私はモブ侍女ですが!?

雨水郡

文字の大きさ
9 / 9

もし、目の前に決められた選択肢が出てきても私はきっと自分の選択肢を見つけるでしょう

しおりを挟む
 
「えええええええええええ!!??」
 会場内に絶叫が響き渡る。国王や宰相だけでなく、エリザマス公爵令嬢、ローヒインさんも驚いて絶叫していました。
 何を隠そう私が1番驚いてる。あっれぇ!?私!?私なの!?何かの勘違いじゃないんですか!?

「チアキ様、どなたかと間違えていませんか?もしかして視力が低下しているのでしょうか?今すぐ眼鏡をお持ちしますが」
「うん。間違いないよ。連れて帰るのはリタ。アンタだから」
 私が生贄!?じゃなくて気に入った人!?
 私なんて抜群のスタイルも国一番の美しい顔も、光の魔法も権力も何にも持ってないのですが……
 どうやら信じられないのは私だけではないようでした。

「何で……!!何でそんな冴えない女なの!?しかもただの下っ端のモブじゃない!!名前すら与えられないモブじゃない!!」
「そうよ!!そんな大した美貌もスタイルも持たない貧相な女を選ぶなんて!!ありえないありえない!!」
 すっごく同意ですが、こうも大勢の前ではっきり言われるとモブという存在である私でも傷つきますよ……?

「おかしいわよ……、せっかく転生して上手く行ってたのに。ヒロインなんだから皆のことを好きになるはずなのに!!チアキ様だって愛してくれるはずなのに!!チアキ様も王子もみんな、みんな私の物になるはずなのに!!」
「ありえないわ……、転生悪役令嬢なんだから最後はハッピーエンドになるはずなのに、何で何でよ……!!何でチアキ様が手に入らないの!?ありえないわ!!チアキ様は婚約破棄された私を連れ去ってくれるはずなのに!!」
 うん?転生やらヒロインやら悪役令嬢やら一体どういうことでしょう?
 眼が血走っているように見えますが大丈夫でしょうか?興奮しきっている2人は異様で国王様や王子までもかなり引いた目で彼女たちを見つめています。

「馬鹿じゃない?予想通りの未来なんて存在するワケないのに、そんな曖昧なシナリオに縛られてまるで道化だね」

 ローヒインさんもエリザマス令嬢もまるでヒロインや転生悪役令嬢だから確立された未来が待ってる、かのような発言ばかりでした。よくよく冷静に考えれば分かることです。確定された未来なんてないことを。だからこそ突然予想だにしない不幸があったり、眼を疑うような奇跡が起きるというのに。
 でもその現実が彼女たちには見えないようです。きっと彼女たちはこれからもその役割に縛られたままなのでしょう。



「じゃあね。もう会うことはないだろうけど。つかの間の生を御伽話の中で夢を見ながら足掻くといいよ」
 今までで1番冷え切った声で目もくれずにそう言い放ってチアキ様は背を向けて歩き出した。
 ……勿論、私を抱いたままで。
 そんな彼に国王様が慌てて叫びました。

「レジェクト殿!!元帥の件は……!!」
「ああ、大丈夫ですよ。シキ元帥も暇な人間じゃないのでこんな価値の無い勝手に滅びるような国を攻めようと考えるほど馬鹿な人間じゃないですよ」
 その言葉に今度は国王陛下と宰相が膝から崩れ落ちた。



















「あ、あの……チアキ様……降ろしてもらえませんか?」

 会場から出てからもチアキ様はお姫様抱っこしたままで下す気配がない。お姫様抱っこされるのは初めてで恐ろしくて恐ろしくて胸がドキドキです。しかもチアキ様の歩くペースが速いので冷や冷やします。

「何?アンタを落っことすとでも思ってるワケ?」
「いや!!そういうわけではなくてですね!!初めてなのでどうしたらいいか分からなくて」
「じゃあ首にしがみついてれば?」
「……こ、こうですか?」
「……」
 素直にチアキ様の首に腕を回せば、急にピタッと歩みを止めた。

