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一章 旅立ち
モンスターハウス
しおりを挟むあれから数時間ダンジョンの中を歩き続けているが、未だ何も進展はなかった。
同じような薄暗い道を道なりに歩いているだけ。別れ道すら通っていない。
疲労だけが蓄積されていく。
「やっぱり似てるっすね。何も見つからないのに魔物の気配だけは漂ってくるっす。気味が悪いとか通り越して、イライラしてくるっすよ」
「これだけ同じような道を歩き続けてたら精神的に参ってくるな。一応ここはダンジョン内だから気を抜くこともできない。どこかに安全地帯でも見つかればいいのだが」
ダンジョンだから必ず安全地帯が存在するはずだ。
いや、それどころか別れ道も広場も見つかっていないのだが。
天井の高さも道の幅も変わらず、もしかして迷っているのではないかと思うほどだ。
それなのに魔物の気配だけはする。しかもかなり濃い。
ある種の精神修行でも課されているのだろうか。
「こんな道じゃ休憩も取れないわね。ミラノさん、大丈夫ですか?」
「ええ。大丈夫ですよ。これでも元冒険者ですから。気にかけてくださってありがとうございます」
「……………メイさん。なんで私に聞かないんですか」
「リリナはもう少し頑張りなさい。冒険者なんだから体力は大事よ」
「そうっすね。リリィは戦わないのにすぐ疲れるんすから。少しは鍛えたほうがいいっすよ。それに少し丸くなったんじゃないっすか~?」
「な、なんてこと言うのよ!?乙女に向かって太ったとか禁句なんだから!
というか、太ってないし!」
全く失礼な。私のどこが太っているというんだ。
それを言いうならカーナとメイさんの方が明らかに一部分太って……。
いや、やめよう。なんだか悲しくなりそうな予感。
「リリィ。いつも言ってるっすけどこんなものあっても、正直邪魔なだけっすよ。戦闘中とかとくに。自分からしたらリリィの方が羨ましいっすけどね。なんだかんだスタイルいいし」
「そうよ。こんなものなくても魅力的じゃない。何そのきれいな肌。ぼうけんしゃなのに。喧嘩売ってるのかしら」
「ふんっ。そうやって絆されたりなんかしないんだから」
「それに某少女が言ってたっすよ。『貧乳はステータスだ』って。だからそんなに気にすることなんかないんす。自信持つっすよ」
「ひ、ひん……。それよりすてぇたすってなに?」
「あ~。それは知らなくても大丈夫っす」
相変わらずようわからないことを言う。そういうのどこで知るんだろう。
ときどきカーナが理解できない言葉を話すことがある。
言葉の意味については教えてくれるときとそうじゃない時があるけど。
「おい。くだらない話してないで気を引き締めろ。やっと見つけたぞ」
くだらない話とはなんですか。私にとってはとても大事な話なんですよ。
それにしても見つけたって何をだろう。
「ようやくね」
「さぁて。鬼が出るか蛇が出るか。ご対面と行こうかのぉ」
少し先に目を向けると、広場が見えた。
おそらく魔物がいるのだろう。先ほどよりも緊張感が漂う。
隣にいたはずのカーナがいつの間にかいなくなっていた。
辺りを見渡すと少し先にマフラーの先が見えた。おそらく広場の様子を確認しに行ったのかな。
「ちょっと気を付けたほうがいいっすね。普通の広場かと思ったら、入り口に罠が仕掛けてあったっす。罠というかセンサーっすね」
「せんさぁ?ってなんだ」
「いわゆる広場に入る人を察知する仕掛けみたいなものっす。あれは誰かが広場に入るとそこらじゅうの壁から魔物が大量に出て来るっすね。自動モンスターハウスっす」
「なっ!?」
モンスターハウスってあれよね。多いと数百匹の魔物が一つの広場に集合している罠よね。
一見普通の広場が誰かが入ったらモンスターハウスに早変わりってこと?なによそれ。
「モンスターハウスって元々魔物が大量にいる部屋のことじゃないのか?なにもいないが……」
「いや、これで確信したっす。このダンジョンは誰かが一から作成してるっすよ。魔物の配置や構造も。モンスターハウスも自由自在って感じっすね。自分の想像っすけど、ここまでの長い道もそういう風に作ったんだと思うっす。そうやって精神的に追い込んでからあそこの広場で休憩できると思わせての、まさかってやつっす」
「悪趣味な作成者ね。それで、どうするの?ここを避ける道なんてないし。解除はできないの?」
「自分には無理っすね。どちらかというとあれは魔法の類っす。それにおそらくダンジョンマスターくらいしか解除できないと思うっすよ」
「それならここを押し通るしかねぇな。それにこんなとこで躓いてたらこの先進めねぇ気がするしな」
「そうじゃのぉ。邪魔するのであれば叩き潰すのみよ」
「まぁそう言うと思ったっす」
え?なんでそんなにやる気満々なの?
私には理解できないんですけど。私はどうしたらいいのですか。
「わん!」
「あぁ……ブラウもそんなに張り切らなくていいのに……」
「わん!」
ダメだ。聞いてくれない。
なのでもう諦めます。好きにしてください。ただし私を守るのを忘れずに。
「おそらくここの魔物も魔法耐性が高いはずっす。なので物理でガンガンぶん殴って行くっすよ。自分らにはリリィがいるんで何も問題ないっすけどね」
「まって。私にそんなに期待しないで。大したことできないから」
「リリィはもうちょっと……いやもっと自分の実力を理解した方がいいっすよ。
とにかく、リリィは後ろで歌ってくれればそれでいいっすから。安全っすよ。
メイさんがリリィの傍で後方支援。ミラノさんは二人の護衛をお願いするっす。ジルさん、ゲンゾウさん、自分でとにかく魔物を刻んでするっすよ」
「わんわん!」
「おっと。ブラウもいたっすね。それじゃあブラウも一緒に魔物を刻むっすよ!」
「やめて!うちの子まで戦闘狂にしないで!」
「よ~し。行くっすよ~」
話を聞いてはくれなかった。
すたすたと三人と一匹が広場に向かっていく。
「ほら、行くわよ。心配しなくても私たちがちゃんと守るから。あなたはいつものように歌ってなさい」
う~。わかりました。歌ってればいいんですね。
それ以外は何もしませんからね。それ以外にできることはないけど。
私たちも広場に向かった。そしてカーナの言った通り、四方の壁という壁からいろいろな魔物が出てきた。
はーい。戦闘開始でーす。とりあえず歌いまーす。
そんなこんなでモンスターハウスでの戦闘は始まったのだった――。
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