じ大きさの綺麗なルビー。かなり大きい。売れば絶対お金になるわ。
それと、宝箱と同じくらいボロボロで年季の入った一枚の紙切れ。
どうやら文字が書いてあるみたい。……読めないわ。一体どこの国の文字?
それら二つを見比べ、頭を悩ませていると、突然ルビーが光を放った。
「え、なに? まぶしっ」
あまりの眩しさに、目を細め手で目元を隠し遮光する。
しばらくそうしていると、徐々に光が収まってきた。
やっと収まったと思い、目を開けようとしたそのとき――
「……ふわぁ~あ。随分と長い間眠ってしまったみたいだね。一体どれくらいの時が経っていることやら。おや、君は誰だい?」
場にそぐわぬ可愛らしい誰何する声。
目を開けて確認してさらに吃驚。
「――へ?」
私の眼前でふわふわと浮かんでいる、額に先ほどのルビーが嵌めこまれたモフモフなリス。
……いや、リスにしては大きいし、耳長いし尻尾二股だし、浮いてるし。
何なんだ、この不思議生物は。
「どうしたんだい? そんなに呆けた顔をして。ボクの愛らしい姿に見惚れてしまったのかな? ふふん、相変わらずボクは女性を魅了してしまうみたいだ。
――それはさておき、自己紹介をしておこうか。ボクはカーバンクル。未だ主を得られずいるしがない使い魔さ。せっかくこうして出会えたんだ。仲良くしようじゃないか」
この不思議なカーバンクルとの出会いが、私の運命を変えた――。
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