38 / 49
不変な幼き思い出たち 2 ~思い出の百人一首~
しおりを挟む
「そりゃあ去年の夏、帰国したら叔父の学校に未来が居るって知ったから」
「だから徳栄で教師やってるのっていうの?」
「そうだよ」
「はあ? 意味が分からない。何で私が居るから教師やるのよ」
「・・・ずっと心に引っかかっていた女の子に会いたかったから、に決まってるだろ」
「ずっと心に引っかかる? オンナノコ、だって?」
「そ、それが未来」
「何言ってんの? 私、過去に高山なんて知らない。会った事ないし」
高山ときちんと顔を合わせたのは2年生になってからの授業。
それまでは全く面識が無かったといっていい。
「ちゃんと会ってる。印象的に。それからずっと気に留めてたんだから」
何も言えないまま、高山を見つめる。頭の中は疑問符だらけ。
「ホントにオレのこと憶えてないのか? 記憶力はいいはずだよな? 未来は」
「・・・知らない」
「そっ、じゃあ、想い出させてやる」
高山は私に近づくと眼鏡を外した。
何か想い出すとことと関係あるのかなと考えていた矢先、高山はそっとキスをした。
・・・っておい! いきなり、何するんだっつーの! 油断も隙もありゃしない。
「未来が知らないってばかり言うからだ」
ちょっと怒った口調の高山。不意をつかれて私は何故だか焦ってしまう。
「知らないものは知らないって言って何が悪いのよ! キスする方がずっと悪い」
眼鏡をかけ直して高山を睨みつける。せっかく落ち着けた状態だったのに!
「あ~あ、オレは未来のこと鮮明に覚えてるのに、未来はオレのこと全然覚えてないとは・・・」
ショックを隠しきれないといった高山は両手を頭の後ろで組み、ソファーにもたれこむとチラッとこっちを見た。
「未来は百人一首、得意だよな?」
「う、うん?」
何で知ってるんだ、こいつ? 話が飛んで主旨がつかめない。
「それっていつから始めた?」
「えーと、4歳の頃かな?」
ハハさんの姉、つまりはハハ叔母さんの影響で覚えたといっていい。
教育ママのハハ叔母さんには私と同い年の息子がいて英才教育に余念が無かった。
用事で子供を預ける際にはハハさんにスケジュール通りの時間を過ごさせた。
その一環として百人一首を覚えさせること。
ま、当の息子もハハさんも途中で飽きる始末だったけどね。
私は何故だか和歌と挿絵を組み合わせ、特殊な詠み方を真似するのが楽しかった。
ハハさんが有頂天になって人間関係が壊れるまでは楽しかった日々、だったなぁ。
・・・思わずしみじみとした過去を思い出してしまった。
「それで幼稚園の頃、何か大会に出たことは憶えてないか?」
「えっ、幼稚園の頃?」
もう10年以上も前の話を持ち出すなんてそんな昔のこと、憶えてたり・・・。
「もしかして町内対抗の百人一首大会、とか?」
「そう、それだ!」
高山は嬉しそうに反応した。けど、それが何だっつーの?
市が主催した町内対抗の百人一首大会。参加資格が幼稚園児から中学生までのお子様のみ。
確か会場では園児部門、小学生(低学年・高学年)部門、中学生部門って分別されていた。
優勝者には豪華賞品が贈られると聞いてたぐらいで町内代表としては頑張れ程度。
その頃はまだ私の才能が気づかれてなかったからとりあえず参加賞目当てで出場。
だけど雲泥の差で園児部門をあっさりと優勝しちゃったから面白がった大人たちは私を上の部門へと対決させようと引っ張っていった。
それすらも圧倒的に勝ってしまってから大変。
エキシビションと称して特別に設けられた大会は最終的には中学生対決となってしまった。
それも急遽用意された賞金が掛かった1対1での戦い。
相手は部門で優勝した中学2年生の男の子。
体格差といい、敏捷性といい、誰もが中学生が勝つだろうと思っていたに違いない。
ま、新春の特別企画としては盛り上がるだろうって程度で。
だけど、2枚差で私が勝ってしまったのだ。無我夢中になってただけなのに。
予想外の賞金が入り、すっごく嬉しかったのを憶えている。そんな大会だった。
「それがどうしたの?」
「それが・・・って。未来はその時の対戦相手を憶えてないわけ?」
「ううん、確か園児部門では女の子。小学生部門では男の子と女の子。で中学生部門では男の子だったよ」
それ以外は床に並べられた札に集中してたから知らない。
「はあああ、何だよ、それ・・・」
高山はため息混じりに呟く。
「相手の顔や名前さえも憶えてないわけ?」
「うん。だって興味なかったし」
「参ったね」
頭に手を当てながら高山は私を見る。
「・・・その中坊の相手がオレだよ!」
