御招待ありがとう~書道ガールが洋風異世界へ~

おりのめぐむ

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神竜の審判

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 あれ? 今、一瞬何かが……?
 そう思ったのもつかの間、悲鳴が上がり、ますますパニック状態です。
 目を血走らせ、既に上がっていた人たちを蹴散らして我先に……という事態が続出している雰囲気。
 確かに命がかかわってますから焦る気持ちも判らなくもないですが、自分のことしか考えていない様子で突き落とし、ついに落下者まで出てしまいました。
 ひ、人が叫びながら煙の中へと消えていったんですよ!
 こ、これは恐怖以外、何者でもありません。
 さ、殺人ですよ、殺人!! もし落下した人が死んでしまったのならば!
 そんな状況も気にすることなく、我先へと押し合いが続いています。
 皆さんは確か無実で連れられてきたお仲間のはずですよね?
 けれども随分と柄の悪い方々もいらっしゃるようです。
 多分、事故ですよね? 冷静でいられなくなった、みたいな。
 だったらと私は思わず立ち上って、大きな声を出してしまいました。
 
「皆さん、落ち着いてください!」

 こういう時こそ冷静に、落ち着いた行動を行なわなければいけません。
 学校での避難訓練を思い出しました。
 リーダーとなる人がいない今、差し出がましいですけど、副部長として立ち上がります!
 無実の方々が混乱しているだけと思いますからきっと耳を傾けてくれると思います。
 気持ちが急いても落ち着いた行動が大事です。
 少しでも多くの人が助かる方法を見出すためなのです!
 冷静にしっかりと声を掲げて落ち着くように促します。
 ですが誰一人として耳を貸す人は無く、螺旋階段は地獄絵図と化してます。
 無実の人が無理矢理……と疑っていたのですがこの様子は。
 押し合いへし合い罵り合い。落とされる人たちの声が響き渡ります。
 危機迫る時、本性を現すということでしょうか?
 ということは神龍の裁判はあながち間違っていないのでしょうか?

 やがて黒い煙は充満し始め、周囲すら見えなくなってきました。
 もう身勝手な人たちに構ってる状況ではないようです。
 自分の身は自分で守る。
 ただし、人を陥れてまで助かるような方法はとりたくありません。
 不意に煙が目につき、焦げた臭いがします。 
 そうです、こういう時には!

「アニーさん、できるだけ床に近い状態に這ってください」

 確か煙は上へと引き寄せられたはずです。
 私はほふく前進するかのように地べたへと伏せます。
 ちらりと振り返るとアニーさんも同じように行動してくれてました。
 こうすることで少しでも呼吸を維持しなくては。
 立っていた時よりは煙の量は少なく、まだ咳き込むまではありません。

「あの、アニーさん、確かめたいことがあるんです。どうなるか判りませんが私と離れず、付いてきてくれますか?」 

 異国の地で死が迫る状況。
 どうせ死ぬのでしたら心を通わせられたアニーさんといたいです。
 そして死体と発見されたとしても一人寂しく死んでいない。
 異国の地で親しくなれた人と共に死ねたら幸せかと思います。
 同じ気持ちだといいのですが、きちんと確認をとっておかないと私の行動のせいでアニーさんの命を奪ってしまう可能性も否定できません。
 もちろん死ぬ気なんて満更ないのですが、ここで離れ離れになるのは避けたいところです。
 アニーさんは覚悟が決まっていたらしく、大きくうなづいてくれました。
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