眠り姫のキセキ

意外な関係

　窓から見上げた空は、
　うっすらとした雲が連なっていて、
　心を覆い隠すカーテンのよう。

　ぼんやりと一人きりで過ごすひと時。
　胸の鼓動だけが波を打つ。
　学校以外で先生がそばに居る。
　その口実が作れて嬉しかったはずなのに。

　会食後、祖父に促され、先生は席を立つ。
　別室に移動し、しばらく二人で雑談中。
　彼の名前を聞いた時からの祖父の行動。
　秘密でもあるように声のトーンが低くなる。
　さっきから嫌な予感がして堪らない。
　先日、話したばかりの存在なのに。
　今日、初めて顔を合わせたはずの存在なのに。

　いつもと変わらない顔。
　距離感のある態度。
　つれない素振りのままと思っていたのに。
　祖父の前で一瞬だけ見せた崩れた表情。

　――知り合いだったの？
　名残惜しそうに後姿を見送る祖父。
　親しげな様子からそう伺える。

　彼との関係を問いかける。
　不安な気持ちを悟られないように。
　高揚していた祖父は微笑みながらはっきりと口にした。

「月乃の父親だったかもしれない男だ」

　…私の父親に？
　衝撃的な言葉が脳裏に焼きついた。