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軽いノリで
しおりを挟む「さて、これまで一階層二階層と探索してきたわけだが……」
二階層で見つけた小さな小部屋。
大量のスケルトンが敷き詰められていた部屋を、軽くお掃除し休憩し始めた途端、ミルフィがそう前置きを入れて話し始めた。
「……一向に宝箱が見つからないね。スケルトンやゾンビがアイテムをドロップするわけでもないし、目的のアミュレットが実在するのかも怪しくなってきたねぇ」
暢気に紅茶を飲みながらそう言うミルフィ。
王女様が不安そうにしているから、そういうことを言うのはやめなさいよね。
メイドのアリーさんがどうにか励ましているが、王女様自身もミルフィの言葉を完全に否定できず、不安が拭えないのだろう。
「……確かに、そうですね。もしかしたら、私たちはただの噂に踊らされているのかもしれません。ですが、何もせず黙って姉の死を見届けるわけにはいかないのです! 少しでも可能性があるのなら、私は奇跡に縋りついてでも、手を伸ばし続けます!」
「ひ、姫様……っ。ご立派になられて……アリーはどこまでもついていきます!」
俯いていた王女様が顔を上げ、毅然とした態度でそう言い切った。
強い人だ。心の底からそう思う。アリーさんなんて感動しすぎて号泣している。
私と同じことを思ったのか、ミルフィが嬉しそうに笑った。
「いい覚悟だね。アリス、君はどうかな?」
「そうね。まあ、依頼されたのだし、途中で投げ出すわけにもいかないじゃない。マリーさんが最後まで諦めないのなら、私もそれに付き合うまでよ」
「その言葉を聞けて良かったよ。それじゃ、今後の方針を少し変えようか」
ミルフィがニヤッと笑った。
何だか嫌な予感がしてきた。さっきの言葉を少し後悔し始めたのだが……。
こういう顔をしている時のミルフィは、大抵無茶ぶりをしてくる。
ここ最近の私の経験が、そう確信している。
「とりあえず――このダンジョンを攻略してしまおうか」
――……ほらぁ! 思った通りじゃない!
一瞬何を言われたか分からなかった王女様たちも、徐々に言葉の意味を理解し、唖然としている。
ミルフィは、これまで数多くの探索者が挑んで、未だ誰一人として攻略できなかったダンジョンを、軽い調子で攻略してしまおうと言い放った。
相変わらず、頭のぶっ飛んだ使い魔だ。自分がおかしなことを言ったとは露程も思っていない。
「……ねえ、自分がおかしなことを言っていることを自覚した方がいいわよ? エドですら攻略できないダンジョンを、私たちで攻略できるとでも思っているの?」
「まあ、難易度はかなり高いとは思うよ。ただ、無理だとは思っていないさ。五分五分かな? 君たちの力を最大限に活かせれば攻略も不可能ではないと思っているよ」
一ミリも悪意など感じない。
私たちならできると、そう確信している瞳だ。
「……仮に攻略できたとして、目的は達成できるの?」
「『呪詛返しのアミュレット』だったかな? 名前からして相当高レアなアイテムだと思う。そういうものは大抵ボスがドロップしてくれるのが鉄板だよ。攻略者として名を上げられるし、アイテムも手に入るかもしれない。まさに一石二鳥だ」
「絶対にそうなるとは限らないじゃない」
「……アリス、この世に『絶対』だとか、『百パーセント』なんてものはあり得ないんだ。結局はやってみなければ、何もわからないし始まらない。ボクは君たちの意志を尊重するよ」
私たちは互いに顔を見合わせた。
アリーさんは動揺していつものようにあわあわしている。
私も心の中では同じ気持ちです。
マリーさんだけが、覚悟を決めた眼をしていた。
マリーさんは私たちの手を取り、強い力のこもった瞳を向け、頷く。
そんな顔をされては、私も覚悟を決めるしかないみたい。
「……私は、やります。元より、この命懸けて姉を救う所存ですもの」
「君は、近年稀に見るいい王女だね。賞賛されて然るべき心根の持ち主だ。他の二人も……覚悟は決まったみたいだね。それじゃ、こんな陰気臭いダンジョンなんか、サクッと攻略してしまおう」
そんな、散歩に行くような軽いノリで言わないで。
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