「ええっ?!」
「だから徳栄で教師やってるのっていうの?」
「そうだよ」
「はあ? 意味が分からない。何で私が居るから教師やるのよ」
「・・・ずっと心に引っかかっていた女の子に会いたかったから、に決まってるだろ」
「ずっと心に引っかかる? オンナノコ、だって?」
「そ、それが未来」
「何言ってんの? 私、過去に高山なんて知らない。会った事ないし」
高山ときちんと顔を合わせたのは2年生になってからの授業。
それまでは全く面識が無かったといっていい。
「ちゃんと会ってる。印象的に。それからずっと気に留めてたんだから」
何も言えないまま、高山を見つめる。頭の中は疑問符だらけ。
「ホントにオレのこと憶えてないのか? 記憶力はいいはずだよな? 未来は」
「・・・知らない」
「そっ、じゃあ、想い出させてやる」
高山は私に近づくと眼鏡を外した。
何か想い出すとことと関係あるのかなと考えていた矢先、高山はそっとキスをした。
・・・っておい! いきなり、何するんだっつーの! 油断も隙もありゃしない。
「未来が知らないってばかり言うからだ」
ちょっと怒った口調の高山。不意をつかれて私は何故だか焦ってしまう。
「知らないものは知らないって言って何が悪いのよ! キスする方がずっと悪い」
眼鏡をかけ直して高山を睨みつける。せっかく落ち着けた状態だったのに!
「あ~あ、オレは未来のこと鮮明に覚えてるのに、未来はオレのこと全然覚えてないとは・・・」
ショックを隠しきれないといった高山は両手を頭の後ろで組み、ソファーにもたれこむとチラッとこっちを見た。
「未来は百人一首、得意だよな?」
「う、うん?」
何で知ってるんだ、こいつ? 話が飛んで主旨がつかめない。
「それっていつから始めた?」
「えーと、4歳の頃かな?」
ハハさんの姉、つまりはハハ叔母さんの影響で覚えたといっていい。
教育ママのハハ叔母さんには私と同い年の息子がいて英才教育に余念が無かった。
用事で子供を預ける際にはハハさんにスケジュール通りの時間を過ごさせた。
その一環として百人一首を覚えさせること。
ま、当の息子もハハさんも途中で飽きる始末だったけどね。
私は何故だか和歌と挿絵を組み合わせ、特殊な詠み方を真似するのが楽しかった。
ハハさんが有頂天になって人間関係が壊れるまでは楽しかった日々、だったなぁ。
・・・思わずしみじみとした過去を思い出してしまった。
「それで幼稚園の頃、何か大会に出たことは憶えてないか?」
「えっ、幼稚園の頃?」
もう10年以上も前の話を持ち出すなんてそんな昔のこと、憶えてたり・・・。
「もしかして町内対抗の百人一首大会、とか?」
「そう、それだ!」
高山は嬉しそうに反応した。けど、それが何だっつーの?
市が主催した町内対抗の百人一首大会。参加資格が幼稚園児から中学生までのお子様のみ。
確か会場では園児部門、小学生(低学年・高学年)部門、中学生部門って分別されていた。
優勝者には豪華賞品が贈られると聞いてたぐらいで町内代表としては頑張れ程度。
その頃はまだ私の才能が気づかれてなかったからとりあえず参加賞目当てで出場。
だけど雲泥の差で園児部門をあっさりと優勝しちゃったから面白がった大人たちは私を上の部門へと対決させようと引っ張っていった。
それすらも圧倒的に勝ってしまってから大変。
エキシビションと称して特別に設けられた大会は最終的には中学生対決となってしまった。
それも急遽用意された賞金が掛かった1対1での戦い。
相手は部門で優勝した中学2年生の男の子。
体格差といい、敏捷性といい、誰もが中学生が勝つだろうと思っていたに違いない。
ま、新春の特別企画としては盛り上がるだろうって程度で。
だけど、2枚差で私が勝ってしまったのだ。無我夢中になってただけなのに。
予想外の賞金が入り、すっごく嬉しかったのを憶えている。そんな大会だった。
「それがどうしたの?」
「それが・・・って。未来はその時の対戦相手を憶えてないわけ?」
「ううん、確か園児部門では女の子。小学生部門では男の子と女の子。で中学生部門では男の子だったよ」
それ以外は床に並べられた札に集中してたから知らない。
「はあああ、何だよ、それ・・・」
高山はため息混じりに呟く。
「相手の顔や名前さえも憶えてないわけ?」
「うん。だって興味なかったし」
「参ったね」
頭に手を当てながら高山は私を見る。
「・・・その中坊の相手がオレだよ!」
「ええっ?!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる