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一章 旅立ち
魔人
しおりを挟む「…………どうしてこんなところに魔人が……」
「今はそんなことはいい!戦闘準備!」
ジルさんが叫んだ。
あの魔人は笛を吹いた。聞いたことのある不快な音だった。
これまでの異変の黒幕があの魔人ということが確定した。
魔人の側の空間に黒い穴が開いた。
「何か出て来るぞ!」
「GRAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」
雄たけびが聞こえた。
肌を突き刺すような威圧感、見上げるほどの巨体は赤いうろこで覆われていた。
「レッドドラゴン!?なんてもの呼び出してんだよ!」
「あの笛は魔物を操るものじゃないの?どこからレッドドラゴンを……」
「なんだ。そこまでは予想出来ていたのかい。ここまで来たご褒美に少しだけ教えてあげるよ。確かにこの笛は魔物を操ることができる。しかしそれだけじゃないよ。支配下に置いた魔物を使用者の側に呼び寄せることができるのさ。なかなか便利だから重宝しているよ」
それを聞いて合点がいった。ジャイアントホーンやスタンピードの魔物たちをどうやって運んだのか。
全てあの笛の能力だったというわけだ。
「僕は忙しいからもう行くよ。君たちを殺すのはこいつで十分だろう。もし生き残れたらまたどこかで逢えるかもね」
魔人はそのまま踵を返しダンジョンの奥に向かおうとする。
「まあまあ、そんなこと言わずに。自分ともう少しお話しするっすよ」
いつの間にかカーナが魔人の横に立っていた。
魔人もさすがに驚いたようで、その場から大きく飛び退いた。
魔人の頬にはうっすらと赤い線が走っていた。
「……へぇ。君はなかなか面白いみたいだね。僕が直接相手してあげてもいいけど。生憎と忙しいんだ。またの機会にするよ」
そう言うとまた笛を吹こうとする。
すかさずカーナが猛攻を仕掛けた。早すぎて私じゃ見えない。
それにこっちもレッドドラゴンを相手にしなくてはならない。
ああ、もう。なんでこんなことに。
「リリィ!とにかくバフかけてほしいっす。さすがにきつい」
「わ、わかったわ」
とにかく私は歌い始めた。誰も死なないように、全員の力を底上げするために。
すると魔人の視線はこちらに向いた。
「君の力は厄介なものみたいだね。今のうちに殺した方がいいかな」
「ッ!!?」
「させないっすよ!」
カーナが何とか気を引こうとする。
「これ以上時間を取られるのは困るなぁ。それにあの人間の始末もしないと……いや、あれはまだ生かした方が面白くなるかな。うん、そうしよう。ということで僕はそろそろ行くよ。君は邪魔だよ」
「カーナ!!」
カーナが吹き飛ばされた。
私は慌てて駆け寄り回復魔法をかける。ギリギリ息はしているみたいだ。よかった。
「面白いものも見つけたし、これからの計画も面白くなりそうだ。気分がいいからもう一つ、君たちが気になっているだろうことを教えてあげるよ。
ダンジョンのことさ。わざわざダンジョンを造って回っている意味が気になっていることだろう。ダンジョンはね、ある種扉のようなものなんだ。それがどこに繋がっているのかは自分たちで考えるといい。それではまたどこかで、『神子』のお嬢さん」
聞き返す暇もなく魔人は消えた。
魔人の言葉のせいで余計に謎が増えてしまった。
「くそっ。逃がしたか」
「それはもう仕方ないわ。それよりレッドドラゴンを倒すわよ。リリナとルナは援護。カーナは動けるの?」
「……何とか。ただあんまり期待しないでほしいっすね……」
「無茶はせんでよい。ミラノ、グリフを呼べ」
「わかりました。十分ほどで来るでしょう」
「ちと長いな。それまで持たせるぞ、小僧」
「それまでに倒してみせるさ!」
私たちはレッドドラゴンと対峙した。
絶対生き残ってあの魔人を見つけなきゃ。いろいろと聞きたいことがあるものね。
ん?ブラウどうしたの?
ブラウがぶるぶると震えだし、突如部屋を埋め尽くすほど眩しく光った――。
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