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不審な特別指導と講師 3 ~恐怖の映画鑑賞~
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ようやく怪しげな英会話から開放され、ちょうど昼に近いからと食事の準備をすることに。
高山は手馴れてるのか朝も昼も手際よく取り掛かる。
私は…っていうと、全然。
正直、勉強以外のものはしたことがない。
仮にも女としての母性さを生かすような経験は無いに等しい。
もちろん家庭科は理論的には100%だけど、実践は厳しい。
手順や内容を把握していてもその通りにちゃちゃと身体が動かない。
出来ないことは無いけどお手本となるような出来栄えではないということ。
そんな訳で手伝うことなく、出来上がるのを見守る始末。
「ま、夜は一緒に作ろうな♪ 慣れれば倉持も素早く出来るようになるって! 天才だから」
時間短縮のためと引き受けたとにっこり笑いながらパスタを仕上げる高山。
何だか弱みを握られてるようで悔しい。
おまけに作った食事が美味しかったりするのが更にムカツク。
「そうだ! 夕食はカレーにしよう! 簡単だろ?」
フォークを握り締めて私の顔色を伺う高山。
「…まさかスパイスを混ぜ合わせて作るとか言うんじゃないでしょうね?」
くるくると回していたフォークを止めて眼鏡越しでチラッと見る。
今食べてるパスタでさえ、ソースはその場で作ってたしね、コイツは。
「へぇ~、本格的な作り方は知ってるんだ? さすが倉持だな」
知ってても作れなきゃ意味が無いでしょうよ、料理は!
本で読んだことあるだけなんだから実践は無理だっつーの!
「じゃ、決まりだな。ま、心配しなくてもオレが手取り足取り教えてやるから」
手取り足取りだぁ? ニヤリと笑った口元が妙に怪しい。
せっかくのカルボナーラが飲み込めなくなったじゃないか!
高山は嬉しそうに平らげると午後の指導準備といそいそとし始めた。
今度は何をやらかすんだよ、コイツってば?
何やら荷物を持ってリビングを行ったり来たりして騒がしい。
かと思えばキッチンに立ってフライパン片手に何やら作っている様子だし?
調理作業が終わったかと思ったら今度は昼間なのにカーテンを閉めだしたり。
遮光性のため、明かりをつけてないと部屋の中は真っ暗になってしまう。
今は照明で明るさが保たれている状態。
何企んでんだよぉ~、マジで!?
「あ、倉持はそこに座ってて」
先程怪しげな英会話で使われたソファーを指差し告げやがる。
渋々腰掛けるとローテーブルの下の機材が目に入る。
四角い形状の先端にレンズがくっ付いてる機械もの。
これってプロジェクターじゃないのかな?
そういえばいつぞやのオタマジャクシを見せられた時のものに似てる。
けど、学校のものよりは随分とコンパクトな感じ。
そんな風に観察しているとテーブルの上から香ばしい匂いが漂う。
バターを焦がしたようなふんわりした白い小さな物体がそこにある。
ご丁寧にカゴに盛り付けたポップコーンだっ!
「では午後の特別講座を始めるとしようか?」
高山が私の横に座りながらリモコンのスイッチを押すとパッと照明が消える。
一気に真っ暗闇!
「うわっ」
どさくさにまぎれて肩に手を掛けられているじゃないか!!
「こうやった方がムードが出ない?」
耳元で囁く声が響く。
は? 何のムードだ?!
目が慣れてくると高山の手の甲をつねってやった。
「…たく。せっかくの映画鑑賞だからロマンチックに観せてあげようと思ったのに…」
「え、いが、…かん、しょう?」
「ではでは。始まり始まり…」
私が唖然としていると高山は手馴れたように操作を始める。
目の前の真っ白い壁に照らさせる光。
障害の無い空間に投影される壁というスクリーンに映し出される画面はアニメーション。
「やっぱりポップコーンがあれば雰囲気出るよなぁ」
高山は嬉しそうに呟く。
さらに飲み物まで用意してるしね、完全に映画館気分?
…って何が悲しくてコイツとアニメ映画を観なきゃならないの?
そう思った矢先、理由が瞬時に分かる。
字幕なしの吹き替えなし。
つまり、全て英語版の映画って訳。
だから聴こえてくるやり取りってのが完全な英会話。
要するに聞き取れなきゃ内容が分からないということ。
一応、概要は知ってるけど詳細は知らない初めて観る超有名会社のアニメ映画。
映像から雰囲気ってのは窺えるけどそれが正しいかどうか判断できない。
台詞などで確認しながらストーリーを追っていかないと意味が無いってこと。
音は大き過ぎるぐらい聴こえてくるけど、早口でちっとも聞き取れないじゃないかっ! くっ!
悔しくてチラリと高山を見ると涼しげな顔をしてポップコーン片手にソファーにもたれ掛かって鑑賞中。
うぬぬ、コイツめ~!
激しく睨んでいると不意にヤツがこっちを向く。
「倉持、どこまで理解できた?」
答えられない私はしばし無言。
「ふーん、じゃあもう一度最初から観ようか?」
高山はすばやく操作すると同じ映像が最初から始まった。
繰り返される同じ場面。
でも今度は英語版の字幕入り。
ミュージカル調で始まるオープニングの歌詞が表記される。
へぇ~、そんな風に発音してあったのかと納得。
見たことのない単語以外は何となく理解できる。
それからさっき中断した辺りでまたストップ。
「何となく、分かってるみたいだな?」
高山はそう言うと再び機械を操作し、最初から再生。
どうやら反復させることによって聞き取らせようという策略らしい。
映像と音声のみの再生でヒヤリング力を高めようって事か。
何だかふざけてるように見えてポイントを押さえてあるってところが憎らしい。
だけどまだまだ特別講師だなんて認めないつーのっ!!
