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一章 旅立ち
老夫婦
しおりを挟む家にお邪魔した私たちにお茶をごちそうしてくれた。従魔たちにはお菓子とミルクだった。
もしやこれが従魔用のお菓子というやつですか。すごい喜んでいる。
ついさっきお腹いっぱい食べたのにまだ食べるのかこの子たちは。
「そういえばまだ名乗ってなかったのぉ。わしはゲンゾウという。元冒険者で今は鍛冶師じゃ。気づいておるとは思うが、わしらは高ランクの冒険者じゃった。今は隠居の爺じゃからあまり気にせんでもいいがの」
「私はミラノと申します。この人とコンビで冒険者でした。先ほどは本当にご迷惑をおかけしました」
そう言えばお二人に名前も聞いていなかったが、私も名乗っていなかった。
「リリナです。急にお邪魔してすみません。この子たちはルナとブラウです。お菓子もありがとうございます」
「メイです。こちらこそ先ほどはうちの相方がご迷惑をおかけしました」
「ジルだ。じいさんが冒険者で噂になってる鍛冶師か。鍛冶師なのに武器を作らず門前払いされるって有名だぜ」
「ジル、余計なこと言わない」
「ほっほ。そんなに気にせんでいい。間違ってはおらんからな。わしは気に入ったものにしか武器は作らんのじゃ。先に言ったがお前さんらには武器を作ってもいいと思っておるぞ」
さっきの一件で気に入ったみたい。しかし何を基準に決めているかは私にはわからない。
「へぇ。そりゃありがたいが、一体どこを気に入ったっていうんだ?特に何かしたわけじゃないぞ」
「そうね。特に何かできたとは思えないけど」
「わしの殺気を浴びて平然と立っていられただけでも合格じゃよ。おぬしらはAランクの冒険者かの?」
「いや、まだCランクだぜ。まぁ、普通のCランク冒険者とは言えないがな」
「王都のギルマスとちょっとした縁があって、いろいろと鍛えられているんです」
「王都のギルマス……おぉ、あやつか。それなら納得じゃの」
それは知らなかったな。あの人に鍛えられたなんて。相当つらい訓練を受けさせられるってカーナが言っていたような。
普段は温厚な人だけどかなりの戦闘狂だって噂もあった。そんな人に鍛えられたのなら、こんなに強いのもわかる。
「それで武器を作ってやる話じゃが……大剣と弓でよかったかの。何か希望はあるかな?」
ゲンゾウさんがそう言うと、三人で武器についての話し合いが始まった。
私の入れない話だ。知らない単語が飛び交っている。
「あらあら。こうなっては長くなりそうですね。リリナさん、もしよろしければ私とお話しませんか?
せっかく来ていただいたのですから従魔用のお菓子の作り方もお教えしますよ」
「お願いします!」
「それでは、一緒に作りながらお話ししましょう」
ミラノさんは立ち上がりキッチンに案内してくれた。
私が立ち上がると、食べ終わって眠っていたルナとブラウがついてくる。
どこでも一緒にいてくれるみたいだ。……いや、お菓子が目的か?今日はもうそんなにあげませんからねっ。
「わん!」
甘えてくるブラウ。おねだりをしているみたい。
そんなことしたって駄目なものはダメです。
「本当に仲良しですね。テイマーでもそんなに仲良くなるのは難しいのですよ」
「そうなんですか?」
「ええ。中には従魔を道具のように扱う人もいるみたいです。それで従魔に裏切られるなんてこともあるとか。
どうしてそんなことをしてしまうのか、同じテイマーだったものとして恥ずかしく思います。
どうか、リリナさんはそんなことにはならないでくださいね。といってもその心配はなさそうですけれど」
そうですね。私は大丈夫な気がします。
この子たちを道具として扱うとか……いや、無理です。こんなかわいいのにそんなことできません。
そんなことしたらモフモフさせてくれなくなるじゃないですか。
「大丈夫ですよ。この子たちが私から離れない限りずっと一緒にいます。大好きですから!」
「わんわん!」
「ニャッ!」
「グハッ!?」
いきなり飛びかかってきた。
待って。さすがに同時に来られたら耐えられないです。
ブラウも少しずつ大きくなっていて立ち上がると私と同じくらいの大きさである。
そこにルナも加わるともうどうしようもない。
二匹につぶされてしまった。
嬉しいのは分かったから落ち着いてくださーい!
「ふふっ。本当に大丈夫なようですね。リリナさん、安心してください。私が見る限りではその子たちがあなたから離れることなんてないと思いますよ」
「……そうですか。ミラノさんが言うなら間違いなさそうですね。……ところで、助けていただけませんか」
ブラウが離れてくれないので起き上がれない。
お菓子あげるからどいてくれ。そろそろ限界よ私。
それからブラウとルナが離れてから落ち着くまで十分かかった――。
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