91 / 117
七章
12 呪詛からの浮上、集う仲間
しおりを挟む
「路加さん!
団!
真祈さんがおれたちを信じて託してくれた作戦があるんです!
力を貸してください!
鷲本さん……思い出してください、貴方はおれたちを傷つけてばかりだったわけじゃない。
意志の力でおれたちを救った!」
誰かの声が聞こえる。
罪を償っても死者が帰ってくるわけではない。
どうせなら自らの過ちが刻まれたこの世界ごと消してしまえれば楽なのにと、
有沙の成れの果ての姿をした呪力を見た時にちらりとでも思わずには居れなかった。
そこからどんどん呪いは沁み込んできて、真祈への盲信が覚めてきて自身が犯した罪の深さに気付いた時の絶望を、
路加の中から引きずり出し、拡大させていく。
幼い頃から絵を描くのが好きだった。
画業で世間に認められ、幸福に暮らしていた。
ただ一点、友人と呼べる存在が居ないことが少しだけ寂しくはあったが、
芸術家は孤独でなくてはならないという父の言葉を信じていたし、その寂しさを絵画で表現することこそが自分の使命だと思っていた。
しかし深夜美が現れたことで家庭は崩壊し――いや、既に壊れていたことに気付かされ、父の欺瞞を知った。
たとえ父にどう思われていようと、団が両親を愛していたことは真実だ。
だから深夜美を殺すことが弔いになると思ったのに、
当の父からそれを拒まれてしまえば、もはや目的さえ分からなくなる。
つい最近誰かの名を呼んで喜びに満たされたはずなのに、蟲たちに霞んでそれが誰だったのか思い出せない。
家族は私が守る、と思っていた。
仕事に励み、娘の幸せを願い、そして神代の罪を継ぐ者として宇津僚家に奉仕してきた。
目を瞑り続けていれば自分は愚かで幸せな犠牲者のままだったのに、
炎の中で少年たちに目を醒まされてしまったのだ。
守護者を気取りながらも守るべき者をろくに見ていなかったこと、
権威に対して義憤を抱いて目醒めたつもりが、
本当はより深い惰眠に沈み込んだに過ぎなかったことに。
与半は深夜美のことも救おうとしたつもりだった。
しかし気持ちばかりが先行して、彼の真意を理解するには及ばなかったのだろう。
深夜美は与半の手を踏み壊し、贖罪の機会を与えてはくれなかった。
もうこの手の中には何一つ残っていない。
「路加さん! 団! 鷲本さん……!」
また誰かが呼んでいる。
遠くで銀色の蝶がはためいて闇を切り裂いた。
呪いに蝕まれていた意識が少しずつ浮上していく。
『真祈様が、仲間として私を必要としている……』
『そうだ、友達が、鎮神が呼んでる』
『赤い炎を消し去る水……この水は私。
私があの炎から真祈様と鎮神様を助け出した』
路加は、団は、与半は、赤黒い闇を抜けようと駆け出した。
団!
真祈さんがおれたちを信じて託してくれた作戦があるんです!
力を貸してください!
鷲本さん……思い出してください、貴方はおれたちを傷つけてばかりだったわけじゃない。
意志の力でおれたちを救った!」
誰かの声が聞こえる。
罪を償っても死者が帰ってくるわけではない。
どうせなら自らの過ちが刻まれたこの世界ごと消してしまえれば楽なのにと、
有沙の成れの果ての姿をした呪力を見た時にちらりとでも思わずには居れなかった。
そこからどんどん呪いは沁み込んできて、真祈への盲信が覚めてきて自身が犯した罪の深さに気付いた時の絶望を、
路加の中から引きずり出し、拡大させていく。
幼い頃から絵を描くのが好きだった。
画業で世間に認められ、幸福に暮らしていた。
ただ一点、友人と呼べる存在が居ないことが少しだけ寂しくはあったが、
芸術家は孤独でなくてはならないという父の言葉を信じていたし、その寂しさを絵画で表現することこそが自分の使命だと思っていた。
しかし深夜美が現れたことで家庭は崩壊し――いや、既に壊れていたことに気付かされ、父の欺瞞を知った。
たとえ父にどう思われていようと、団が両親を愛していたことは真実だ。
だから深夜美を殺すことが弔いになると思ったのに、
当の父からそれを拒まれてしまえば、もはや目的さえ分からなくなる。
つい最近誰かの名を呼んで喜びに満たされたはずなのに、蟲たちに霞んでそれが誰だったのか思い出せない。
家族は私が守る、と思っていた。
仕事に励み、娘の幸せを願い、そして神代の罪を継ぐ者として宇津僚家に奉仕してきた。
目を瞑り続けていれば自分は愚かで幸せな犠牲者のままだったのに、
炎の中で少年たちに目を醒まされてしまったのだ。
守護者を気取りながらも守るべき者をろくに見ていなかったこと、
権威に対して義憤を抱いて目醒めたつもりが、
本当はより深い惰眠に沈み込んだに過ぎなかったことに。
与半は深夜美のことも救おうとしたつもりだった。
しかし気持ちばかりが先行して、彼の真意を理解するには及ばなかったのだろう。
深夜美は与半の手を踏み壊し、贖罪の機会を与えてはくれなかった。
もうこの手の中には何一つ残っていない。
「路加さん! 団! 鷲本さん……!」
また誰かが呼んでいる。
遠くで銀色の蝶がはためいて闇を切り裂いた。
呪いに蝕まれていた意識が少しずつ浮上していく。
『真祈様が、仲間として私を必要としている……』
『そうだ、友達が、鎮神が呼んでる』
『赤い炎を消し去る水……この水は私。
私があの炎から真祈様と鎮神様を助け出した』
路加は、団は、与半は、赤黒い闇を抜けようと駆け出した。
20
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる