21 / 48
神竜の審判
4
しおりを挟む
白い石を積み上げた円筒型で高さのある塔の前。
その大きさの存在感は半端ない状態です。
塔の入口へとつながる道は石で敷き詰められた橋になっていて渡れば扉の前となっているようです。
幅はそれなりに広めですが柵などはなく、うっかりすると落下の可能性も。
橋を渡る前に手に繋がられたひもがほどかれようやく両手が自由の身。
手の拘束が無くなっただけでも万が一の落下が防げますね。
とはいえ、巫女さんを先頭にこれまた一人一人進むよう誘導されます。
「これより神龍の意に沿い、この塔の試練より出られし者がご加護を受けたものとする」
張りのある声で巫女さんがこの場にいる皆さんに聞こえるように発しました。
えっ、塔の試練から出るってどういうことですか?
周囲の皆さんもざわつきます。
それを押し切るような形で目の前の重そうな扉が開きました。
観音開きで複数の巫女さんの手によって開かれた中からはもくもくと白い煙が出てきました。
そして何だか甘いような優雅で上品な香りが漂ってきます。
そう、お香のような優しい香りです。
正直、いい香りですよ。
と少し和んだところを水を差すように全員が中へと押し込められます。
入ってみると中心部に大きな空洞があることが認識できてそこから煙が上がっています。
防護柵なんてものが無く、押されたり、油断していたら下へ落ちそうです。
覗いてみようにも煙が充満して全く下が見えません。
見上げるとらせん状に上へとつながる階段があり、外へと通じそうな出口らしい場所が見えました。
ただ、その階段は手すりなんてものが無く、一人しか登れなさそうな幅になっていて踏み外したらこの中央部の空洞に落ちてしまうような構造となってます。
ということはかなり危険な場所じゃないですか?
そんな仕組みの塔を出ろという試練ですか?
「神龍のご加護がありますように」
その言葉を最後に重い扉が閉じられました。その途端、ろうそくの明かりのみの薄暗い空間へ。
「よおし、ここから出たらいいんだな」
誰かが言葉を発したのがきっかけで螺旋階段に詰めかけ、我先と言わんばかりで押し合いへし合いが始まりました。
その合間をかいくぐって出し抜くように登り始めた人もいます。
私は焦った人に突き倒されてしまい、まだ動けずにいました。
目の前の光景に何とも言えない感情がこみ上げます。
どうして皆さんが助かるような方法を考える、とか思い付かないのでしょうか?
こういう時は焦らず譲り合おうとか協力して団結しようとか思わないのでしょうか?
まずは状況を把握して冷静に対処しなければと判断します。
階段はどう見ても一人一人しか進めず、押しのけてしまえば落ちてしまう構造。
出口は随分と上の方ですし、高くなればなるほど、足がすくむだろうと思えます。
けれども、時すでに遅し、皆さん殺到して混雑中。
もう収拾がつかない状態のようです。
そんな光景を眺めていたらアニーさんが駆け寄って私をそっと起こします。
その時です。
さっきまで香っていた臭いが消え、大きな破裂音が!
一瞬、炎が燃え上がり、中心部からゴウゴウと黒い煙が上がってきたのでした。
その大きさの存在感は半端ない状態です。
塔の入口へとつながる道は石で敷き詰められた橋になっていて渡れば扉の前となっているようです。
幅はそれなりに広めですが柵などはなく、うっかりすると落下の可能性も。
橋を渡る前に手に繋がられたひもがほどかれようやく両手が自由の身。
手の拘束が無くなっただけでも万が一の落下が防げますね。
とはいえ、巫女さんを先頭にこれまた一人一人進むよう誘導されます。
「これより神龍の意に沿い、この塔の試練より出られし者がご加護を受けたものとする」
張りのある声で巫女さんがこの場にいる皆さんに聞こえるように発しました。
えっ、塔の試練から出るってどういうことですか?
周囲の皆さんもざわつきます。
それを押し切るような形で目の前の重そうな扉が開きました。
観音開きで複数の巫女さんの手によって開かれた中からはもくもくと白い煙が出てきました。
そして何だか甘いような優雅で上品な香りが漂ってきます。
そう、お香のような優しい香りです。
正直、いい香りですよ。
と少し和んだところを水を差すように全員が中へと押し込められます。
入ってみると中心部に大きな空洞があることが認識できてそこから煙が上がっています。
防護柵なんてものが無く、押されたり、油断していたら下へ落ちそうです。
覗いてみようにも煙が充満して全く下が見えません。
見上げるとらせん状に上へとつながる階段があり、外へと通じそうな出口らしい場所が見えました。
ただ、その階段は手すりなんてものが無く、一人しか登れなさそうな幅になっていて踏み外したらこの中央部の空洞に落ちてしまうような構造となってます。
ということはかなり危険な場所じゃないですか?
そんな仕組みの塔を出ろという試練ですか?
「神龍のご加護がありますように」
その言葉を最後に重い扉が閉じられました。その途端、ろうそくの明かりのみの薄暗い空間へ。
「よおし、ここから出たらいいんだな」
誰かが言葉を発したのがきっかけで螺旋階段に詰めかけ、我先と言わんばかりで押し合いへし合いが始まりました。
その合間をかいくぐって出し抜くように登り始めた人もいます。
私は焦った人に突き倒されてしまい、まだ動けずにいました。
目の前の光景に何とも言えない感情がこみ上げます。
どうして皆さんが助かるような方法を考える、とか思い付かないのでしょうか?
こういう時は焦らず譲り合おうとか協力して団結しようとか思わないのでしょうか?
まずは状況を把握して冷静に対処しなければと判断します。
階段はどう見ても一人一人しか進めず、押しのけてしまえば落ちてしまう構造。
出口は随分と上の方ですし、高くなればなるほど、足がすくむだろうと思えます。
けれども、時すでに遅し、皆さん殺到して混雑中。
もう収拾がつかない状態のようです。
そんな光景を眺めていたらアニーさんが駆け寄って私をそっと起こします。
その時です。
さっきまで香っていた臭いが消え、大きな破裂音が!
一瞬、炎が燃え上がり、中心部からゴウゴウと黒い煙が上がってきたのでした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる