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悪役侍女、真実を知る
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仕事も終了したその日の夕方、食事していると小屋がノックされる。
普段から閑古鳥状態の夕刻だが、緊急の用事だったら初仕事となる、とドアを開ければ騎士様だった。
もうとっくに馬は返却されていたし、ひと気がなくなった頃の訪問である。
昼間チラリと顔を見た程度で話ができない状態だったので訪ねて来てくれたのは嬉しかった。
小屋に入るよう伝えたが、騎士様に促され、厩舎へと移動した。
騎士様はボルトと改めて自己紹介し、簡単に挨拶を交わした後は近況話と移っていく。
「……アーデン様の成果はいかがですか?」
「ご指導いただいたことはしっかりと身についていると思います。もしよろしければまた見ていただけませんか? 滞在中で時間がある時にほんの少しでも。……できれば剣術以外にも貴族の常識程度も教授願えれば」
あれから4カ月以上は経っている。領内ではアーデンの噂は持ちきりなのに王都へは広がってないのだろうか。
けれどここぞとばかりにアーデンのことを頼み込む。
「入学してからも王女殿下はアーデン様を気にかけておいででした。ここで貴方を見かけたとご報告したところ、何かあれば是非助力して欲しいと賜わっております。もちろん私で宜しければ協力いたします」
ボルト様は胸に手を当てながら微笑む。さすが太陽姫の護衛騎士、眩しい!!
残念なことにマーデリンは明日王都へと戻るらしいが、ボルト様はもう少し下検分のために滞在するらしい。
ブランディンもいなくなることだし、これでほんの少しでも学ぶことができる。
滞在の時間は限られるので教わったことを習得するため、あの時みたいにアーデンは集中するだろう。
明日以降はしばらく鍛錬に励むだろうからもう少しだけアーデンと会うことなく過ごすことになる。
優先順位はアーデンの教育だ。小さな寂しさを抱えつつ、私は私でここでの仕事に頑張っていくとしよう。
そう、思っていたのに。
「おはよう、セシリア!」
朝から堂々とフードを被ったアーデンの姿があった。それもボルト様を伴って。
ブランディンとマーデリンは昨日王都へと戻り、王女殿下の護衛騎士として敬わなければいけない立場であるボルト様の行動を誰も阻害することはできないようだった。
臆することなく白昼堂々とアーデンを引き連れ馬場へとやってきて、視察同行させたいと希望したために遂行されている。
1週間ぶりのアーデンは元気そうですごく生き生きとしていて安心した。
しかも秘密裏ではなく人目に付く形で、さらにはしばらく会えないと思っていたのにまさかの展開だった。
もちろんジェフさんたちの目が厳しく話すことが憚られるので挨拶程度で控えることにはしたけども。
そしてこの状況の下、馬術を習える状態になったことに感謝だ。
相乗りという形だが馬に乗る技術を少しでも身に付けているようだった。
3日間だったがボルト様が同行することで太陽の下、毎日アーデンを見ることができて嬉しかった。
「やっとセシリアと話せる」
ボルト様が王都に戻ったその夜、当然のようにアーデンが小屋に訪ねてきた。
明日からは周囲に距離を置かれて白い目で見られるいつもの日常が戻ってくることが判っている。
アーデンとは顔は合わせてはいたものの、しばらく話しすらしていなかったので会話が弾む。
充分身に付けた基礎を褒められたとか新しい鍛錬に励んでいるとかいろいろ。
貴族教育に関して進捗があり、嬉しいことばかりだ。
今後は定期的にボルト様は視察としてグリフィス領にやってくるそうだ。
その際にはまた会うことを約束しているらしい。
きっとこれをきっかけにアーデンは着々と貴族教育を身に付け、学園入学を果たすのだろう。
私には何もできることはなく、ただそれを応援するのみだ。
足を引っ張ることなく表舞台に立たないよう目立たず、アーデンの迷惑にならないよう努めなければならない。
