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一章 旅立ち
ブラウ
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「わんわん!」
「こら!おとなしくしなさい」
私が今何をしているか。
もちろん、拾ったモフモフを綺麗にしているところです。場所は宿の大浴場です。
ついさっきメイさんのお説教が終わりました。とても怖かったです……。
毛玉みたいに丸まっていたワンコは、眠っていただけでした。
私がお説教を受けている最中に起きた。そのおかげでお説教が終わったと言っても過言ではない。ありがとう。
「わん!」
だから動かないでって。泡が飛んでくる。
私がこの子を洗っている間も尻尾はブンブン。いつの間にか懐かれたみたいだ。どうして?
「リリナ、その子どうするの?飼い主探したりとか、明日までじゃ時間ないわよ」
「そうですよね。最悪ギルドに預けることも考えてますけど……」
正直首輪がついていないから飼い主がいるかどうかもわからない。それに魔物って感じもしない。
……この子はいったい?
とりあえずきれいにしてモフモフを堪能しようとは思っている。
なぜならこの子は最高のモフモフを持っていると私の直感が囁いているのだ!
まずはこの子をモフモフしてから考えよう。
「ほら、流すからじっとしてなさい」
優しくゆっくりとお湯をかけ、泡を流す。
あぁ、やはり。きれいな白銀に輝く毛が現れた。
私の見立て通り。あとはお風呂を出てメイさんに乾かしてもらえば完璧だ。
ちなみに今ルナちゃんはいない。あの子はお風呂が苦手なのである。そういうところは普通の猫と同じみたい。
「メイさん、もう出ますか?」
「う~ん。もう少しいるわぁ~」
「じゃあ私も」
ワンコを抱き上げ、メイさんの隣へ。ルナより大きいから重い……。
この子はお風呂好きなようだ。お湯につけると泳ぎだす。
さりげなく隣をちらり………………でかい。
何だろうこの差は。おかしい……。
いいもん。私はこれからだから!
「それで?ほんとにどうするの、この子?」
「……正直なところ迷ってます」
「連れていくのは反対しないわ。普通の犬があんなところで寝てるなんておかしい。それにルナが過剰に反応してたんでしょう?なら何かあると思うわ。
それでも連れていくのならギルドで登録しなさい。何かあってからでは遅いからね」
「……そうですね」
これは責任の問題だ。拾ったからにはちゃんと面倒を見る義務がある。
ただ私にはルナもいる。もしこの子が普通じゃないとしたら、これ以上珍しい生き物を連れて歩くのはどうかと思ってしまう。ミーシアさんとも約束したし。
「今日はゆっくり考えなさい。ほら、もう出るわよ」
「はい」
お風呂を出て部屋へ。
部屋へ戻るとベッドでルナが丸まっていた。
私がベッドに腰掛けるとルナは肩に飛び乗ってくる。定位置となっている。
……やっぱり重い気がする。もう少し歩かせたほうがいいのだろうか。
私の思考を読んだのか猫パンチをかましてくる。ねぇ、何でわかるの?
ルナと戯れていると、白ワンコも寄ってくる。構ってほしいみたいだ。
「ふっふっふ。あなたにはこれよ!」
私はブラシを取り出す。そうです。これからブラッシングをするの。
そんなにもったいぶらなくていいって?甘いわね。
せっかくの極上のモフモフ。最大限楽しまなくちゃ損よ!
白ワンコを抱き上げ、膝に寝かせる。これならおとなしくしてくれるだろう。
ブラシを通すとなんの抵抗もなく梳くことができる。最高の感触。これが堪らないのです。
白ワンコも気持ちいのか、完全に伸びきっている。そんなに腹を見せていいのだろうか?
