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寝起きでいきなり
しおりを挟む「――というわけだから、とりあえずダンジョンに来たよ」
「いきなりすぎるのよ……」
朝早くからミルフィに叩き起こされたと思えば、導かれるがままにギルドへと連れていかれ、ミルフィとケイトが話しているのをぼんやりと聞き、気が付けば私はダンジョンの目の前に連行されていた。
隣には今にも眠りそうな様子でボーっと立ち尽くしているアイマイ姉妹。
彼女らも無茶ぶりの被害に遭ったらしい。かわいそうに……。
「ちゃんと説明しなさい!」
「簡単な話、二人の実力を図るなら実戦が一番だと思ってね。じゃないと、どう鍛えていいか分からないからさ。そこで、おあつらえ向きにダンジョン都市となった辺境には、いろんなダンジョンがそこら中に生えている。比較的簡単なダンジョンについての情報をケイトに聞き、寝起きの君たちを連れてきたというわけさ」
「……どうして寝起きで連れてくるのよ」
「……まあ、ほら。ボクってサプライズ好きだろ? つまりそういうことさ」
知らん。
そんなの初めて聞いたわ。
あんたの趣味で人を振り回すのはやめなさい、と何度も言っているはずなのだが、この使い魔には聞き入れてもらえていない。
そろそろご主人様の恐ろしさをわからせてやる必要があるかしら。
「まあまあ、そう怒らないでおくれよ。時間は有限、だろ? 早く鍛え上げてアイもマイも立派な物理最強信者にしよう。三人も揃えば無敵じゃないか!」
いつの間にか私も数に入れられていた。
ミルフィほど熱狂的ではないが、確かに私も物理攻撃一番!みたいな考え方が染みついている。
だって……魔法と違って速いし、気持ちがいいし、なんか楽し――いや、ち、違うんだからっ!
「誰に取り繕っているのか知らないけれど、そろそろ行くよ~。二人とも、これを飲んで」
ミルフィはぼんやりしている二人に、小さなカップを渡した。
中に入っているのは真っ黒な液体。匂いからしてコーヒーかな。
二人がカップに口をつけると、寝ぼけ眼が急激に覚醒した。
「「にっがぁぁ!!?」」
どうやらこの上なく苦かったらしい。
二人とも顔を顰めて犬のように舌を出している。
「ヘブンのマスター特製スーパーブラックコーヒーだよ。製造方法は企業秘密だそうだ。どんな寝坊助でも一口で目が覚め、二日は寝なくても活動できるようになるらしいよ。これからダンジョンに入るんだ。いつまでも寝ぼけてないで気合を入れておくれ」
ミルフィがそう言うと、姉妹は静かに頷いた。
マスター特製コーヒーは効果抜群だったようで、二人とも眠気はどこかへ吹っ飛んでいったみたいだ。
いざ、ダンジョンに入ろうとする二人の表情は少し強張っている。
探索者になって初めてのダンジョンだ。緊張しているのだろう。しかし、その瞳から少しのワクワクが見て取れた。
この先にどんな冒険が待っているのか、楽しみにしているようで、二人とも探索者に向いているかもしれない。
期待に胸を膨らませる二人の後から、私もダンジョンに足を踏み入れた。
◇◇◇
彼女たちがこれから挑むダンジョンは、普遍的な洞窟型のダンジョン。
三階層でほぼ一本道。難易度もそう高くなく、初心者向けと言われていた。
――ダンジョンが発生した当初は。
攻略され、初級練習用ダンジョンとなっていたそこは、誰も知らぬ間に姿を変えていた。
彼女らはその脅威に、戸惑うことになるだろう……――。
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