御招待ありがとう~書道ガールが洋風異世界へ~

おりのめぐむ

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領主の使用人

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 朝、いつものように本館から料理を運び終わったところでエミリさんに声をかけられました。
 驚くことに突然今日からアニーさんと二人で使用人として本館で働くようにと指示が。
 まだ1カ月も経っていないというのにこれはもしかすると異例の出世ではないでしょうか?
 数年はかかるといわれた使用人への昇格。怪しげな感じは否めませんが指示には従わなければなりません。
 でも神龍様の思し召しかもしれませんよね? 無罪だったのですから。
 こういう時はプラスに考えた方がいいでしょう。
 それにこの国の位置について調べることもできるかもしれません。
 世界地図なるものを見せてもらえれば一目瞭然となるのですがエミリさんたちは所持していないとのこと。
 まあ、私自身、学校の補助教材としての地図帳を持つぐらいでしたから社会人の方が持つわけないですよね。
 よく考えればそうですね。つい博物館規模のお屋敷ですから授業で使うような大きな地図がありそうなどと思ってしまいましたよ。

「あなたたち二人には本館での食事の補助をしてもらいます」

 侍女長であるディアさんが指示を出しました。エミリさんから上司が交代したようです。

「食事の、補助、ですか?」

 てっきり掃除が待っていると思いました。耳にしていた話は本館の外回りから徐々に屋敷内へとレベルアップしていく内容でしたのに。
 訊けば本館内で寝泊まりする使用人がいるらしく、洋館とは別格の立場の使用人がいるとのこと。
 いわゆる役職持ちの方々らしく、その方々の食事の補助をするそうです。
 驚くことに領主さまと近い料理が振舞われるそうでいわゆる試作らしきものを準備する仕事がメイン。
 もちろん作るのは調理人ですが私たちが洋館内の使用人の方々に提示した食事に関してのアイデアが好評だったという理由で注目されたようです。
 毎日提供される料理は素晴らしいものですし、私自身何かを作ったわけではありません。
 ただひと工夫すればとか効率的にとかアニーさんとの協力の上で行動を起こしたまでで。
 温かい料理を提供できるとなってきたら今度は見た目を、とかそういったことを行なっただけです。
 けれどそれが使用人の方々にとって特別感を得たらしく話題になってしまっただけのこと。
 それが活力となってやる気に繋がったらしく、役職持ちの方々の耳に入ってしまったのでしょうね。
 決して私たちは特別なものを作れるわけではないのですが……。

「楽しみにしていますよ」

 ディアさんは期待した目で微笑を浮かべてます。
 百聞は一見に如かず。どんな期待をしているのか分かりませんが大したことないと気づくことでしょう。
 とりあえず様子見してから見習いに戻されるという前提で行動を起こしましょう。
 勘違いされていることを考慮してから判断を委ねるしかないようですからね。
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