眠り姫のキセキ

道標の序章

「橘川さんも随分とここに縁があるものね」

　かすかに聞こえる女性の声。
　トゲがあるけれど親しみのあるようなトーン。
　白衣姿の年配女性と橘川先生の姿が見える。

「あら？　気づいたようね？」

　見覚えのある看護師長の姿。
　ここが病院であると気づく。

「宮村さん、練習中に倒れちゃったみたいね」

　手馴れた様子で脈を取る。
　もう大丈夫と微笑みながら。

「血相を変えて橘川さんが運んできたのよ、…あら？」

　こつ然と姿を消した先生。
　看護師長が軽くため息をつく。

「全く、相変わらずな人ね…」

　肩をすくめて呆れた口調。
　顔見知りの様子。

「あ、あの…？　知り合いなんですか？」

「ええ、昔ね、入院してたことがあったから…」

　遠い目をした看護師長。
　その瞳は少し悲しげ。

「その頃はいろいろとあってね…、あ、ちょっとごめんなさい」

　ノックされたドアには別の看護師の姿。
　入れ替わりとなる形で席を外す。

　先生の知り合いとなる人物。
　不思議な共通点の始まり、だった。