肩からルナもしてほしいのか催促してくる。……少々お待ちくださいルナ様。
「……本当に不思議ね。あなたなんで私についてきたの?いつでも逃げることができたのに……」
そうだ。宿に戻るとき私が抱き上げてきたわけではない。なぜか私の後ろをぴったりとついてきたのだ。
今日を初めて会ったはずなのに、こんなに懐くなんて。……まぁ昔から動物には好かれたけど。
「わふ~」
私はどうしたらいいのかな。この子が普通の犬じゃなかったら、厄介な事に巻き込まれる確率が上がる。変な貴族に目をつけられたりとか。
そうなったとき私はこの子たちを守り切れるのだろうか……。
この子たちに何かあったらと思うと、怖い。
守り切れなかった自分の弱さを悔やむだろう。連れてきてしまったことを後悔するだろう。
……それは嫌だな。それなら私はひとりでいい。
寂しくて耐えられないかもしれないけど、失うよりずっと楽だ。
「……リリナ。なんて顔してるのよ。ほら」
ジルさんと話に言っていたメイさんがいつの間にか戻ってきていた。
ハンカチ?なんで私に……。
気づいたら私の目から涙が流れていた。
「えっ? あれ……どうして……?」
「難しく考えすぎよ。これから起こるかもしれないことより、あなたがどうしたいか。それだけ考えればいいじゃない。
それで、リリナはどうしたいの?その子と一緒にいたくないの?」
「……できるなら、一緒にいたいです」
今日初めて会ったはず。なのにこの子が一緒にいるとなぜか安心する。
「もう答えは出てるじゃない。大丈夫よ。何かあってもあなたにはこわーいお姉ちゃんがいるでしょ?」
「……ふふっ。そうでしたね」
そうだった。
こういう時、ミーシアさんなら何て言うだろう。
『もう。また厄介な物拾ってきたの?そんな面倒事になりそうなものばかり。まぁいいわ。何かあったら言いなさい。私が何とかしてあげるから』
呆れたような顔で言うミーシアさんが容易に想像できた。
ほんとに何とかしてくれそうな、心強い姉がいる。
ひとりで旅するって出てきたのにまだ弱いままだ。もっと強くならないとね。
「ねぇ。私と一緒にいてくれる?」
「ニャッ」
「わん!」
何を当たり前のことを。と、言わんばかりに二匹が鳴いた。
大丈夫。みんなで強くなっていけばいいよね。
よしっ。
「メイさん、決めました!」
「そう。それじゃその子に名前を付けましょう。明日出発前にギルドに行けばいいから」
「そうですね。じゃあ……ブラウ。あなたの名前よ」
「わん!」
これからは、ルナとブラウを連れて旅をする。
何かあっても私は大丈夫。私の傍にはこの子たちがいるのだから――。
「こら!おとなしくしなさい」
私が今何をしているか。
もちろん、拾ったモフモフを綺麗にしているところです。場所は宿の大浴場です。
ついさっきメイさんのお説教が終わりました。とても怖かったです……。
毛玉みたいに丸まっていたワンコは、眠っていただけでした。
私がお説教を受けている最中に起きた。そのおかげでお説教が終わったと言っても過言ではない。ありがとう。
「わん!」
だから動かないでって。泡が飛んでくる。
私がこの子を洗っている間も尻尾はブンブン。いつの間にか懐かれたみたいだ。どうして?
「リリナ、その子どうするの?飼い主探したりとか、明日までじゃ時間ないわよ」
「そうですよね。最悪ギルドに預けることも考えてますけど……」
正直首輪がついていないから飼い主がいるかどうかもわからない。それに魔物って感じもしない。
……この子はいったい?
とりあえずきれいにしてモフモフを堪能しようとは思っている。
なぜならこの子は最高のモフモフを持っていると私の直感が囁いているのだ!
まずはこの子をモフモフしてから考えよう。
「ほら、流すからじっとしてなさい」
優しくゆっくりとお湯をかけ、泡を流す。
あぁ、やはり。きれいな白銀に輝く毛が現れた。
私の見立て通り。あとはお風呂を出てメイさんに乾かしてもらえば完璧だ。
ちなみに今ルナちゃんはいない。あの子はお風呂が苦手なのである。そういうところは普通の猫と同じみたい。
「メイさん、もう出ますか?」
「う~ん。もう少しいるわぁ~」
「じゃあ私も」
ワンコを抱き上げ、メイさんの隣へ。ルナより大きいから重い……。
この子はお風呂好きなようだ。お湯につけると泳ぎだす。
さりげなく隣をちらり………………でかい。
何だろうこの差は。おかしい……。
いいもん。私はこれからだから!
