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神竜の審判
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……口元にひんやりという感触がありました。
霞んだ景色には石畳の床にたくさんの横たわった人たち。
そして白ローブの巫女さんが私の目に映った気がします。
「この者、息があるようです!」
ぼんやりと巫女さんの声が聞こえました。
つぶやいた言葉が本当であれば私は生きているのでしょうか。
もし、そうであれば……。
不意に握った手の感覚が無いことに気づき、瞬時にアニーさんが過ぎりました。
『アニーさんは……、アニーさんは……?』
朦朧とした中、必死でアニーさんの名を口にします。したつもりです。
ですがそれは声となって発することはありません。
一生懸命叫んでいるつもりなのですが身体に力が入ってません。
ただ横たわったまま、弱い意識の中で想像している感覚です。
夢うつつの中、必死で叫んでいる、のに……。
結局、再びこの感覚が遠ざかっていきました。
はっきりと意識が……といえる頃はこの時から2日後、とのことでした。
気がつくとベッドに寝かされていたという状況です。
しかし、起き上がれるような状態ではありません。
ただ、目が開いて石造りの天井を見ているだけです。
……ここは一体どこでしょうか?
身体に力が入りません。きっと力が出る状態ではないということ。
何せ、審判前には食事という食事はありませんでしたし、そこそこの道のりを歩かされ、塔では煙攻めや全力疾走的なことなど、体力を使うだけ使い……。
そうです! 私は生きているのでしょうか?
もしかするとあの世の可能性も否定できませんね、動けませんが。
そんな風に思考を凝らしていると誰かが近づいてきました。
ほんの少し見慣れた装いの白ローブの巫女さんです。
ということで判明しました! どうやら私は生きているみたい、です!
「目覚めたようですね」
抑揚のない棒読みのようなその言葉。
そう呟いた後は私の口に突然液体を含ませました。
水とは違う臭いのない苦い液体が口の中に広がります。
でもそのようなモノでさえ、身体が求めているので呑み込んでいきます。
ずっと飲まず食わずでしたからね。当然、お腹空いてますよ。
それに育ち盛りですから単純に食べれるものを欲しているのでしょうし。
いつもいつも焦げたパンやら具のないスープとか食べていたから何でも受け付けるかと。
と、その時、頭にアニーさんが過ぎりました。
そうです! アニーさんはどうなっているのでしょう。
とはいえ、スプーンで次々と流し込まれる液体を遮ることができません。
まるで椀子ソバ状態じゃないですか!
一旦、口をぎゅっと閉じることにしました。
そうすると、巫女さんの手が止まりました。
再び口を開いたつもりですが声が出ません。
ただ、呻き声としかいえないような音が響き渡ります。
アニーさんのことが聞きたいのに言葉を発することができないのです。
とても悔しくて目頭が熱くなり、何かがゆっくりと顔の端を伝っていく感覚がありました。
どうやら涙は出ているようです。
私は意識はしっかりしているのに身体は動けない状態で生きていると確信しました。
霞んだ景色には石畳の床にたくさんの横たわった人たち。
そして白ローブの巫女さんが私の目に映った気がします。
「この者、息があるようです!」
ぼんやりと巫女さんの声が聞こえました。
つぶやいた言葉が本当であれば私は生きているのでしょうか。
もし、そうであれば……。
不意に握った手の感覚が無いことに気づき、瞬時にアニーさんが過ぎりました。
『アニーさんは……、アニーさんは……?』
朦朧とした中、必死でアニーさんの名を口にします。したつもりです。
ですがそれは声となって発することはありません。
一生懸命叫んでいるつもりなのですが身体に力が入ってません。
ただ横たわったまま、弱い意識の中で想像している感覚です。
夢うつつの中、必死で叫んでいる、のに……。
結局、再びこの感覚が遠ざかっていきました。
はっきりと意識が……といえる頃はこの時から2日後、とのことでした。
気がつくとベッドに寝かされていたという状況です。
しかし、起き上がれるような状態ではありません。
ただ、目が開いて石造りの天井を見ているだけです。
……ここは一体どこでしょうか?
身体に力が入りません。きっと力が出る状態ではないということ。
何せ、審判前には食事という食事はありませんでしたし、そこそこの道のりを歩かされ、塔では煙攻めや全力疾走的なことなど、体力を使うだけ使い……。
そうです! 私は生きているのでしょうか?
もしかするとあの世の可能性も否定できませんね、動けませんが。
そんな風に思考を凝らしていると誰かが近づいてきました。
ほんの少し見慣れた装いの白ローブの巫女さんです。
ということで判明しました! どうやら私は生きているみたい、です!
「目覚めたようですね」
抑揚のない棒読みのようなその言葉。
そう呟いた後は私の口に突然液体を含ませました。
水とは違う臭いのない苦い液体が口の中に広がります。
でもそのようなモノでさえ、身体が求めているので呑み込んでいきます。
ずっと飲まず食わずでしたからね。当然、お腹空いてますよ。
それに育ち盛りですから単純に食べれるものを欲しているのでしょうし。
いつもいつも焦げたパンやら具のないスープとか食べていたから何でも受け付けるかと。
と、その時、頭にアニーさんが過ぎりました。
そうです! アニーさんはどうなっているのでしょう。
とはいえ、スプーンで次々と流し込まれる液体を遮ることができません。
まるで椀子ソバ状態じゃないですか!
一旦、口をぎゅっと閉じることにしました。
そうすると、巫女さんの手が止まりました。
再び口を開いたつもりですが声が出ません。
ただ、呻き声としかいえないような音が響き渡ります。
アニーさんのことが聞きたいのに言葉を発することができないのです。
とても悔しくて目頭が熱くなり、何かがゆっくりと顔の端を伝っていく感覚がありました。
どうやら涙は出ているようです。
私は意識はしっかりしているのに身体は動けない状態で生きていると確信しました。
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