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一章 旅立ち
白い毛玉
しおりを挟む次の日には、魔物はほとんど討伐されていた。
たまたま通りがかったAランクパーティーがいたみたいだ。
……うん。彼らではないな。そんなことはしないだろうし。
残っている魔物はランクの低い魔物だけだ。ゴブリンとかコボルトとか。
そんな感じだから、元の森の様子に戻ったと言えるだろう。
留まっていた商人たちも動き出した。
だが、私たちは気をつけなけれなばならない。
辺境では何があるのかわからないのだから。
とりあえずギルドには報告してある。対策はそちらが何とかするだろう。私たちは巻き込まれないように注意するだけ。
というか、ミーシアさんが言っていた通りになっている気がする。
早速面倒事に巻き込まれた。いくら何でも早すぎじゃないかしら……。
「いきなりこんなことになるなんて。運が悪いなぁ。そう思わないルナちゃん?」
「ニャ~?」
「だよねぇ~」
「……リリナ。傍から見たら完全に変な人よ?」
失礼なっ。これは私とルナちゃんのスキンシップですっ。
同室のメイさんが呆れたような顔で言ってくるので、心の中でそう返す。
直接言ってもメイさんには敵わない心の中で言います。
「それより、あなたは買い物に行かないの?明日には出発するって言ってたわよ」
「えっ?ほんとですか?それを先に言ってくださいよ。もちろん行きますとも。ルナちゃんのおやつがなくなりそうだったんです」
この前買ったはずなのにもうなくなっている。早くない?
ルナちゃん少し食べすぎじゃないかしら。丸くなってきた気がする。
これ以上重くなったら肩には乗せられないわよ?
「ニャニャッ」
太ってきたなんて失礼なっ!と言わんばかりの猫パンチ。
図星なのだろうか。ごはん減らして運動しましょうね。
とりあえずモフモフを堪能する。丸くなってきているが、これはこれで気持ちがいい。
やっぱりモフモフよね。うんうん。
「……」
だからメイさんそんな変な子を見るような目で私を見ないでください。
私は普通の女の子ですから。
「ほら、行きましょう。私も一緒に行くわ」
「メイさんも行くんですか?」
「ええ。ちょっと矢の補充をしないとね」
そういってメイさんは部屋を出た。私も準備しなきゃ。
いつもの格好に着替え、ルナちゃんを伴い部屋を出た。
◇◇◇
街に出た私たちはルナのおやつを調達し武器屋の前にいた。
「私、武器屋って入ったことないんですよね」
「あら。どうして?」
「正直私武器とか使わないですし、短剣も貰い物ですからね」
前は家に残っていたママの短剣を持っていた。今はミーシアさんにもらったものがある。特に必要もなかったので来ることはなかったのだ。
「そうなのね。冒険者なのだから少し見るだけでもしといたほうがいいわよ」
「そういうものですかね」
そう言って私たちは武器屋に入った。
剣だけでなく槍や弓、斧、あらゆる武器が乱雑に置いてあった。
うわぁ。壮観だなぁ。
初めてみた光景に少し興奮する。
「私、矢を買ってくるから」
「あ、は~い」
でもこういうのって何を見ればいいのかしら。
違いが分からない。見てわかるのは形だけだ。まぁ自分が使ってるわけではないからこんなものか。
とりあえず、雰囲気だけ楽しんでいると、ルナが肩からいきなり飛び出していった。
そのまま外に出てしまう。
「えっ?ルナ!?」
とにかく追いかけなきゃ。私もお店を出て走り出した。
ルナは私を待っていたかのように少し先で止まっていた。
……どこかに連れて行こうとしている?あ、また行っちゃった。
ルナの後を追い、走り続けると薄暗い小道についた。
「ルナ?どこ行ったの?」
「ニャ―」
声は聞こえるがよく見えない。どこだろう。こっちかな?
ルナを探して歩き回る。だんだん声は近くなってきた。
「あ。いた。ルナ、急に飛び出さないでよ~。どうしたの?」
「ニャン」
ルナを見つけたがあれは……。
なんだろう毛玉?白いふわふわの物体をルナが転がしていた。少し小汚い。
「ダメだよ、ルナ。汚れちゃうでしょ」
「ニャ~」
ルナを抱き上げると抗議の鳴き声。
何?毛玉がどうかしたの?
白い毛玉をよく見ると、形がはっきりしてくる。というか毛玉にしては少し大きすぎないだろうか。
丸いはずなのにルナと同じくらいの大きさがある。
これって毛玉じゃないの?
ルナを下ろして小汚い毛玉をもち上げる。
……えっ。あったかい。少し埃っぽい感触があるが毛自体はふわふわしている。
というかこのぬくもりは生き物だよね?
――よく見るとその毛玉は、真っ白な犬でした。いや、狼?どっちもいっしょか。
……どうしようよくわからないけど拾っちゃった犬を放置できないよね。かわいそうだし。でも寝てるだけだ。飼い主がいるかもしれない。
いろいろ考えるが、どうしても気になることがあった。
――この子、お風呂できれいにしたら最高のモフモフじゃない?
私の心は決まった。とりあえずこの子を持ち帰ろう。
いやそれよりもまずこの後に来る嵐を何とかしなければならない。
「――リリナ。勝手に一人で、いなくなるなんて、いい度胸ね?」
後ろからドスの利いた声が聞こえてくる。
……メイさん……それは……女の人が出す声じゃありませんよ……?
そんなこと言えるはずもなく、この後宿に帰って二時間お説教されました……。
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