高山は手馴れてるのか朝も昼も手際よく取り掛かる。
私は…っていうと、全然。
正直、勉強以外のものはしたことがない。
仮にも女としての母性さを生かすような経験は無いに等しい。
もちろん家庭科は理論的には100%だけど、実践は厳しい。
手順や内容を把握していてもその通りにちゃちゃと身体が動かない。
出来ないことは無いけどお手本となるような出来栄えではないということ。
そんな訳で手伝うことなく、出来上がるのを見守る始末。
「ま、夜は一緒に作ろうな♪ 慣れれば倉持も素早く出来るようになるって! 天才だから」
時間短縮のためと引き受けたとにっこり笑いながらパスタを仕上げる高山。
何だか弱みを握られてるようで悔しい。
おまけに作った食事が美味しかったりするのが更にムカツク。
「そうだ! 夕食はカレーにしよう! 簡単だろ?」
フォークを握り締めて私の顔色を伺う高山。
「…まさかスパイスを混ぜ合わせて作るとか言うんじゃないでしょうね?」
くるくると回していたフォークを止めて眼鏡越しでチラッと見る。
今食べてるパスタでさえ、ソースはその場で作ってたしね、コイツは。
「へぇ~、本格的な作り方は知ってるんだ? さすが倉持だな」
知ってても作れなきゃ意味が無いでしょうよ、料理は!
本で読んだことあるだけなんだから実践は無理だっつーの!
「じゃ、決まりだな。ま、心配しなくてもオレが手取り足取り教えてやるから」
手取り足取りだぁ? ニヤリと笑った口元が妙に怪しい。
せっかくのカルボナーラが飲み込めなくなったじゃないか!
高山は嬉しそうに平らげると午後の指導準備といそいそとし始めた。
今度は何をやらかすんだよ、コイツってば?
何やら荷物を持ってリビングを行ったり来たりして騒がしい。
かと思えばキッチンに立ってフライパン片手に何やら作っている様子だし?
調理作業が終わったかと思ったら今度は昼間なのにカーテンを閉めだしたり。
遮光性のため、明かりをつけてないと部屋の中は真っ暗になってしまう。
今は照明で明るさが保たれている状態。
何企んでんだよぉ~、マジで!?
「あ、倉持はそこに座ってて」
先程怪しげな英会話で使われたソファーを指差し告げやがる。
渋々腰掛けるとローテーブルの下の機材が目に入る。
四角い形状の先端にレンズがくっ付いてる機械もの。
これってプロジェクターじゃないのかな?
そういえばいつぞやのオタマジャクシを見せられた時のものに似てる。
けど、学校のものよりは随分とコンパクトな感じ。
そんな風に観察しているとテーブルの上から香ばしい匂いが漂う。
バターを焦がしたようなふんわりした白い小さな物体がそこにある。
ご丁寧にカゴに盛り付けたポップコーンだっ!
「では午後の特別講座を始めるとしようか?」
高山が私の横に座りながらリモコンのスイッチを押すとパッと照明が消える。
一気に真っ暗闇!
「うわっ」
どさくさにまぎれて肩に手を掛けられているじゃないか!!
「こうやった方がムードが出ない?」
耳元で囁く声が響く。
は? 何のムードだ?!
目が慣れてくると高山の手の甲をつねってやった。
「…たく。せっかくの映画鑑賞だからロマンチックに観せてあげようと思ったのに…」
「え、いが、…かん、しょう?」
「ではでは。始まり始まり…」
私が唖然としていると高山は手馴れたように操作を始める。
目の前の真っ白い壁に照らさせる光。
障害の無い空間に投影される壁というスクリーンに映し出される画面はアニメーション。
「やっぱりポップコーンがあれば雰囲気出るよなぁ」
高山は嬉しそうに呟く。
さらに飲み物まで用意してるしね、完全に映画館気分?
…って何が悲しくてコイツとアニメ映画を観なきゃならないの?
そう思った矢先、理由が瞬時に分かる。
字幕なしの吹き替えなし。
つまり、全て英語版の映画って訳。
だから聴こえてくるやり取りってのが完全な英会話。
要するに聞き取れなきゃ内容が分からないということ。
一応、概要は知ってるけど詳細は知らない初めて観る超有名会社のアニメ映画。
映像から雰囲気ってのは窺えるけどそれが正しいかどうか判断できない。
台詞などで確認しながらストーリーを追っていかないと意味が無いってこと。
音は大き過ぎるぐらい聴こえてくるけど、早口でちっとも聞き取れないじゃないかっ! くっ!
悔しくてチラリと高山を見ると涼しげな顔をしてポップコーン片手にソファーにもたれ掛かって鑑賞中。
うぬぬ、コイツめ~!
激しく睨んでいると不意にヤツがこっちを向く。
「倉持、どこまで理解できた?」
答えられない私はしばし無言。
「ふーん、じゃあもう一度最初から観ようか?」
高山はすばやく操作すると同じ映像が最初から始まった。
繰り返される同じ場面。
でも今度は英語版の字幕入り。
ミュージカル調で始まるオープニングの歌詞が表記される。
へぇ~、そんな風に発音してあったのかと納得。
見たことのない単語以外は何となく理解できる。
それからさっき中断した辺りでまたストップ。
「何となく、分かってるみたいだな?」
高山はそう言うと再び機械を操作し、最初から再生。
どうやら反復させることによって聞き取らせようという策略らしい。
映像と音声のみの再生でヒヤリング力を高めようって事か。
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