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容疑の民
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うぅ~、重いし、ちょっとだけ臭いです。
さて、私は一体、何をしているのでしょうか?
正解は板で作られたシャベルらしきものを持って只今、馬小屋掃除中、といったところです。
今朝は甲高い鳥の鳴き声が聞こえてきたと同時に目が覚めました。
草を背もたれにしゃがんだままでしたがいつの間にか眠っていて割と熟睡できたようです。
ちょっと身体がボキボキと鳴りましたが。
お目覚め早々にアニーさんが私の手を引っ張ります。
昨日の流れでもうこうなったら何かの日課があるのだなと察しますよ。
で、連れてこられたのが昨日遠巻きに嘶きが聞こえていた場所である馬小屋。
茶色の立派な馬が何頭も飼育されているらしい広い厩舎。
あちらこちらから鼻息やら嘶きやらが響き渡ります。
もちろん、一頭一頭区切られてはいるものの、私たちが就寝したスペースより限りなく広いですよね。
そのお馬さんの部屋には大量の落し物があって今まさにそれをアニーさんと共に撤去している最中なのです。
何頭いるのか分かりませんがいろんな場所に山積みになったそれを拾ってます。
しかも全頭分を搔き集めてこなさなければならない様子ですね、これは。
回収したものはこれまた昨日銀杏の臭いがした場所へ移動させるという作業をするようで重労働。
これまた木製の荷車に積んで運んでを何度も繰り返すことになります。
すると半頭ほど終わったところで男の人たちのざわつく声が聞こえてきました。
そちらの方を伺うと私たちと年齢の近そうな青年が数人います。
目が合いましたのでとりあえずはご挨拶です。
「おはようございます」
一瞬、動きが止まったもののからかうような笑い声が響き渡りました。
「おい、いつもより、早く進んでるみたいだせ」
「やっと使いものになったってとこか」
こちらの存在など無視するかのように青年たちは綺麗になった区画に入り、馬の世話を始めました。
あまりいい雰囲気とは言えませんがこの作業は終えなければいけませんよね。
何となく察し、さっさと片づけて関わらないのが一番かと。
「おい、今、ここに落ちたぞ! 拾えよ」
からかうような小ばかにした口調が馬小屋に響きわたります。
区画に入った一人の青年が叫ぶとアニーさんは荷車を引いて慌てて戻りました。
青年は足で地面をコツコツと踏み、顎を使ってここだと合図しました。
そしてまだ落としたての温かい汚物を煽るように拾わせ、処理させる始末。
その光景を周りがあざ笑っているのも分かります。
もちろん、私も手伝いましたが何となく腹が立ってしまいました。
これは人としてどうなのかと。
「お言葉ですが、その態度はどうかと思います」
思わずつい書道部の中等部副部長としての立場で口が出てしまいました。
青年は睨むようにこちらを見て何だと! と声を荒げました。
青蘭学園は学年を問わず、理不尽に感じることを我慢する指導はありません!
双方意見を述べて解決へと穏便に導き、皆で納得する指導がモットーなのですから。
不審な点を見逃していたら事が大きくなる可能性がありますしね。
するとアニーさんは私の間に入り、ひたすら頭を下げ続けました。
不穏な空気に舌打ちした青年は近くのバケツを蹴飛ばすと私たちに背を向けて作業に戻っていきました。
その様子を確認したアニーさんも作業途中までの場所へ荷車を戻し、仕事を続けます。
これで収まったということでしょうか?
何だか一方的な感じですがアニーさんの顔を立てるしかありません。
納得のいかないまま、結局、馬小屋の清掃に追われることとなりました。
もちろん、お腹が空いた! というのもあるのかもしれませんが理不尽な思いは解消できずです。
さて、私は一体、何をしているのでしょうか?
正解は板で作られたシャベルらしきものを持って只今、馬小屋掃除中、といったところです。
今朝は甲高い鳥の鳴き声が聞こえてきたと同時に目が覚めました。
草を背もたれにしゃがんだままでしたがいつの間にか眠っていて割と熟睡できたようです。
ちょっと身体がボキボキと鳴りましたが。
お目覚め早々にアニーさんが私の手を引っ張ります。
昨日の流れでもうこうなったら何かの日課があるのだなと察しますよ。
で、連れてこられたのが昨日遠巻きに嘶きが聞こえていた場所である馬小屋。
茶色の立派な馬が何頭も飼育されているらしい広い厩舎。
あちらこちらから鼻息やら嘶きやらが響き渡ります。
もちろん、一頭一頭区切られてはいるものの、私たちが就寝したスペースより限りなく広いですよね。
そのお馬さんの部屋には大量の落し物があって今まさにそれをアニーさんと共に撤去している最中なのです。
何頭いるのか分かりませんがいろんな場所に山積みになったそれを拾ってます。
しかも全頭分を搔き集めてこなさなければならない様子ですね、これは。
回収したものはこれまた昨日銀杏の臭いがした場所へ移動させるという作業をするようで重労働。
これまた木製の荷車に積んで運んでを何度も繰り返すことになります。
すると半頭ほど終わったところで男の人たちのざわつく声が聞こえてきました。
そちらの方を伺うと私たちと年齢の近そうな青年が数人います。
目が合いましたのでとりあえずはご挨拶です。
「おはようございます」
一瞬、動きが止まったもののからかうような笑い声が響き渡りました。
「おい、いつもより、早く進んでるみたいだせ」
「やっと使いものになったってとこか」
こちらの存在など無視するかのように青年たちは綺麗になった区画に入り、馬の世話を始めました。
あまりいい雰囲気とは言えませんがこの作業は終えなければいけませんよね。
何となく察し、さっさと片づけて関わらないのが一番かと。
「おい、今、ここに落ちたぞ! 拾えよ」
からかうような小ばかにした口調が馬小屋に響きわたります。
区画に入った一人の青年が叫ぶとアニーさんは荷車を引いて慌てて戻りました。
青年は足で地面をコツコツと踏み、顎を使ってここだと合図しました。
そしてまだ落としたての温かい汚物を煽るように拾わせ、処理させる始末。
その光景を周りがあざ笑っているのも分かります。
もちろん、私も手伝いましたが何となく腹が立ってしまいました。
これは人としてどうなのかと。
「お言葉ですが、その態度はどうかと思います」
思わずつい書道部の中等部副部長としての立場で口が出てしまいました。
青年は睨むようにこちらを見て何だと! と声を荒げました。
青蘭学園は学年を問わず、理不尽に感じることを我慢する指導はありません!
双方意見を述べて解決へと穏便に導き、皆で納得する指導がモットーなのですから。
不審な点を見逃していたら事が大きくなる可能性がありますしね。
するとアニーさんは私の間に入り、ひたすら頭を下げ続けました。
不穏な空気に舌打ちした青年は近くのバケツを蹴飛ばすと私たちに背を向けて作業に戻っていきました。
その様子を確認したアニーさんも作業途中までの場所へ荷車を戻し、仕事を続けます。
これで収まったということでしょうか?
何だか一方的な感じですがアニーさんの顔を立てるしかありません。
納得のいかないまま、結局、馬小屋の清掃に追われることとなりました。
もちろん、お腹が空いた! というのもあるのかもしれませんが理不尽な思いは解消できずです。
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