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黒鮫退治
しおりを挟む「――はぁっ!」
投げた槍が一直線に鮫の頭に突き刺さる。
これで鮫は残り二体。他の鮫がやられていく中、一向に扉の前から動こうとしなかった二体の鮫だけ。
他の鮫に比べ体長は倍近く、体の色は真っ黒で怪しく光る赤い眼に威圧感を感じる。
あの二体だけは、他とは比べ物にならないくらい強い。私の本能がそう感じた。
「……ミルフィ、あれ出して」
「おや。近づくのは嫌がっていたじゃないか」
「さすがに投擲であれを倒せるとは思えないし」
「確かに、あの二体はちょっとレベルが違うね。ツバキの指示には反するけど、ここは少し手を貸そうかな」
そう言うと、ミルフィは私に魔法をかけた。
生半可な攻撃では傷一つ付けられないほどの結界。薄い膜のようなものが私の全身を覆う。
それに加え、虚空から私のお気に入りの長槍を取り出した。
「戦闘衣装とは言え、その露出では危ないからね。単に頑丈になるだけの結界だけどないよりはマシさ」
「ありがとう。助かるわ」
槍を握りしめ、扉の前に佇む鮫に向かって飛び出した。
全力で身体強化を施しているからか、地面を走っている時と同じ速度で泳げている。
徐々に近づいているが、一向に動く気配はない。このまま動かないのなら槍の一突きで倒せるだろう。楽に終わりそうだ。
と思っていたが、残り数メートルまで近づいた瞬間、鮫の目が光ったと思うとどこからか取り出した巨大な斧を振り上げた。
身の危険を感じ、咄嗟に体を捻り進路を強引に変更。
次の瞬間、私の体のすぐ横を目にも止まらぬ速さで斧が通り過ぎた。
後から響く轟音。地面が砕け、激しい衝撃で渦潮のようなものが生まれる。
突然発生した渦潮に呑み込まれまいと地面に槍を突き立て耐える。
しかし、鮫は一体ではない。一体が動き出したということは、もう一体の鮫も動いているに違いない。
「まずっ……」
咄嗟に身を屈めた。その私の頭上を斧が通過する。
もう一体の鮫が、私に向かって巨大な斧をぶん投げていたようだ。
もししゃがんでいなければ、今頃体が真っ二つに切断されていたことだろう。
ここ数ヶ月で、「呪詛洞穴」以来の死の気配を感じ取った。
「アリスー。遊んでないで、早くしておくれー」
「遊んでるわけないでしょ! こっちは真剣なの! ちょっと黙ってなさい!」
後方で傍観しているミルフィの暢気な声に苛立つ。
こんな危険なところで遊んでるわけないでしょ!
っと、ミルフィに構っている場合ではない。鮫が斧を振り上げた。もう一体の方も、どこに置いてあるのか斧を投げる準備をしている。
このままここにいるのは危険。現状を打開するため、私は上を目指した。
これまで洞窟のような通路は狭かったが、生憎扉の前は天井が高い。
急に視界から私の姿が消え、鮫たちは私を見失った。
どうやらそこまで賢くはないようで、頭上ががら空きだった。
「ちょっともったいないけど、これでも食らいなさい!」
さっきの斧のせいで真っ二つに分かれた槍に魔力を込める。
魔力の込め過ぎで今にも破裂しそうな感じがする。
しかし、すでに二つに折れてしまっているのだ。有効活用するべき。
それに武器ならミルフィにまた作ってもらえばいい。
「いけぇぇぇ!!」
というわけで、破裂寸前の槍を鮫の頭を目掛け投げつけた。
折れた二本の槍が鮫の頭に突き刺さったその時、耐え切れず槍に込めた魔力が鮫の内部で爆発を起こす。
頭から弾け飛んだ鮫は、行動不能に陥った。
だが、安心するのはまだ早い。意外と頭が無くなっても動く生き物はいる。
だからちゃんと最後まで確認を怠ってはいけない。地面に倒れた鮫に近づき確認。
うわっ、自分でやっといてなんだけど、ちょっとエグイな……。
「大丈夫。もう動かないよ。魔力の過剰送入による爆発で倒すとは、中々エグイことを考えるね。恐れ入ったよ」
「もうやらないわ。こんなもの見たくないもの。それより、とっとと行きましょう」
感心するミルフィを促し、私たちは扉を開けて中へと入って行った。
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