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結局
しおりを挟む青い空! 白い砂浜! 照りつける太陽! 見渡す限りの水平線!
……ハイ、海です。
ツバキ先生の転移魔法により、王国最西端の森から最南端のリゾート地までやってきました。
所要時間、一瞬。瞬きをしている間についてしまった。
驚きすぎて言葉も出ない。もっと心の準備とかさせてほしかった。
とは言え、いつかは来てみたいと思っていた王国のリゾート。観光地として有名で街は多くの人で賑わっている。
それとは正反対に、私のいる砂浜には人影が無かった。
先生曰く、「プライベートビーチよ。魔女として当然じゃない」ということらしい。
何が当然なのか疑問符が浮かぶが、この際細かいことは気にしないようにしようと思った。……考えても無駄なのだ。
「……それで、一体何をしているのかしら?」
私が呆然と砂浜で立ち尽くしていると、ミルフィが勝手に私の衣装を変化させている。
白いワンピースに麦わら帽子、髪を魔法で黒髪ロングに。
私の周囲をくるくると飛び回り、うんうんと頷いていた。
「やっぱり海辺と言えば、このスタイルが鉄板だよね。素晴らしいよ。黒髪も似合うじゃないか」
「勝手にあんたの趣味に付き合わせないで! 先生たちは?」
「あっちでパラソル立てて南国気分を味わっているよ。ケイト嬢もノリノリみたいだ。実にいい気分転換になるんじゃないかな」
ミルフィの視線を追うと、大胆な黒い水着を着てサングラスをかけた先生が、パラソルの下に椅子を設置し横たわっている。
隣にあるテーブルの上には、フルーツの盛り合わせとワインの瓶が置いてあった。
その隣、同じように椅子に横たわった白い水着のケイトが、先生の作ったホムンクルスのメイドに団扇を仰がせていた。
さっきまで私と同じように理解を諦めていたはずなのに、すでに満喫していた。
先生の家に来てから、ケイトの神経も図太くなっているみたいだ。
「アリスはどうするんだい? ボクたち以外には誰もいないから、気兼ねなく海を謳歌できるけど」
「……私、泳げないし」
「それなら浮き輪を作ろう。それに乗って浮かんでいるだけでも優雅な時間になるさ。水着は……そうだね、〈転身〉すればいい。”戦闘衣装”ならいざという時、水泳支援の機能も付いているからね」
「……万能すぎる装備って、人をダメにしそうね」
「人を守るためだからね。少しくらいやりすぎなくらいが丁度いいのさ」
ミルフィに言われるがまま〈転身〉し、浮き輪の上で海をプカプカと浮かんでいる。
海の冷たさが照りつける太陽の暑さを緩和し、とても心地が良い。
波は穏やかで、適度に風が吹く。さざ波の音に耳を澄ませると、より平和を感じた。
ああ……このまま流されるように生きていきたい。晴れ渡った空に願う。
……そんなささやかな願いすら、私には許されないらしい。
私のお腹に乗って眠っていたミルフィが突然起き上がった。
だらけ切ったまま、私はミルフィに意識を向ける。
「どうしたのぉ?」
「ツバキから伝言だよ。『丁度そこらへんの海中に、攻略済みのダンジョンがあるわ。下級ダンジョンだから、今のアリスなら特に問題はないでしょう。隈なく探索して、隠し通路を見つけなさい。制限時間は、そうね……夕飯までにしようかしら。それじゃ、頑張りなさいな』ってさ」
「……修行じゃん。羽目を外すだとか気分転換だとか言っていたけど、結局稽古の一環じゃない。それに夕飯まで? あと六時間で? 攻略済みとは言え、何の情報もないダンジョンを探索して隠し通路を見つけろ? 先生って、やっぱり私のこと嫌いなのかな……」
「これも愛だよ。ツバキは照れ屋さんだからね。時間もないしさっさと行こう。ボクたちなら大丈夫さ」
ミルフィに引きずられ、うなだれたまま私は海中に潜った。
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