69 / 72
二章 水の都
隠しトンネル
しおりを挟む「うわぁ……。こんなの普通なら見つけられるわけないわね」
何もなかった岩壁から突然トンネルが現れた。
というか巧妙に隠されていたといった方がいいかしらね。
ともかくこんなところにトンネルがあるなんてわかるわけないわ。
実際魔法を使われていたわけでもなかったし、ルナちゃんが気づいてくれなかったら見つかってないわ。
「いやぁ、これは驚いたっすね。まさか魔法も使わずにこんな仕掛けで隠していたなんて。違和感に気づいてよかったっすね」
「それにしても良く違和感なんて感じたわね」
「リリィは忘れてるかもしれないっすけど、自分これでもシーフっすからね。観察力には自信あるんすよ」
「うん。確かに忘れてたわ」
そう言えばカーナはシーフだったわね。
街中じゃあまりそういう機会はなかったし、あっても私とは別行動しているときね。
「やっぱり。まったくひどいっすよ」
「仕方ないじゃない。それで? このトンネルはどうするの?」
「そうっすね。とりあえずこの入り口に目印をつけて……ここら辺にこれを……これで大丈夫っす」
「何したの?」
「それは帰ってから話すっすよ。こんな敵の本陣みたいなところで何を聞かれてるかわからないっすからね」
「もしそうならカーナがしていたことも見られてたりするんじゃないの」
「…………たぶん大丈夫っすよ」
なんか少し間があったわね。本当に大丈夫かしら。
「と、とにかく、この先に何があるかだけ確認するっすよ。正直こんなところに闘技場なんてものがあるとは思えないっすけど」
「それは行ってみないとわからないわね。でも、たまにはこういうのも悪くないわ。冒険者っぽいじゃない」
「リリィ、こういう道の探索とかは好きっすよねぇ。これも結構危険な部類なんすけど、いつもは危ないことしたくないって言うのに」
「こ、これは良いのよ。探索するだけだし、戦うわけじゃないんだから」
「ま、いいっすけどね。それじゃ行くっすよ~」
カーナがいつの間にか用意した明かりを持って先頭を歩く。
トンネルの先は暗くてよく見えない。自分たちの足音が反響している。
なんだかドキドキするわね。この先には一体何があるのかしら。
~~一時間後~~
「「「……」」」
なんだか見覚えのある所に出たわ。
ついに道の先に光が見えたと思って目指した先は――最初の入り口だった。
「いや、待っておかしくない? ちゃんとマッピングしてたのよね?」
「当たり前じゃないっすか。自分の仕事はしっかりとこなしてたっすよ」
「なら! どうして! 振り出しに戻ってるのよ!!」
「ど、どうしてっすかねぇ……」
確かに何回か道を曲がったし、別れ道もあったわ。
だからって入り口に戻るなんてことある!? どんな構造してるのよ!
「と、とりあえずもう一回行ってみるっすよ」
~~二時間後~~
「……ねぇ」
「自分のせいじゃないっすよ! だから自分に起こるのは違うと思うっす!」
「そうだけど! そうかもしれないけど!」
また入り口に戻ってきました。
さっきとは違う道を通ってきたのに何をどうしたら戻ってくるのよ。
ロゼちゃんなんて歩き疲れて寝てるわ。ブラウの上で。私もそうしたいのに。
「も、もっかい行ってみるっす。次はちゃんと、道も調べて行くっすから」
~~二時間後~~
「…………それで? 言い訳くらい聞いてあげるわよ」
「ハハハ……。なんでっすかねぇ……」
三回目よ。
三度目の正直とかそういう言葉を聞いたことあるけど、全然そうならないじゃない。
何なのよ、もう!
「…………」
「どうしたのよ。そんなに地図とにらめっこしても道は浮かんでこないわよ」
「ちょっと気になることがあるっす。今日はもう遅いし、一旦帰らないっすか?」
「まあそうね。こんな状態じゃ進展しないだろうし。少し頭を冷やしてからまた来ましょう」
ということで、街に戻ることにしました。
しかしこのイライラ、どこで発散したいわ。
街に戻りカーナが部屋に籠ったので、私はブラウとルナを連れ、人気のない場所で思い切り歌うことにした。
――すっきりしたわ!!
0
あなたにおすすめの小説
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる