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しおりを挟むメルティアネスは可愛い。庇護欲そそる雰囲気に妖精のような可憐な容姿と小柄な体型。そのせいでお茶会に顔を出す度にたくさんの子息たちに高確率で絡まれてしまう。
今日も今日とてお茶会に参加すれば、たくさんの貴族の子息たちが言い寄ってきた。しかも中には一回りくらい歳の差がありそうな大人も混じっててドン引きしたわ。
もうお茶会を断ろうかと思ったけど、そうすれば今度は屋敷までやってくるし、めちゃくちゃ迷惑である。
「メルティアネス子爵令嬢。今度僕と薔薇園を見に行きませんか?」
「いやあの有名なパティシエが経営するカフェに案内しますよ」
「私が」「僕が」
断っても断っても次々に貴族子息たちが寄ってくる。そのせいでお茶会に参加する令嬢たちに冷たい目で見られてしまう。
本当に違うんです。悪意も何もないんです。寧ろ女の子とお友達になりたいのに男たちが壁となり、令嬢たちの元へと行けないのである。
本当は「寄ってくんな!!邪魔邪魔邪魔ァァ!!!!」って男たちを一掃したいけど、哀しいかな、メルティアネスの体では暴言も吐けず、キッと睨みつけても熱い視線を送ってるっていう解釈にしか変わらない。
多分、誰よりも威嚇が通用しない人物だわ、これ。
「メルティアネス。今日も可憐だね。思わずその頬にキスしたくなるよ」
他の子息たちよりも一層慣れ慣れしいのはカルメロ伯爵子息だ。向こうの方が爵位が上だから曖昧に返事していたら、何故か彼は私を恋人だと思い込んでしまった。そこはきっぱり違うと否定しているのに「照れてるんだね」と話を一切聞いてくれない。
確かに彼は他の子息たちと比べて綺麗な栗色の髪に割と整った顔立ちをしているけど、だからといって恋人だと勘違いされても困る。
そもそも私の好みは黒髪、三白眼、ギザ歯、ツンデレというちょっと荒っぽいキャラなのだ。そんな少年漫画に出てくるようなキャラが異世界転生の小説にいるはずもない。
いやキラキラしたイケメンも大好きなのは大好きなんだけど、懐かない猫のようなキャラが群を抜いて好きなだけです。
上手く抜け出せず、途方に暮れていると近くで低い声が聞こえた。
「お前ら邪魔だ。さっさとどけ」
その声が聞こえたと同時にさっきまで取り囲んでいた男たちが一斉に逃げ出してしまった。
え、え、何で急に皆逃げ出したの??怖すぎるんだけど!!
っていうか普通、女の子置いて逃げる!?
一体、どれだけ怖い人なの……?
そう思いながら目の前の人物を見上げた。
「め……」
「……め?」
(眼つき悪ッッッ!!??)
私とそう変わらない年頃の少年はそれはもう凶悪な眼つきの持ち主だった。
(そりゃ皆逃げ出すわけだわ……)
私を見下ろしてくるその眼は何人か殺ってきました?というような凶悪な眼だった。これ中身が漫画通りのメルなら恐怖で漏らしてたかもね。
(それよりも……)
緋色が交じった黒髪に鋭い三白眼……、細いけど筋肉がついた腕……、そして口から見える鋭いギザ歯……
ずきゅん、と弾丸が私のハートに打ち込まれた。
「……私のタイプやないか」
「……あ?」
おっと思わず素が出てしまった。
顔には出さないけど心というか脳内でファンファーレが鳴り響いていた。
まさかこの恋愛漫画風の世界の中でこんな三白眼キャラに出会えるなんてまさに奇跡!!
「あの……」
気を取り直して目の前の少年に声をかける。
「その、助けてくれて……ありがとうございました」
是非ともお名前を聞いて接点を持てるようにしないと!!せっかくこの世界で見つけた私のタイプ一致の彼を手放すわけにはいかない。
そう思って彼の手に触れた瞬間、バシッと手を振り払われた。
「あ……」
「触んじゃねぇよ」
鋭い視線で睨みつけられて、拒絶するような声色と口調にビクッと体が揺れて手を引いた。彼は一瞬何か思案するような顔を見せたけどすぐに私に背を向けて去っていってしまった。
女の子の手を振り払い、あまつさえあんな立ち去り方するなんて……そんな……そんな……
「最高だわ」
見事に私の心臓は撃ち抜かれてしまった。
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