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一章 旅立ち
問題発生?
しおりを挟む王都を出てから五日。
現在、辺境の途中にある街に入るため、門の前の列に並んでいた。
今日はこの街に泊まるのだ。宿も取ってあるとか。スペードさんは仕事ができる人だ。
今やっと半分くらいだろうか。ここまでは何事もなく穏やかに進んでいる。と思いたいです。ハイ。
――なんでこんな微妙な反応なのかって。わかっているくせに。
問題の三人組のせいに決まってるでしょ?
あの後五人組パーティーの子たち――『紅#クレナイ#』というパーティー名らしい。お揃いの紅のスカーフを腕に巻いている。――はちゃんと名乗った。というかジルさんに名乗らされていた。
生意気そうな剣士はグリッド、女好きな槍士はルージ、気弱そうなタンクはノットというらしい。
魔導士姿の女の子たちはミミとキキ、双子だったみたいだ。
それより!とにかく大変だった!この男三人の相手をするのは。
グリッドはいちいち私に絡んでくる。コネで昇格しただとか、弱いくせに調子に乗るなとか。
なんなのほんと!否定すると勝負しろとか言ってくるし。相手をするのが面倒で無視すると付きまとってくるし。イライラするっ!
そう思ってたら最近ではルナちゃんが威嚇するようになりました。もちろん魔法は使ってません。唸ったり、猫パンチしたり、ひっかいたり。普通の猫と同じです。
……まぁ捕まえようとすると霧になって触れなくなるけど。
そのおかげであまり絡まなくなってきました!ありがとうルナちゃん!お礼にたっぷりモフモフしてあげる!
ちなみにルージもルナちゃんが追い払いました。彼は事あるごとに口説いてきました。ルージのひどい所は話を聞かないところです。本当に頭どうなっているのだろうか。
今は近寄ってこないのでいいですが。
ノットは周りに迷惑をかけることが多い。完成した料理を落とす、よく転ぶ、タンクなのに盾になれない。本当に冒険者なのだろうか、この子は。私に対してあまり害はないが、スペードさんとジルさんが特に困った表情をしていた。
そんなわけで他の女の子たちと仲良くなりました。最初に私を見てたのは、髪と服が気になっていたからだそうです。手入れの方法や服について話していたら、だんだん打ち解けてきたみたいで、今ではメイさんも入れて四人で仲睦まじくお話ししています。……たまにジルさんも参加してくるけど。
なんだかんだと旅は順調なのです。
「ニャ~」
おっと。ルナちゃんがお呼びのようです。
意識を現実に戻す。やっと入れるみたいだ。
「これから宿に向かいます。さすがに個室ではないですが、何部屋か取っているので部屋割りは各自で話し合ってください。荷物を置いたら今日は自由行動になさってくださって構いません。明日もよろしくお願いします」
スペードさんがそう言うと、馬車が宿に向かって動き出す。
今のうちに部屋割りを決めろということね。
「男と女で分ければいいだろう。何部屋かって言っても多くて二人部屋四つだしな。あとはそれぞれで決めればいいさ」
ジルさんが言った。
完璧な提案だ。さすがCランク冒険者。手慣れてるなぁ。
……私もCランクでした。いや、まあ、そこはなんというか、まだCランクになったばかりだから、多めに見てほしいっていうかさ。
とにかく私のことはいいのです。そんなことより今日の予定を聞いとかないと。
「荷物置いたら自由行動ですけど、なにかあります?買い出しとか」
「そうだなぁ。足りなそうなもんは俺が買っておくよ。この先の情報収集はリリナに任せてもいいか?」
「わかりました。それじゃ私はギルドに行きますね」
「おう、よろしく。他は街の中好きに見て回っていいぞ」
「「「やった!」」」
「ただし!変な事はするなよ。特にルージ。一応依頼で来てるんだからナンパは無しな」
「………………ハイ」
あ。しょんぼりしてる。ナンパしようと思ってたのかこいつ。
見境ないなほんと。
「キキ、どうする?」
「とりあえずお散歩しよ。ミミ」
双子ちゃんは相変わらず仲良しだ。ほほえましい。
この二人私より年下だったのだ。お姉さんになった気分。……胸以外は。
むなしくなってきた。あとでルナに慰めてもらおう。
「私はリリナとギルドに行くわ」
「メイさん、ジルさんと買い出し行かなくていいんですか?」
「そんなのこの筋肉に任せればいいわ」
「……おい。別にいいんだがその言い方はちょっと……」
ジルさんが傷ついていた。意外と繊細な人なのだ。
話している間に宿についてので、それぞれ行動を開始する。
私とルナとメイさんはギルドに向かう。
宿から少し歩いたところにおなじみの看板。王都より少し小さい建物のギルドについた。
「そんなに冒険者の数がいませんね」
「そうね。宿場町だからもう少しいると思ったのだけど……依頼にでも行っているんじゃないかしら」
「確かにそうですね。とりあえずカウンターに聞きに行きましょう」
少し閑散としたギルド内を歩いてカウンターへ向かう。
受付嬢は一人しかいなかった。
「本日はどうされました?」
「ちょっと聞きたいことがあって……依頼で辺境領に向かっているんだけど、最近何か変わったことはないかしら?」
集めるのはこの先の街道の情報。魔物の分布とか盗賊が住み着いてないかとか、少しでも情報があれば対策が立てられるのだ。
「そうですね……。最近魔物の出現報告が増えているんですよ。今までの比にならないくらいの数で、しかも辺境の方から来てるみたいなんです」
「そんなに?」
「ええ。あと珍しい魔物も発見されました。最近だと……ああ、ジャイアントホーンの群れですね」
「ジャイアントホーンの群れ?こんなところになんで……。もっと山奥に住んでいるはずでしょう」
確かに変だ。
ジャイアントホーンとは、体長三マイトルほどで大きな角が特徴の鹿の魔物である。
穏やかで滅多に人を襲うことはない。普通は山奥に住み着いていて、たまに迷い込んだ個体が発見される程度だ。
それが群れでだなんて。
「それに、発見されたジャイアントホーンの群れは気性が荒く、冒険者が何人か襲われて。軽傷でしたが、おかしいことばかりですし。他の魔物も多いしで、今人手が足りなくて。辺境に向かう商人の方たちにも、今は街に留まってもらっているんです」
「そうなのね……。わかった。ありがとう、助かったわ」
「いえ、これも仕事なので。手が空いたらこちらの依頼もお願いします。でも……気を付けてくださいね?」
「もちろんよ」
とりあえずギルドを出る。
「メイさん、どうしますか?」
「まずは戻りましょう。スペードさんとジルも交えて話し合う必要があるわ」
そう言って私たちは宿に戻った。
何日かはこの街に滞在することになりそうだ。
一体何が起こっているのやら……。
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