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プロローグ
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幼い頃の思い出。
確か5、6歳の頃だと思う。
死んだ母親からよく”人魚姫”の童話を読み聞かされていた。
童話を読んでもらう度に不思議に思うことがあった。
そんなある日、何故だか急に母親に聞いてみたくなった。
「あのね、どうして人魚姫は人魚に戻らなかったの?」
『それはねぇ、人魚姫は王子様を好きだったらなの』
「どうして王子様は人魚姫と結婚できなかったの?」
『人魚姫はお話が出来なかったから本当のことが言えなかったの』
「じゃあ、どうして人魚姫は海の泡になったの?」
『人魚姫は自分が死んでもいいくらい王子様が好きだったのね』
「死んでもいいくらい……?」
『そう、自分が死んでもいいくらい、にね……』
そして母親はフッと意味ありげに微笑んでいた。
父親に"隣の国のお姫様"がいたのを知っていたかように。
それから急に病気で死んで逝った。
王子のために人間になり、王子のために死を選ぶ。
人魚は自らを犠牲にして愛を貫いたという童話。
そんな自ら死を選んだ愛し方なんて本当にあるのか?
―――俺はそんな愛なんて知らない。
そう思っていた、ついこの間までは。
確か5、6歳の頃だと思う。
死んだ母親からよく”人魚姫”の童話を読み聞かされていた。
童話を読んでもらう度に不思議に思うことがあった。
そんなある日、何故だか急に母親に聞いてみたくなった。
「あのね、どうして人魚姫は人魚に戻らなかったの?」
『それはねぇ、人魚姫は王子様を好きだったらなの』
「どうして王子様は人魚姫と結婚できなかったの?」
『人魚姫はお話が出来なかったから本当のことが言えなかったの』
「じゃあ、どうして人魚姫は海の泡になったの?」
『人魚姫は自分が死んでもいいくらい王子様が好きだったのね』
「死んでもいいくらい……?」
『そう、自分が死んでもいいくらい、にね……』
そして母親はフッと意味ありげに微笑んでいた。
父親に"隣の国のお姫様"がいたのを知っていたかように。
それから急に病気で死んで逝った。
王子のために人間になり、王子のために死を選ぶ。
人魚は自らを犠牲にして愛を貫いたという童話。
そんな自ら死を選んだ愛し方なんて本当にあるのか?
―――俺はそんな愛なんて知らない。
そう思っていた、ついこの間までは。
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