眠り姫のキセキ

おりのめぐむ

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冷酷な王子様

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 夏の名残の暑い日々。
 休み明けで浮付いた空気。
 新鮮なものを求める好奇の目。

「A組のセンセ、カッコよくない?!」

 橘川弘樹、32歳。
 当高校に在籍し、渡米のため中退。
 現在、英語教師として再び戻る。

 新学期に学年主任から紹介された先生は、
 無表情のまま頭を下げた。

 新担任の噂はその日のうちに広がった。
 興味のある女子たちが取り囲んだりもした。

 だけど数日も経たないうちに、

「何だか怖いかも…」

 漂わせていた不快感。
 一気に凍りつくような感覚。

 怒っているかのように見える表情。
 必要最小限にしか交わさない会話。
 人を寄せ付けない雰囲気。
 そんな印象が焼きつく。

 話しかけちゃいけない、関わっちゃいけない。
 クラスのみんなが一歩距離を置いてしまう。
 そんな冷たい気配を持っている。

 出来てしまった溝。
 縮まることのない距離感。
 お互いとけ込めずに時間だけが過ぎていく。
 まるでその空間だけが留まったままのように。
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