UNLUCKY?

おりのめぐむ

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不審な特別指導と講師 2 ~怪しげな愛の囁き~

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『とても愛おしくてたまらない』
『僕はもう君にくびったけ』
『君が必要なんだ、愛してるよ』

 甘ったらしい意味の英語の台詞。
 リビングのソファーで隣に座ってる高山が私を見つめながら囁く。
 さっきから妙に熱い視線で。

「って、これって何なのよ!!」

「何って英会話じゃないか」

「そうじゃなくて、この内容だっつーの!」

 気分良く朝のスタートが切れ、朝食をいただいた後。
 留学のための英会話を日常でも取り入れておこうってことで始めた特別指導1日目。
 ちゃんと教える気があるんだと安心したのもつかの間、これだ。
 律儀にワープロで作成したと思われる英文の紙を渡され、発音の練習と称して読み始める。
 高山は驚くほど綺麗な発音で英語をしゃべる。
 てか生物教師が何で語学を教えられる? 英語教師もメンツがない。
 最初はその意外性に驚きを隠せなかったけど、綴られた英文の意味に驚愕。
 映画や音楽に出てくるような愛の言葉。
 それだけを寄せ集めたとしか思えないこの英文。
 しかもご丁寧に男と女の台詞で分けてある。

「一番入りやすいだろ? 愛の囁きが」

 んなワケねぇっつーの! どんな頭してんだ?

「ほら、言い訳してないで倉持も声に出す!」

 何が悲しくてこんな英文を読まなきゃいけないわけ?

『貴方のことしか考えられないの』
『私も貴方に夢中なの』
『愛してるわ! 私を受け止めて』

 高山が読み上げたあとの返しとしてそんな内容がずらり。

「いくら訳せても話せなきゃ意味がないんだぞ、倉持」

 ニコリと嬉しそうに微笑む高山。
 だからといってこれはないだろうし。

「それじゃあ、応用編」

 高山は座り直し、私の肩を抱く。

「ちょ、ちょっと…」

「応用って言ってるだろ?」

 コホンと咳払いをし、さっきより近い距離で熱い視線で見つめる。

『未来、愛してるよ』

「は? 何なのよ! これは?!」

「応用だってさっきから言ってるだろ? で、オレのことを名前で呼ぶ。で、ちゃんと返す。もう一度」

『未来、好きだよ。愛してる』

『か、和寿。…私も貴方が必要なの』

『愛してる。君が欲しくてたまらない』

『わ、私も貴方を愛してる』

 日本語だったら絶対に使わないような言葉を発してるのがすごく恥ずかしい。
 会話が進むにつれ、どんどん近づいてくる高山。
 特別指導っていってもこの距離は何なのさ!

『未来、君を幸せにする、だから…』

 さらにぐっと片手であごを掴み、顔を近づけてきやがる!!
 おのれは~~っ!!
 咄嗟に握ってあった英文プリントで顔を覆う。

「高山~~っ、何考えてんのよ!!」

 プリントの脇から睨み付ける。

「何って…。せっかく愛を語り合ってるからそれに応えようとしただけ」

 片手を頭に当て、見るから残念そうな顔。

「起きてすぐにもしたんだし? 減るもんじゃないだろうに…」

「ばっ、ばかじゃないの?!」

「何言ってんだよ。今のうちから慣れておいた方が良いと思ってるからこそ、だぞ?」

 慣れるだと~~! んなもん慣れてたまるか!!

「ほ、ほら、留学するんだろ? 海外に出たら挨拶なんだから」

「ここは日本です!! 大体、教師が簡単に生徒にキスして良いと思ってんの?」

「だけど、特別指導だし? 海外の風習も知っておかなきゃならないだろ?」

「だからといって、あんたの場合は…!!」

 声を荒げて言いかける私に高山がギュッと抱きしめる。

「はいはい、もう戯言はいいから。違うレッスン、始めよう。…ちなみにこれはハグだから。勘違いしないように」

 …うぬぬ~~っ! あれこれと言い訳しやがって~~~!!

「放せ~~っ、このエロ教師が~~!!」

 段々と冷静沈着さが取り繕えなくなってる、よね? 私ってば。はあ。
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