UNLUCKY?

おりのめぐむ

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不快な同居の始まり 5 ~一つ屋根の下~

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「ともかく、ここが倉持の居なきゃいけない場所、だろ?」

 知った口で高山が言う。
 悔しい、何も言い返せない。その通りだ。
 もし是が非でも帰ったら両親はいい笑いものになる。
 これまでの生活以上に最悪な状態になること、間違いなし。
 私がここ居ることは必須。
 だからといってコイツがここに居る必要は無いはず。
 特別講師だろうが何だろうが通って来いって話。
 つまり、私がここに居なきゃならないならコイツを追い出せばいいんだ!
 そう思うと玄関を指差しながら興奮しながら叫ぶ。

「…だったら、あんたが…、高山が、とっとと出てけ~~!!」

 はっきり言って私、理性がぶっ飛んじゃってる。
 感情のコントロールが崩壊して冷静でいられない。
 とにかく身の安全は確保しとかないと…。
 だけど高山は呆れた反応。

「何でだよ? ココはオレの家、なんだぜ」

 はあぁあ? 高山の家だとぉ?!
 そんなこと聞いてないし。
 確かに一人で住むには勿体ないぐらいの広さ。
 確かに既に家具が備え付けなのには変だと思った。
 確かに私以外の荷物があること自体もおかしかった。
 でもまさかそれもこれもコイツの家、だったとは…。
 どおりで家の隅々まで随分と詳しいはずだ。
 それより特別施設が何で高山の家なんだっつーの!?
 ギロリと睨むと察したように答える。

「倉持も一人だと心細いだろうからオレの家を提供してあげてるんだよ。嬉しいだろ? オレと一緒に住めて」

 バカじゃないの? 嬉しいわけないだろ~がっ!
 アンタを避けるためにこれまでした努力は何だったのよ。
 これじゃあ四六時中、一緒にいなきゃならないじゃんか!
 最悪だ! …それ以外の言葉は無い。

「ともかく、改めて…。これからよろしく!」

 咳払いをし、高山はニコリと笑いながら手を差し出す。
 誰が握手なんて交わすものか、今まで散々手を握ったくせに。
 フンと無視してリビングに戻ろうとヤツの前を通り過ぎる。
 だけど肩を捕まれ、向き合う形に。

「これから特別指導を行なう講師に対してその態度は無いと思うぞ」

 高山はムッとした口調で言い放つ。

「…別に仕方が無いからここにいるわけだし!」

「どっちにしろ、一緒に暮らしていくわけだろ? 最低限の礼儀は必要だ。それがどんな相手でも」

 真面目な顔をした高山、ちょっと怖いと感じた。
 いつもニヤニヤとした感じでふざけた様な態度しか知らないから。

「倉持はそういうところが欠けてると思う」

 何だか予想外にどっしりときてしまった言葉。
 誰かに指摘されたことが無かったからかもしれない。
 称賛か非難しか耳にしてこなかったからかもしれない。
 …初めての、忠告?
 よりにもよってこんなヤツに?

「表面だけでやっていくのは辛いだろ? 世の中は上辺ばかりじゃない」

 何だよ、コイツ。いきなりくそ真面目に語りやがって。
 しかも教師っぽい雰囲気を醸し出しやがってるし。

「もっと深く入っていかないとな? そしたら分かる事だってある」

 不覚にも聞き入っている私が不甲斐無い。
 反発したい気持ちがあるのに言葉の重みがのしかかってる。
 くっそ~、高山のヤロー。
 普段と違う態度を見せるなっつーの!
 私の周りはみな同じなんだから関わらない方がいいに決まってる。
 今までもそうだし、これからもそうだ。
 それなのに何も言い返せない私がいた。
 誰も踏み入ることのない領域に忍び寄る気配。
 叩かれることの無い固く閉ざされた扉にノックされてるかのように。
 心の奥底に潜んでる何かを気づかせるような予兆?
 黙り続ける私の顔を上向かせて高山は言った。

「そのためにちゃんと向き合わなきゃ分からないことだってあるだろ? ほら、こういう風に…」

 そして顎に手をかけ、微笑みながら近づいてくる顔。
 …って懲りずにまたキスしようとしやがるじゃないかぁ~!!
 さっきと打って変わった雰囲気で!!

「た・か・や・まぁ~~!!」

 押しのけようとする手をかわし、一歩後ろへと身を引く高山。
 一瞬でもマジに話を聞いていた私が馬鹿だった。
 やっぱりコイツはただのエロ教師だ。ちくしょ~~!!
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