眠り姫のキセキ

おりのめぐむ

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未知への扉

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 翌日の午前10時過ぎ。
 昼からの練習に備え、授業の真っ只中。
 半日入院した私の登校時間。

 教室に向かうため、下足室へ続く校庭を歩く。
 途中、目に飛び込んできた先生の後ろ姿。
 その行き先は年内に取り壊しの決まった校舎。

 引き寄せられるように後を追っていた。
 もう数年も使われてない廃屋。
 施錠された門扉を開け、辺りを窺いながら入っていく。

 間隔があいて同じように忍び込む。
 まるで冒険をする勇者のように。
 ドキドキする心臓は未知への期待。

 使用されてない校内は埃がたまっていて随分と傷んでいた。
 荷物は移動しているようで殺風景でガランとしている。
 姿の見えない相手はどこにいったのだろう?

 周囲を見回すと印象深く映る階段。
 凛として主張するように上へと導いている。
 自然と足が吸い込まれていく。

 ゆっくりと確実に踏みしめる段差。
 高い位置へと移動を繰り返す。
 行き着く先は屋上。

 封鎖されているはずの扉。
 ノブを回すと簡単に開いた。

 ―――先生は、ここ、なの?
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