「それで?ほんとにどうするの、この子?」
「……正直なところ迷ってます」
「連れていくのは反対しないわ。普通の犬があんなところで寝てるなんておかしい。それにルナが過剰に反応してたんでしょう?なら何かあると思うわ。
それでも連れていくのならギルドで登録しなさい。何かあってからでは遅いからね」
「……そうですね」
これは責任の問題だ。拾ったからにはちゃんと面倒を見る義務がある。
ただ私にはルナもいる。もしこの子が普通じゃないとしたら、これ以上珍しい生き物を連れて歩くのはどうかと思ってしまう。ミーシアさんとも約束したし。
「今日はゆっくり考えなさい。ほら、もう出るわよ」
「はい」
お風呂を出て部屋へ。
部屋へ戻るとベッドでルナが丸まっていた。
私がベッドに腰掛けるとルナは肩に飛び乗ってくる。定位置となっている。
……やっぱり重い気がする。もう少し歩かせたほうがいいのだろうか。
私の思考を読んだのか猫パンチをかましてくる。ねぇ、何でわかるの?
ルナと戯れていると、白ワンコも寄ってくる。構ってほしいみたいだ。
「ふっふっふ。あなたにはこれよ!」
私はブラシを取り出す。そうです。これからブラッシングをするの。
そんなにもったいぶらなくていいって?甘いわね。
せっかくの極上のモフモフ。最大限楽しまなくちゃ損よ!
白ワンコを抱き上げ、膝に寝かせる。これならおとなしくしてくれるだろう。
ブラシを通すとなんの抵抗もなく梳くことができる。最高の感触。これが堪らないのです。
白ワンコも気持ちいのか、完全に伸びきっている。そんなに腹を見せていいのだろうか?
肩からルナもしてほしいのか催促してくる。……少々お待ちくださいルナ様。
「……本当に不思議ね。あなたなんで私についてきたの?いつでも逃げることができたのに……」
そうだ。宿に戻るとき私が抱き上げてきたわけではない。なぜか私の後ろをぴったりとついてきたのだ。
今日を初めて会ったはずなのに、こんなに懐くなんて。……まぁ昔から動物には好かれたけど。
「わふ~」
私はどうしたらいいのかな。この子が普通の犬じゃなかったら、厄介な事に巻き込まれる確率が上がる。変な貴族に目をつけられたりとか。
そうなったとき私はこの子たちを守り切れるのだろうか……。
この子たちに何かあったらと思うと、怖い。
守り切れなかった自分の弱さを悔やむだろう。連れてきてしまったことを後悔するだろう。
……それは嫌だな。それなら私はひとりでいい。
寂しくて耐えられないかもしれないけど、失うよりずっと楽だ。
「……リリナ。なんて顔してるのよ。ほら」
ジルさんと話に言っていたメイさんがいつの間にか戻ってきていた。
ハンカチ?なんで私に……。
気づいたら私の目から涙が流れていた。
「えっ? あれ……どうして……?」
「難しく考えすぎよ。これから起こるかもしれないことより、あなたがどうしたいか。それだけ考えればいいじゃない。
それで、リリナはどうしたいの?その子と一緒にいたくないの?」
「……できるなら、一緒にいたいです」
今日初めて会ったはず。なのにこの子が一緒にいるとなぜか安心する。
「もう答えは出てるじゃない。大丈夫よ。何かあってもあなたにはこわーいお姉ちゃんがいるでしょ?」
「……ふふっ。そうでしたね」
そうだった。
こういう時、ミーシアさんなら何て言うだろう。
『もう。また厄介な物拾ってきたの?そんな面倒事になりそうなものばかり。まぁいいわ。何かあったら言いなさい。私が何とかしてあげるから』
呆れたような顔で言うミーシアさんが容易に想像できた。
ほんとに何とかしてくれそうな、心強い姉がいる。
ひとりで旅するって出てきたのにまだ弱いままだ。もっと強くならないとね。
「ねぇ。私と一緒にいてくれる?」
「ニャッ」
「わん!」
何を当たり前のことを。と、言わんばかりに二匹が鳴いた。
大丈夫。みんなで強くなっていけばいいよね。
よしっ。
「メイさん、決めました!」
「そう。それじゃその子に名前を付けましょう。明日出発前にギルドに行けばいいから」
「そうですね。じゃあ……ブラウ。あなたの名前よ」
「わん!」
これからは、ルナとブラウを連れて旅をする。
何かあっても私は大丈夫。私の傍にはこの子たちがいるのだから――。
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