物理最強信者の落第魔法少女

あげは

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外の世界は……

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 それからツバキ先生の家に行き、出ていった数年間のことを話した。
 王都に行って「アカデミー」に入学したこと。紆余曲折あり退学し、辺境の街で探索者を始めたこと。どんな冒険をしてきたか、これまでの数年間の私の歩みを全て包み隠さず伝えた。
 先生は、特に何も言わず黙って聞いてくれた。
 先生の事だから、勝手に家を出ていくからだとか、相変わらず馬鹿な弟子だなとか、言うと思ったけど。
 私の話が終わると、先生はグラスに注いだワインを一口呷り、呆れたような表情で私を見た。

「バカにされて何も言い返さないとか……あんた、そんなドMだったの?」

「そんなわけないでしょ!! 変な事言わないでください!!」

「いや、だってなぁ……そう思うじゃない。ねぇ?」

 先生はケイトとミルフィに視線を向け、同意を求める。
 ケイトはちらりと私を見ると、困ったように苦笑いを浮かべた。

「アリスがドMなのは否定しないね。何年も蔑まれながらも、甘んじて受け入れていたんだから。そんなの特殊な性癖を持つ人でなければ我慢できるはずもないよ」

「だから、違うって言ってるでしょ!」

 変なことを口にする使い魔を捕まえようとするも、ふわりと浮きながら軽々と避けられてしまう。
 こいつっ……イラっとするわね!

「まあいいわ。家でした娘が帰ってきたってことで許してあげる。それに、『アカデミー』に入れたのも私のおかげだから、それも忘れないでね」

「え……どういうこと?」

「ただの辺鄙な村娘が王都の最高学園に入れるはずもないじゃない。ちゃんとあらかじめ推薦状を送っておいたのよ。退学するとは思わなかったけど。あと、黙って家を出たと思っているけど、あなたが家を出たことなんて知ってたわ。だから、前もって魔法をかけておいたの。この森を出たら私の記憶が封じられるように。途中で弱音を吐いて私を頼られても困るし、外を知る丁度いい機会だと思って」

 ……衝撃的な事ばかりで頭が追いつかない。
「アカデミー」に推薦状? 記憶が封じられるように魔法をかけた?
 じゃあ、私は何も知らずに家出をした記憶もなく、これまで過ごしてきたというの?
 私のこれまでは、一体何だったと言うのか……。

「アリス、一つだけ聞くわ。外の世界はどうだった?」

 外の世界はどうだったか。なんて質問の答えは決まっている。
 王都の学園でいろいろ言われてきたけど、探索者になって多くのことを経験してきたけど、間違いなくこれだけは自信を持って言える。

「……大変でした。いろいろ言われたり、価値観が違ったり、私の力が通用しなかったり、認めてもらえなかったり。多くのことを経験し、多くのことを学びました。外での数年間は、とても酷いものだった。ただ楽しいとは言えないし、面白かったとは言えない。でも、いい人たちと巡り会えもした。私と友人になってくれた、私を理解しようとしてくた人もいた。それに……私にとって大切なお姉ちゃんもできた。一言だけ、言葉にするとしたら――悪くなかった」

「……そう。ならいいわ」



 ◇◇◇



 夜も更け、アリスとケイトが深い眠りについたころ。
 リビングではツバキが一人、小さな灯りだけの部屋でワインを嗜んでいた。
 その表情はどこか嬉しそうで、少し切なさも感じ取れた。

「――まさか、君がアリスの師匠だとは思ってなかったよ」

「それはこっちのセリフ。どうしてあの子なの? 確かに素質はあるかもしれない。それでも、あの子にはなってほしくなかった……魔法少女なんか」

「そう邪険にしないでおくれ。長い眠りについていたボクにはあの子しかいなかった。たまたまタイミングが良かった、というのもないわけではないけどね」

「いつもそう。世界を守るためとか言って、自分たちの都合を何も知らない子供に押し付けて……わかっているの? あの子がこれから進む道がどれだけ」

「わかっているとも。一度、通った道だ。でも、同じ道を歩むつもりはない。アリスとは違うからね。アリスはアリスの思う通りの道を進むはずさ」

「アリスが自分で選んだのなら、否定はしないわ。それでも……あの子に何かあったらただじゃおかないから」

「わかっているさ。ああ、それと君に見せたいものがあるんだ」

 そう言うと、ミルフィは虚空から一枚のボロボロの紙片を差し出した。
 訝し気に受けるも、それを目にした瞬間、ツバキは瞠目した。
 文字はかすれて所々消えてしまっているが、辛うじて読める部分もあった。
 それを指でなぞると、ツバキの頬を涙が伝う。

「これ……もしかして……」

「ボクが封印されていたダンジョンの宝箱に一緒に入っていた。彼女の手記だ。おそらく他にもあるんだろう。ボクはアリスと共にそれを探すことにした。君にはそれを読めるように復元してほしい。何せ――が読めるのは、この世界で君だけなんだから」




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