物理最強信者の落第魔法少女

あげは

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呪詛洞穴 ボス戦②

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 どうしてこうなったかは分からない。
 いつもそうだ。私の知らないところで勝手に話が進んでいる。
 今、私は穂先が白い炎に包まれた長槍を持たされ、ミルフィに無理矢理結界の外へと追い出されそうになっていた。

「行くんだ、アリス。これならきっとあの骨にも届くはずだよ」

「ち、ちょっと待ちなさいって。少しくらい説明してくれてもいいじゃない! 槍だけ渡されて行ってこいとか、ありえないって!」

「大丈夫。君なら絶対に何とかなる。なんせ、ボクが見込んだ魔法少女だからね。いつか見せた彼女を模倣するといい。ボクが知る中で最強の槍使いだからね」

 それだけ言うと、ミルフィは私の背を思い切り押し、結界の外に追い出した。
 結界を囲んでいたスケルトンナイトの視線が、全て私に集中した。

「ひっ」

 骨の剣を振り回し、数百以上のスケルトンナイトが一斉に襲い掛かってきた。
 さすがに恐怖! 
 正直なところ、私こういうのあまり得意じゃないんですけどー!

「ええい、もう! こうなったらやってやるわよ!」

 いつか見た記録の槍士を思い浮かべる。
 華麗で、鮮烈で、それでいて嫋やか。長い黒髪をはためかせ、流麗な舞を披露するように槍を振るう美女。
 彼女の戦う姿は、敵味方関係なくあらゆるものを魅了する。

『彼女は太古の武術国家で最も有名な女槍士だよ。ひとたび戦争に出れば、一騎当千。彼女に憧れて槍を手に取る女性が絶えなかったほどだ。……まあ、その女の子たちの気持ちは分からなくはないけどね。本当の彼女は槍なんて持ちたくはなかったと思うよ。普通の女の子として生きたかったはずだ。彼女の選んだ道に、ボクがとやかく言えることではないけどね』

 その女性の記録を見た後のミルフィの言葉を思い出す。
 口ぶりから、知り合いのような雰囲気を醸し出しているけど、一体ミルフィはどれくらい生きているのだろうか。
 未だミルフィには秘密が多い。今度、根掘り葉掘り聞きだすとしよう。

 考え込んでいると、目の前に骨剣が迫っていた。
 私は大きくと息を吐き――。

「――ふっ!」

 槍を振るう。
 一振りで数十の骨の頭が飛ぶ。さらに穂先を包む白炎が移り、スケルトンナイトの体を燃やし尽くす。

「……〈模倣エピゴーネン:スカーハ〉」

 残りの魔力を惜しげもなく消費し、全身を強化する。
 そうすることでやっと女槍士の動きを模倣できるようになった。
 それでも、この魔法には代償があるけど、この局面を打開できるのなら文句はない。

 槍を構え直し、スケルトンナイトの大群を、縫うようにして通り抜ける。
 端から見れば、その動きはとても遅く感じるだろう。
 しかし、攻撃が当たることは一度もない。
 全てを回避し、一寸の狂いもなく槍を当てる。
 槍を一振りするたびに頭蓋が飛び、周囲に白炎を散らす。
 マリーさんとアリーさんの魔力を合わせた”浄炎”。魔を払う聖なる炎だ。
 それで焼かれたスケルトンナイトは灰すら残さず消えていく。

『――相手の攻撃は全部躱す。こちらの攻撃は全て当てる。絶対に負けない。簡単でしょ?』

 そんなわけない。脳がはち切れそうなくらい集中している。
 彼女はこんなことをずっとやっていたのか。昔の人って凄いわね。
 そんなことを思っていると、気が付けばスケルトンナイトはいなくなり、私はいつの間にか浮遊しているエルダーリッチに肉薄していた。
 骸骨だから表情とか分からないけど、おそらく吃驚しているみたい。
 咄嗟に杖を振るおうとした右腕を切り上げ、勢いのままに頭から叩き割った。

『バ、バカナ……我ガ、コウモ易々トォォォォォ……』

 半分に叩き割れたエルダーリッチは、白い炎に包まれながら消えていった。
 それを皮切りに、ダンジョン全体の呪詛が消え、ダンジョン内が明るく照らされたのだった。





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