「チアキ様?」
「はぁ~~~~、さっきの発言といい、今のといい無自覚な分質が悪いね」
 無自覚というのは何のことでしょう?私はただ落とされる恐怖を紛らわす為にしがみついてるだけなのですが。

「こういうこと他の人にしないでよね」
「……チアキ様だけですよ?」
 そもそも私みたいな侍女をお姫様抱っこするような人はチアキ様だけでしょうし。
 それを言った後、再び溜息をつかれました。何故ですか。

「というか私がチアキ様と一緒に国に行くのは決定なんですね」
「今更何言ってるワケ?もしかして怖くなった?」

 昨日のお茶会を最後にもう会えないと思っていた。それが今、こうしてチアキ様の傍にいる。今まで侍女の顔で引き締まっていた表情が思わず緩んでしまった。


「嬉しいに決まってますよ」
 そう心からの言葉を笑顔で伝えれば、急にチアキ様の顔が近づいてきて温かくて柔らかいものが唇に当たった。

「怖がって逃げようとしたって必ず捕まえてあげるから」
 チアキ様がとても良い笑顔で言い放ちました。ですが、その笑顔とは裏腹の言葉に背筋が冷えてしまいました。どうやら私は目の前の人からは逃れられないらしいです。
 ……ただぼそっと呟いた最悪監禁でもするか、はどうかやめてください。切実に。

しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

lemon
2020.04.19 lemon

はじめまして。
同じく、主人公さんとチアキ様の会話が夫婦漫才みたいで面白いです。
チアキ様は主人公さんをめっちゃ気に入ってるんですね。彼女は全く気付いてなさそうだけどww
二人のチグハグなやり取りを楽しみにしています。

解除
ユズリハ
2020.04.15 ユズリハ

リオとレジェクトの会話のテンポがいいですね。
これから、どう話が進んでいくのか楽しみです。

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】その令嬢は号泣しただけ~泣き虫令嬢に悪役は無理でした~

春風由実
恋愛
お城の庭園で大泣きしてしまった十二歳の私。 かつての記憶を取り戻し、自分が物語の序盤で早々に退場する悪しき公爵令嬢であることを思い出します。 私は目立たず密やかに穏やかに、そして出来るだけ長く生きたいのです。 それにこんなに泣き虫だから、王太子殿下の婚約者だなんて重たい役目は無理、無理、無理。 だから早々に逃げ出そうと決めていたのに。 どうして目の前にこの方が座っているのでしょうか? ※本編十七話、番外編四話の短いお話です。 ※こちらはさっと完結します。(2022.11.8完結) ※カクヨムにも掲載しています。

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

所(世界)変われば品(常識)変わる

章槻雅希
恋愛
前世の記憶を持って転生したのは乙女ゲームの悪役令嬢。王太子の婚約者であり、ヒロインが彼のルートでハッピーエンドを迎えれば身の破滅が待っている。修道院送りという名の道中での襲撃暗殺END。 それを避けるために周囲の環境を整え家族と婚約者とその家族という理解者も得ていよいよゲームスタート。 予想通り、ヒロインも転生者だった。しかもお花畑乙女ゲーム脳。でも地頭は悪くなさそう? ならば、ヒロインに現実を突きつけましょう。思い込みを矯正すれば多分有能な女官になれそうですし。 完結まで予約投稿済み。 全21話。

【完結】正しいモブのススメ。

谷絵 ちぐり
恋愛
全てのモブになりたいあなたへ贈る モブによるモブの為のモブの教科書。 明日、あなたが異世界モブに転生した時の為に役にたつことを願う。 ※この物語は完全にフィクションであり、現実とはなんの関係もありません。

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!

杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。 彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。 さあ、私どうしよう?  とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。 小説家になろう、カクヨムにも投稿中。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

悪役令嬢のビフォーアフター

すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。 腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ! とりあえずダイエットしなきゃ! そんな中、 あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・ そんな私に新たに出会いが!! 婚約者さん何気に嫉妬してない?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。