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見失った宝物
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しっかりと意識を取り戻した時には病院のベッドの上。
自由の利かない身体は動かしようもなく、視界の範囲を探っていた。
何気に見たベッドの傍らには驚くことに父親……ヤツがいた。
その顔は酷く疲れ切っていたが、意識を取り戻した俺に気づくと一瞬ほころんだ表情になり、
「医者を呼んでくる」
と、いつものトーンに声を落とし、足早に病室を出て行った。
しばらくして医者が来ると簡単な診察や質問をする。
医者とヤツが出て行った後、入れ替わりに看護師がやってきた。
「良かったわ。丸2日も意識が戻らなかったのよ。お父様もご心配されて眠らずにずっと付きっきりだったの。これで一安心なさるでしょうね」
看護師は点滴を換えながら微笑む。
「しばらく入院になりますがお若いからすぐに直りますよ。だからと言って無理しないでくださいね」
身体のあちこちが痛む俺を察したのか看護師はそう言った。
今の現状で目に見える範囲は包帯を巻かれた姿。
首から右肩にかけてはギブスのような堅いもので固定され、肘までは動かすことさえ出来ない。
両腕から指先までも見事なまでに細かく包帯が巻かれ、そのケガの具合を窺わせた。
掛け布団で下半身は見えないがおそらくこの調子に違いない。
無理をしようにも今の段階では起き上がることすらままならない。
一体、何がどうなってんだ? どうしてこうなってしまったんだ?
ふとヤツがいなくなった椅子の上の新聞が目に入る。
そこで病室を去ろうとした看護師に頼み、それを取ってもらった。
かろうじて動かせる左手で4つ折の新聞を挟み、紙面トップの内容を目で追う。
見出しには『台風で海難事故』と表記され、起こった事故の詳細が載っていた。
~7月✕✕日午前11時過ぎ、✕✕海上沖にて積荷重量超過が原因と思われるエンジントラブルの発生で停止中だった✕✕フェリーに勢力を上げ、進路変更した台風が直撃。乗客7名の死亡を確認、安否不明者は10名、重軽傷者40名以上とみられている。なお、安否不明者は以下の10名…~
「……ない」
ざっと目を通したがそこには知夏の名前はなかった。
……ということは知夏は生きている!?
確かな情報が知りたいと思った矢先、目の前から活字が消えていた。
いつの間にかヤツが戻ってきていて読んでいた新聞を取り上げたのだ。
「いいか、お前は治療に専念することだけを考えていればいいんだ」
意識が戻った時、一瞬でも見せた安堵の顔が嘘のように冷たく豹変していた。
「うるせぇ。知夏はどこにいるんだ? 無事なのか?」
力のない声で精一杯の反発を向ける。
ヤツはそんな俺の状態を知ってか知らずか、
「あの娘とは今後一切関わるな、いいな?」
強い口調で言い放つとしばらく来ないと呟きながら去っていった。
知夏のことが気になり、看護師に尋ねたがどうやら口止めされているのか、はぐらかされて詳しいことを知ることは出来なかった。
確信はないがただ何となく同じ病院に運ばれているということだけが窺えた。
とにかく知夏が病院に運ばれているということは生きているという証。
何も分からない中、その情報を得ただけでも幸いだった。
それだけが、今の俺の救いだった。
自由の利かない身体は動かしようもなく、視界の範囲を探っていた。
何気に見たベッドの傍らには驚くことに父親……ヤツがいた。
その顔は酷く疲れ切っていたが、意識を取り戻した俺に気づくと一瞬ほころんだ表情になり、
「医者を呼んでくる」
と、いつものトーンに声を落とし、足早に病室を出て行った。
しばらくして医者が来ると簡単な診察や質問をする。
医者とヤツが出て行った後、入れ替わりに看護師がやってきた。
「良かったわ。丸2日も意識が戻らなかったのよ。お父様もご心配されて眠らずにずっと付きっきりだったの。これで一安心なさるでしょうね」
看護師は点滴を換えながら微笑む。
「しばらく入院になりますがお若いからすぐに直りますよ。だからと言って無理しないでくださいね」
身体のあちこちが痛む俺を察したのか看護師はそう言った。
今の現状で目に見える範囲は包帯を巻かれた姿。
首から右肩にかけてはギブスのような堅いもので固定され、肘までは動かすことさえ出来ない。
両腕から指先までも見事なまでに細かく包帯が巻かれ、そのケガの具合を窺わせた。
掛け布団で下半身は見えないがおそらくこの調子に違いない。
無理をしようにも今の段階では起き上がることすらままならない。
一体、何がどうなってんだ? どうしてこうなってしまったんだ?
ふとヤツがいなくなった椅子の上の新聞が目に入る。
そこで病室を去ろうとした看護師に頼み、それを取ってもらった。
かろうじて動かせる左手で4つ折の新聞を挟み、紙面トップの内容を目で追う。
見出しには『台風で海難事故』と表記され、起こった事故の詳細が載っていた。
~7月✕✕日午前11時過ぎ、✕✕海上沖にて積荷重量超過が原因と思われるエンジントラブルの発生で停止中だった✕✕フェリーに勢力を上げ、進路変更した台風が直撃。乗客7名の死亡を確認、安否不明者は10名、重軽傷者40名以上とみられている。なお、安否不明者は以下の10名…~
「……ない」
ざっと目を通したがそこには知夏の名前はなかった。
……ということは知夏は生きている!?
確かな情報が知りたいと思った矢先、目の前から活字が消えていた。
いつの間にかヤツが戻ってきていて読んでいた新聞を取り上げたのだ。
「いいか、お前は治療に専念することだけを考えていればいいんだ」
意識が戻った時、一瞬でも見せた安堵の顔が嘘のように冷たく豹変していた。
「うるせぇ。知夏はどこにいるんだ? 無事なのか?」
力のない声で精一杯の反発を向ける。
ヤツはそんな俺の状態を知ってか知らずか、
「あの娘とは今後一切関わるな、いいな?」
強い口調で言い放つとしばらく来ないと呟きながら去っていった。
知夏のことが気になり、看護師に尋ねたがどうやら口止めされているのか、はぐらかされて詳しいことを知ることは出来なかった。
確信はないがただ何となく同じ病院に運ばれているということだけが窺えた。
とにかく知夏が病院に運ばれているということは生きているという証。
何も分からない中、その情報を得ただけでも幸いだった。
それだけが、今の俺の救いだった。
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