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七章
5 怪物の心
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掃き出し窓の向こうに、いつの間にか人影があった。
与半が将太の手を引いて退ると同時に、家の外壁が溶けだして、庭に立っていた男――深夜美の姿が現れる。
彼の背後にある家屋もどんどん腐食させられ無に還り、集落の中に一点だけ荒野が作られた。
「さっきは私の手駒として働いてくれてありがとうございます、鷲本さん。
いい時間稼ぎにはなりましたよ」
築かれた集落を一瞬で朽ちさせる力を持ちながらも、与半たちには全く攻撃をしてこない。
いたぶってから嬲り殺してやる、という意志を感じた。
「深夜美……お前のせいで、小町は!」
掠れた声で将太が叫ぶ。
力が入らず這いつくばる彼を見下ろしながら、深夜美は恍惚とした笑みを浮かべた。
「ああ、滾るような恨み……
もっと注げ、それが私の力となる!」
深夜美の豹変ぶりに、与半の身は竦む。
同時に、食堂で出会った時の朗らかな彼の姿を思い出していた。
あの時に深夜美が見せた母への想い、そして父との間に根差した影は、とても嘘だとは思えなかった。
ならば、きっと。
「深夜美! 君はお母様を大切に思っているんだろう!
そのことを話してくれた時の君は、とても人間らしかった」
与半が叫び訴えると、深夜美は赤い猫眼を見開いて与半をじっと見てきた。
そこに感情は読み取れないが、少なくとも妙な超能力を発動している様子は無い。
与半は畳みかけた。
「その君がなぜ、私の娘に母殺しなんて真似をさせた!
さっきから君はしつこく、自分は憎まれるべき悪者だと言っているが、それは君が我々人類と正しさを共有している証だ!
君には心がある!」
呪われ、ヒビシュと化した人間たちが襲い掛かってくる。
それを道すがら拾った得物で薙ぎ倒しながら、鎮神たち四人は確実に鷲本家へ近付いていた。
手と脚が震えっぱなしだが、鎮神は捕食者に鉈を叩きつけ、どうにか沈黙させる。
ふいに視界の端で銀糸が舞い踊った。
物陰から鎮神に襲い掛かってきたヒビシュを、真祈が匕首で突き刺したところだった。
礼を言う間もなく、異変に気付いた鎮神は叫ぶ。
「あっち、建物が溶けていく!」
進行方向に見えている家屋、火の見櫓や電柱などが次々に錆びて散っていく。
深夜美だ、と団が呟いた。
ヒビシュさえ巻き込みながら腐食は進行し、とうとう鎮神たちの目の前の家屋も溶け、四人の目先数メートルといったところで止まる。
腐食を受けた所は一帯、生命の痕跡を失った灰色の世界へと変わり、その中央に深夜美が立っていた。
深夜美の目線の先には、与半と将太が蹲っている。
そして与半は深夜美に語り掛けていた。
「君には心がある!」
与半が将太の手を引いて退ると同時に、家の外壁が溶けだして、庭に立っていた男――深夜美の姿が現れる。
彼の背後にある家屋もどんどん腐食させられ無に還り、集落の中に一点だけ荒野が作られた。
「さっきは私の手駒として働いてくれてありがとうございます、鷲本さん。
いい時間稼ぎにはなりましたよ」
築かれた集落を一瞬で朽ちさせる力を持ちながらも、与半たちには全く攻撃をしてこない。
いたぶってから嬲り殺してやる、という意志を感じた。
「深夜美……お前のせいで、小町は!」
掠れた声で将太が叫ぶ。
力が入らず這いつくばる彼を見下ろしながら、深夜美は恍惚とした笑みを浮かべた。
「ああ、滾るような恨み……
もっと注げ、それが私の力となる!」
深夜美の豹変ぶりに、与半の身は竦む。
同時に、食堂で出会った時の朗らかな彼の姿を思い出していた。
あの時に深夜美が見せた母への想い、そして父との間に根差した影は、とても嘘だとは思えなかった。
ならば、きっと。
「深夜美! 君はお母様を大切に思っているんだろう!
そのことを話してくれた時の君は、とても人間らしかった」
与半が叫び訴えると、深夜美は赤い猫眼を見開いて与半をじっと見てきた。
そこに感情は読み取れないが、少なくとも妙な超能力を発動している様子は無い。
与半は畳みかけた。
「その君がなぜ、私の娘に母殺しなんて真似をさせた!
さっきから君はしつこく、自分は憎まれるべき悪者だと言っているが、それは君が我々人類と正しさを共有している証だ!
君には心がある!」
呪われ、ヒビシュと化した人間たちが襲い掛かってくる。
それを道すがら拾った得物で薙ぎ倒しながら、鎮神たち四人は確実に鷲本家へ近付いていた。
手と脚が震えっぱなしだが、鎮神は捕食者に鉈を叩きつけ、どうにか沈黙させる。
ふいに視界の端で銀糸が舞い踊った。
物陰から鎮神に襲い掛かってきたヒビシュを、真祈が匕首で突き刺したところだった。
礼を言う間もなく、異変に気付いた鎮神は叫ぶ。
「あっち、建物が溶けていく!」
進行方向に見えている家屋、火の見櫓や電柱などが次々に錆びて散っていく。
深夜美だ、と団が呟いた。
ヒビシュさえ巻き込みながら腐食は進行し、とうとう鎮神たちの目の前の家屋も溶け、四人の目先数メートルといったところで止まる。
腐食を受けた所は一帯、生命の痕跡を失った灰色の世界へと変わり、その中央に深夜美が立っていた。
深夜美の目線の先には、与半と将太が蹲っている。
そして与半は深夜美に語り掛けていた。
「君には心がある!」
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