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人間社会とは
しおりを挟む「や、槍って投げるとあんな風になるのねぇ~……」
思わぬ結果に動揺し、私は震える声で弁明しようと画策した。
しかし、私の思惑はミルフィによって即座に破られてしまう。
「まさか。王国の騎士団長様が槍を投げたとしても、ああはならないよ。それこそ、古代の英雄クラスでないと」
「――やめて。それ以上言わないで」
私に現実を突きつけないで。
理解できない事態には目を背けるってあの日誓ったのよ。
「どうしてそこまで見て見ぬ振りをしようとしているかは知らないけれど、君は別に悪いことをしているわけでもなし、むしろこの素晴らしい結果を誇るべきだ。投げやり一つで大群を消滅できるのだから」
「だ、だって……こんなの、人間に出来ることじゃないじゃない」
「うん、そうだね。それは否定しないよ。ただの人間にこんなことできるはずもない。アリスが特別なんだよ。だから、自信を持つといいさ」
自信なんて持てるはずもなく、余計不安になるわ。
簡単な話、人間とは理解し得ない力を持つ者を排斥しようとする生き物だ。
自分の理解の範疇を超えた存在を黙認できない。人間とはそういうもの。
出来が悪くても、逆に良すぎてもダメ。
初めは自分にない力を持つ人を羨望する。しかし、次第に時間が経つにつれ、羨望は嫉妬へと変化していく。
膨れ上がった嫉妬は、いつしか抑えきれなくなり、徒党を組み圧倒的な数で一人を迫害するようになる。
何か特別なきっかけでもなければ、膨らんだ嫉妬を覆すことなど到底無理な話。
迫害の対象とされた者は、甘んじてそれを受け入れるしかない。
それが人間社会というもの。その縮図のような世界に一時期在籍していた私が言うのだから間違いない。
「急に人間社会の仕組みについて考え始めたと思えば……不安になっている原因は、自分が排斥の対象になるかもしれないということかな? だったら心配することはない。むしろ圧倒的な力を見せつければ、誰もアリスに何かしようだなんて思わないのだから」
「そうすると、今度は孤立ね。人というのは完全に無関心ではいられないのよ。孤立している人間に対しては、陰でひっそりと多で攻撃してくるの。表立って行動しない分、尚質が悪いわね」
「むぅ。人間とは実に面倒な生き物だね。ボクも未だに理解できないことが多いんだ」
そう、人間とは本当に面倒な存在だ。かくいう私も人間ではあるのだが。
そしてさらに言うなら、人間とは立場を明確にしたがるのだ。
自分の立ち位置を明確にしなければ気が済まないというか、自分の立場を明確にすることで、より自分の人間性を保とうとする。
その立場において、もっとも強いものが権力だ。権力の最たるものが今まさに私の近くにいる王女様のような王族たち。
彼女を批判するわけではないが、よく小説に出てくる王族や貴族など強い権力を持つ人間は、増長して描かれることが多い。
彼らは自分が誰よりも上の存在であると、自負しているのだろう。
自分より優れたものを嫌い、自分より下の者を見下す。
アカデミーにいた貴族子息なんかは特にそういう者たちばかりでうんざりするほどだった。
「こんなこと考えてる場合じゃないわね。とにかく、私は普通でいたいの。変に力があると思われて、厄介事に巻き込まれるのはごめんだわ。だから、今回のことは内緒にしておいて。マリーさんたちもそれでお願いしますね」
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