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容疑の民
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ようやく全頭分の掃除が終わり、空腹感もピークに達した時、アニーさんが私の手を引っ張ります。
どうやら昨晩食事した場所へと移動のようです。
もしかすると朝食でしょうか? と期待しましたが山積みのお皿を見て察しました。
……きっとこれが終わってからなんでしょうね。
予想通りの展開でアニーさんが手早く始めたので私もすぐに加わります。
もうコツは覚えましたので昨日よりははかどってるかと思います。
ただただふらふらしそうな身体を保ちつつ、何とか朝ごはんにありつけそうです。
今朝もやはり焦げたパン数個とスープ、そしてゆで卵が1個ありました。
正直、あの肉体労働の後の食事内容とは思えません。
もしかするとずっとこのような扱いで過ごすのでしょうか?
それにアニーさんはずっとこのような状態を過ごしてきたのでしょうか?
おまけに私という存在が増えた分、食べる量も減っているのではないのでしょうか?
ゆで卵1個を半分ずつにしなければならないということが何よりの根拠。
2人なら2個というのが相場のような気がします。
少し大きな方を譲るというアニーさんの優しさが染み渡り、この人が罪人とは思えません。
とりあえず様子を把握することから見守ってきましたが今朝の出来事といい、限界がきています。
これはさすがにそろそろ聞いてみる必要があるかと思いますが……。
「あの、アニーさん……」
朝食後、ひと段落着いたと思われるので声をかけてみます。
昨日は暗くてよく理解できなかったのですが、戻ってきた乾草小屋は馬たちの餌置き場だと分かりました。
馬の餌である乾草の中で寝て過ごしたという訳です。
世界は広いですが未だにこんな生活環境があるとは思ってもみませんでした。
少なくとも私は身をもって知りましたけど。
「アニーさんはここでこんな風な生活をずっとしていたのですか?」
小屋の前で立ち止まるアニーさんは目をそらすように小さくうなずきました。
いつ編んだか判らないくしゃくしゃなままの三つ編みや薄汚れた肌、元々私と同じ型だったであろうほつれてよろよろになったワンピース。
ここで過ごした日々が過酷なものだったと陽の光で明らかです。
「何をされたのか知りませんが、悪い人のように思えません。もし、私でよければお話していただけませんか?」
ですが、顔をそらしたまま、ゆっくりと首を横に振りました。
やはり、私は私なりに怪しい人物なんでしょう。
この国ではどう見ても異国の娘、でも話していることは伝わってるようです。
まだよく解りませんが客観的に判断して日本人であるこの私が何も知らないくせに先輩を差し置いてペラペラとしゃべっているという状態ですよね、これは。
……それで怪しまれている、とかですかね? まさかスパイ、みたいな。
推測して何ですが少し怖くなってきました。確かに怪しいですからね。
でも、私は青蘭学園の中学生です。
きちんと問い合わせてもらえればはっきりと判ると思うのですが、それすら聞き入れてもらえないという状況下。
パスポートも生徒手帳ですら所持してませんから身元を証明できるものは無いのですが、目の前のアニーさんには疑われたくありません。
相手に信頼してもらうならば行動や態度、そして私を知ってもらうために正直に包み隠さず根気よく説明するしかないでしょう。
そうやって書道部で中等部副部長として補佐してきましたから。
せっかく言葉が通じているわけですからコミュニケーションを取るしかありません。
そう決めると私はアニーさんと向き合うことにしました。
どうやら昨晩食事した場所へと移動のようです。
もしかすると朝食でしょうか? と期待しましたが山積みのお皿を見て察しました。
……きっとこれが終わってからなんでしょうね。
予想通りの展開でアニーさんが手早く始めたので私もすぐに加わります。
もうコツは覚えましたので昨日よりははかどってるかと思います。
ただただふらふらしそうな身体を保ちつつ、何とか朝ごはんにありつけそうです。
今朝もやはり焦げたパン数個とスープ、そしてゆで卵が1個ありました。
正直、あの肉体労働の後の食事内容とは思えません。
もしかするとずっとこのような扱いで過ごすのでしょうか?
それにアニーさんはずっとこのような状態を過ごしてきたのでしょうか?
おまけに私という存在が増えた分、食べる量も減っているのではないのでしょうか?
ゆで卵1個を半分ずつにしなければならないということが何よりの根拠。
2人なら2個というのが相場のような気がします。
少し大きな方を譲るというアニーさんの優しさが染み渡り、この人が罪人とは思えません。
とりあえず様子を把握することから見守ってきましたが今朝の出来事といい、限界がきています。
これはさすがにそろそろ聞いてみる必要があるかと思いますが……。
「あの、アニーさん……」
朝食後、ひと段落着いたと思われるので声をかけてみます。
昨日は暗くてよく理解できなかったのですが、戻ってきた乾草小屋は馬たちの餌置き場だと分かりました。
馬の餌である乾草の中で寝て過ごしたという訳です。
世界は広いですが未だにこんな生活環境があるとは思ってもみませんでした。
少なくとも私は身をもって知りましたけど。
「アニーさんはここでこんな風な生活をずっとしていたのですか?」
小屋の前で立ち止まるアニーさんは目をそらすように小さくうなずきました。
いつ編んだか判らないくしゃくしゃなままの三つ編みや薄汚れた肌、元々私と同じ型だったであろうほつれてよろよろになったワンピース。
ここで過ごした日々が過酷なものだったと陽の光で明らかです。
「何をされたのか知りませんが、悪い人のように思えません。もし、私でよければお話していただけませんか?」
ですが、顔をそらしたまま、ゆっくりと首を横に振りました。
やはり、私は私なりに怪しい人物なんでしょう。
この国ではどう見ても異国の娘、でも話していることは伝わってるようです。
まだよく解りませんが客観的に判断して日本人であるこの私が何も知らないくせに先輩を差し置いてペラペラとしゃべっているという状態ですよね、これは。
……それで怪しまれている、とかですかね? まさかスパイ、みたいな。
推測して何ですが少し怖くなってきました。確かに怪しいですからね。
でも、私は青蘭学園の中学生です。
きちんと問い合わせてもらえればはっきりと判ると思うのですが、それすら聞き入れてもらえないという状況下。
パスポートも生徒手帳ですら所持してませんから身元を証明できるものは無いのですが、目の前のアニーさんには疑われたくありません。
相手に信頼してもらうならば行動や態度、そして私を知ってもらうために正直に包み隠さず根気よく説明するしかないでしょう。
そうやって書道部で中等部副部長として補佐してきましたから。
せっかく言葉が通じているわけですからコミュニケーションを取るしかありません。
そう決めると私はアニーさんと向き合うことにしました。
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