人魚姫の王子

おりのめぐむ

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見せかけの継母

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 高校2年最後の終業式。
 明日から春休みってやつでクラスの連中が浮かれ気分になってる頃。
 俺、橘川弘樹たちかわひろきはムシャクシャしていた。

 ……朝からアイツと顔を合わせたからだ。
 いつもならかち合う事が無いのに今日は違った。
 どうやら2日前に学校から呼び出しをくらったことを言いたかったらしい。

「弘樹くん、こんなこと言いたくないんだけどしっかりしてくれないと困るのよね。ほらぁ、一応、お父さんからあなたのことを任されてるじゃない? まあ、アタシだって仕事があるし。あまり時間が取れないけど、何かあるなら言ってよね」

 ため息交じりにアイツが母親面。
 明らかに迷惑といった口調で上っ面だけとありあり。

「でもホントの母親じゃないし。打ち解けないのも分かるけど学校から呼び出しはやめてほしいのよね。でなきゃ今度はお父さんを呼ぶんだって」

 赤く塗られた唇からブツブツと呟く。

「いい学校に通ってるんだからこれ以上問題を起こさないでね。両親が呼び出されるなんて恥ずかしくて」

 短い髪をかき上げながら俺と目を合わさずに自分の身支度を整える。
 アイツは父親の3度目の女だ。
 父親の子会社で女社長をやってるキャリアウーマン気取り。
 厚化粧で派手な格好をし、母親面もしてやがる。
 普段からほとんど顔を合わせることがないのにこうやって待ち構えられるとうっとおしくて腹が立つ。
 言いたいことだけ言ってアイツはさっさと仕事へと出かけた。
 呼び出しの原因は俺が進級できるかといった問題だ。
 私立ってことで多額の寄付と春休み返上で学校に登校することでそれは解決した。
 結局、高1の時と同じ。
 ただ違うのは高3は大事な時期と位置づけし、アイツを呼び出したことだった。

 とにかく朝からアイツとかち合い、春休みは無し。
 浮かれ気分の奴らが帰った後も一人居残り補講。

―――そんなこんなでムシャクシャしていたのだ。
 どうにかして憂さを晴らしたかった。
 俺の心情はただこれだけだった。
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