UNLUCKY?

おりのめぐむ

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不審な特別指導と講師 4 ~最悪なカレー曜日?~

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「じゃ、行こうか?」

「はあ? 二人で?」

 反復再生法によって映画鑑賞を行い、何とか前半まで見終えたところですっかり夕方。
 続きは明日の日曜日ってことで中断し、ひと段落って頃。
 カレーを作ることになったから材料を買いに行こうと高山。
 ここから近い場所にスーパーがあるんだとか。
 だったら一人で行ってくればいいのに。

「ほら、買い物の仕方も学ばないとな? どうせ食料品売り場なんて行ったことないんだろ?」

 図星!!
 何で分かるんだ、こいつってば?
 はっきりいって幼稚園の頃以来、お買い物なんて行ってない。
 商店街の八百屋とか肉屋でおつかいとして買った記憶があるだけ。
 天才少女の扱いとなってからハハさんが全てを仕切ったため。
 今までスーパーなんて近づいたことがない。
 気がつけば本屋ぐらいしか行き慣れてないかもしれない…。

「せっかくだからエプロンも買おうか?」

 歩いて10分程の場所にあるスーパーは同じフロアに衣料品も取り扱う規模の大きさ。
 割と遅くまで開いててある程度のものならあるから利便性に優れてるって高山が嬉しそうに語る。

「どれがいい?」

 陳列された色とりどりのエプロンを物色しながら私に聞く。
 この際、柄や形に興味はない。
 とにかく機能性と価格を重視、ということで選んだ品物。
 それを取り出した途端、高山は吹き出す始末。

「…た、確かに倉持には似合ってるかもしれない…な、あははは…」

「はあ? 布の面積の範囲と価格、安全面から考えたらこれが一番でしょ!」

「ははは。…ま、母性を思わせるようでいいと思うけど?」

 それから食料品売り場へ移動。
 棚やら台やらに山盛りに積まれた色々な食品。
 野菜やら肉やら調味料やらたくさん有り過ぎて驚く始末。
 品物を探し出すだけでも大変なんて思ってしまう。
 高山は慣れてるのかカゴを持ってスイスイと移動をする。
 一応、私に説明しながら。
 さすがに初めての場所はチンプンカンプン。
 状況を把握するために必死ってところ。
 せめてフロアガイドを頭に入れてから移動したかった。

「こうやってオレと買い物できて嬉しいだろ?」

 支払いを終えて店内を出た帰り道、両手に荷物を抱えた高山がニコリ。

「そうですね。一応は勉強になりました!」

 とりあえずスーパーデビューは出来たから肯定しておく。

「べ、勉強、ね…」

 高山は苦笑いしながら私を見る。

「ま、これからちょくちょく一緒に買い物するからいいけどさ」

 ちょくちょくだぁ? 誰が行くんだっつーの?

「当番制で決めましょう。私、次回から大丈夫ですから」

「倉持に重い荷物持たせられないからノー!」

 高山はそういうと歩調を速めた。
 重い荷物を持たせられないだとぉ? だったら学校での雑用は何だってんだ!!
 ムカつきながら高山のあとを追い、帰路に着いた。

「あ、倉持。火、止めて」

「…え、えっと?」

 初めて見る機械もの、どこで火を止めるんだ? これって。
 調理実習で見た事のあるものはガスコンロ。
 で、ここのキッチンにあるのは今流行らしいIH調理器。
 平べったい表面に丸く縁取られた形が見えるだけ。

「ここのスイッチで止まる、アンダースターンドゥ?」

 高山はクスッと笑いながら私を見る。
 く、悔しい~~~!!
 帰ってすぐに休むまもなく調理タイムへと参戦。
 さっきスーパーで買ってもらった割ぽう着を身につけ、その姿を見た高山は似合いすぎると大爆笑。
 ムッとしながらも調理開始、スパイスを組み合わせたカレー作り。
 調理過程はしっかり解ってるんだけど、包丁なんてほとんど握ったことがなくって苦戦。
 時折、そうじゃないと後ろに回りこまれ、覆うように両手を握られてますますスローペース。
 もしやコイツ、これが狙いだったのか?!
 とはいえ、横に並んで作業する高山の手際の良さに少しだけ嫉妬。
 肉と野菜を切る作業を任せて、自分はナン作りなんぞを始めたりして。
 手馴れない私の時間配分を考えての行動ってのも分析できたけど。
 何だかんだ言いながら本格的に指導してるのかもって伺える。
 認めたくないけど、そうかもしれないって思える。
 それもこれも"天才少女"のせい。
 どおりでこんな性悪で世間知らずの女子高生が誕生するわけだと自己分析。
 何だか高山と居ると腹が立つんだけど、自分の欠落部分が浮き彫りになる気がする。
 本当は自身で気づいてたけど、見て見ぬ振りをして過ごしてた日々。
 頭さえ良ければ何もしなくていいって無理矢理思い込もうとしてた部分もある。
 補わなきゃならないことから遠ざけられてても。
 欲しても行なっては駄目だって冷静を装いながらガマンして。
 自由だった日々を切り捨てて期待に応えることに専念して。
 もし、もしも、この特別指導がなかったら…。
 …私、ずっと変われない生活のまま、だった?
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