そうやってその年があっという間に過ぎていった。
普段から閑古鳥状態の夕刻だが、緊急の用事だったら初仕事となる、とドアを開ければ騎士様だった。
もうとっくに馬は返却されていたし、ひと気がなくなった頃の訪問である。
昼間チラリと顔を見た程度で話ができない状態だったので訪ねて来てくれたのは嬉しかった。
小屋に入るよう伝えたが、騎士様に促され、厩舎へと移動した。
騎士様はボルトと改めて自己紹介し、簡単に挨拶を交わした後は近況話と移っていく。
「……アーデン様の成果はいかがですか?」
「ご指導いただいたことはしっかりと身についていると思います。もしよろしければまた見ていただけませんか? 滞在中で時間がある時にほんの少しでも。……できれば剣術以外にも貴族の常識程度も教授願えれば」
あれから4カ月以上は経っている。領内ではアーデンの噂は持ちきりなのに王都へは広がってないのだろうか。
けれどここぞとばかりにアーデンのことを頼み込む。
「入学してからも王女殿下はアーデン様を気にかけておいででした。ここで貴方を見かけたとご報告したところ、何かあれば是非助力して欲しいと賜わっております。もちろん私で宜しければ協力いたします」
ボルト様は胸に手を当てながら微笑む。さすが太陽姫の護衛騎士、眩しい!!
残念なことにマーデリンは明日王都へと戻るらしいが、ボルト様はもう少し下検分のために滞在するらしい。
ブランディンもいなくなることだし、これでほんの少しでも学ぶことができる。
滞在の時間は限られるので教わったことを習得するため、あの時みたいにアーデンは集中するだろう。
明日以降はしばらく鍛錬に励むだろうからもう少しだけアーデンと会うことなく過ごすことになる。
優先順位はアーデンの教育だ。小さな寂しさを抱えつつ、私は私でここでの仕事に頑張っていくとしよう。
そう、思っていたのに。
「おはよう、セシリア!」
朝から堂々とフードを被ったアーデンの姿があった。それもボルト様を伴って。
ブランディンとマーデリンは昨日王都へと戻り、王女殿下の護衛騎士として敬わなければいけない立場であるボルト様の行動を誰も阻害することはできないようだった。
臆することなく白昼堂々とアーデンを引き連れ馬場へとやってきて、視察同行させたいと希望したために遂行されている。
1週間ぶりのアーデンは元気そうですごく生き生きとしていて安心した。
しかも秘密裏ではなく人目に付く形で、さらにはしばらく会えないと思っていたのにまさかの展開だった。
もちろんジェフさんたちの目が厳しく話すことが憚られるので挨拶程度で控えることにはしたけども。
そしてこの状況の下、馬術を習える状態になったことに感謝だ。
相乗りという形だが馬に乗る技術を少しでも身に付けているようだった。
3日間だったがボルト様が同行することで太陽の下、毎日アーデンを見ることができて嬉しかった。
「やっとセシリアと話せる」
ボルト様が王都に戻ったその夜、当然のようにアーデンが小屋に訪ねてきた。
明日からは周囲に距離を置かれて白い目で見られるいつもの日常が戻ってくることが判っている。
アーデンとは顔は合わせてはいたものの、しばらく話しすらしていなかったので会話が弾む。
充分身に付けた基礎を褒められたとか新しい鍛錬に励んでいるとかいろいろ。
貴族教育に関して進捗があり、嬉しいことばかりだ。
今後は定期的にボルト様は視察としてグリフィス領にやってくるそうだ。
その際にはまた会うことを約束しているらしい。
きっとこれをきっかけにアーデンは着々と貴族教育を身に付け、学園入学を果たすのだろう。
私には何もできることはなく、ただそれを応援するのみだ。
足を引っ張ることなく表舞台に立たないよう目立たず、アーデンの迷惑にならないよう努めなければならない。
そうやってその年があっという間に過ぎていった。
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