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一章 旅立ち
歌姫の力
しおりを挟む私たちは罠だとわかっているモンスターハウスに入りました。
結論から言いましょう。瞬殺でした。
ホブゴブリンやハイオーク、オーガにコカトリス。普通一階層に出てくるはずのない魔物が大量に出現したにもかかわらず、瞬殺です。
次から次へと現れる魔物たちを悉く切り伏せ、十分ほどで魔物の出現が収まりました。
正直私がいなくてもどうにかなったのではないでしょうか。
「いやいや、リリィがいたからこんなに早く終わったんすよ。リリィのバフなかったらもっと時間かかってたんすから。もっと自信持つっすよ」
「そうかしら。カーナ一人でほとんど倒しちゃったじゃない。あなたそんなに強かったのね」
「そうだな。そのせいで少し物足りなかったぜ」
「おっと。それは申し訳ないっすね。久しぶりにリリィの支援受けたから張り切っちゃったっす。次はもう少し抑えるっすよ」
だいたいの魔物はカーナが二振りの小太刀を振り回し、細切れにしていた。
早すぎて私の目で追うことはできなかったが、かろうじて刃に風が纏っていたのは分かった。
「お嬢さん、何者じゃ?その戦い方には見覚えがあるぞ。確か……」
「おじいちゃん。それは内緒っすよ。自分はただのカーナっすから」
「……ふむ。おぬしがそう言うのならわしから言うことはないのぉ」
「そんなことより休憩にしませんか?さすがに疲れましたよ、私」
とりあえず休みたい。ここまで歩き続けいきなり戦闘になった。
なによりもう数時間何も食べていない。お腹が減りましたよ。
「そうっすね。このままだと自称か弱い乙女のリリィちゃんが倒れてしまうっすよ。かわいそうなんで休憩にしてあげるべきっす」
「おい、こら。自称ってなんだ。バカにしてんのか?」
いけない。淑女にあるまじき言葉遣い。思わず出てしまった。
しかし、これはカーナが悪いと思う。自称か弱い乙女って。自称も何も私はか弱い乙女です。見てわかるじゃない。
「事実っすよ。そろそろ自分の力を見直す時間すよ」
「なによ、私の力って」
「それは食べながら話すっすよ。まずは準備するっす」
カーナは私のマジックバッグから勝手に調理道具を取り出す。
いつの間に私のバッグにそんなものが。というかなんでカーナが取り出せるのよ。
それにあなた料理できたのね。前はいつも私に任せていたからてっきりできないのかと思っていたわ。できるなら手伝ってくれればよかったのに。
「カーナって料理できたの?前は手伝ってもくれなかったじゃない」
「一通りのことはできるっすよ。生きるのに必要な事は特に。前はリリィができたし、リリィの方がおいしいご飯作ってくれるから任せてったす。今はお疲れみたいなんで作ってあげるっす」
「できるんなら手伝ってくれればいいじゃない。あなたその時なにしてたの?」
「そうっすね。武器の手入れとか暇つぶしに狩りとかっすかね」
なぜ料理しているというのに狩りに行くのだろうか。そういうところよくわからない。
まあいいか。今後はカーナにも手伝ってもらおう。……今後?
不思議とそう思ってしまったが、これも今はいいか。
「できたっすよ~。簡単な物っすけどね」
普通のサンドイッチだった。野菜を切って挟んだだけの手軽な物。
ダンジョン内だからそんなに凝ったものを食べている余裕はないため、食事はこういう軽く食べられるものになる。
「それでさっきの話っすけど」
「私の力について見直すって言っていたわね。どういうこと?」
「自分が疑問に思っていたことなんすけど、めんどくさいんで単刀直入に聞くっすよ。
どうして自分に支援魔法かけないんすか?」
「どうしてって……戦わない私には必要ないじゃない。まず自分にかけたことなんてないし」
自分の歌で自分を支援するって、それ意味あるのかしら。
「私も思っていたわ。自分に魔法かけたらリリナでも戦えるようになるんじゃない?」
「そもそも歌いながら戦うって無理じゃないですか?魔力の調整とか歌い続けるとか」
「別に剣振れとか言ってるわけじゃないっす。さっきとか歩いているときに歌いながら自分に魔法かければ疲労軽減できたりするんじゃないっすかね」
「自分に回復魔法かけながら歩くってこと?どうかなぁ」
たしかにそれができるならもう少し楽になるかも。
そんなの考えたことなかったわ。
「ようは使い方っすよ。別に戦う時だけに限定するものじゃないと思うっす。ましてやリリィのはかなり万能なんすから」
「……そうね。そう考えるといろいろできるかもしれないわ」
カーナの言う通り私が考えてなかっただけでいろんなことができる気がしてきた。
今度自分に魔法かける練習してみよう。
「そろそろ行こうかのぉ。十分休憩できたじゃろう。早くせんと逃げられてしまうわい」
「そうだな。よし行くぞ」
ジルさんを先頭にまた歩き始める。
また同じような道が続くのかと思ったが、今度は別れ道が多くなった。
途中にある小さな広場では何回か魔物が待ち構えていた。
たいして時間を取られることもなく。私たちはスムーズに進んでいった。
カーナが別れ道を正確に見分けることができたのが大きい。
そして――。
「ようやくっすね」
「そうじゃのぉ。一階層にしてはここまで長かったがこの扉の先に階層主がおる筈じゃ」
およそ半日以上かけてついに階層主の部屋までたどり着いた。
カーナがいなかったら別れ道でもっと時間を取られていたのではないだろうか。
しかし、ここまで安全地帯が見つからなかった。なので初めに通った広場での休憩以外休みなくここまで来た。
ものすごく疲れたと思うが、カーナの話を聞いてここまでにいろいろと試してみた。
少しだが自分にも支援魔法をかけることに成功し、歩きながら回復魔法をかけてきたので、さっきより疲労を感じてはいない。
「リリナのおかげであまり疲労はないと思うが、少し休んでおくか?」
「自分はここまで来たらこのままいった方がいいと思うっすけど」
「そうじゃな。わしらは問題ないが、他はどうかの?」
「私とミラノさんは大丈夫です。リリナは?」
「私だけ休むわけにはいきませんよ。大丈夫です」
「それじゃ、開けるぞ」
ジルさんが重厚な扉をあけ、全員で中に入る。
扉の大きさから想像していたが、かなり広い。天井も見えないくらいに高い。
そして中央には小さな人影が。
「なんだい。もう来たのかい。僕の想定以上に人間もやるようだ。これは失敗したかな」
黒いローブを纏った少年のような見た目。その黒い髪には極めて特徴的な二つの角が生えていた。
「まさか、ここまで来るとは思いもしなかったよ。それでは早速だが君たちには……――死んでもらおうか」
そういってその少年は禍々しい笛を吹いた。
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