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不変な幼き思い出たち 1 ~キスの後遺症~
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飛行機の長旅を終え、久しぶりのマンションへと帰宅。
長かった夏休みもついに終わりを迎えようとしていた。
1ヶ月間の留学生活だったからあっという間に過ぎたって感じだけど。
宿題は片付いてるし、時差ボケがあるわけでもないのに完全に気が抜けてる。
それもこれも高山のせいだっ!! ばかやろう~~!!
消毒とはいえ、よくよく考えてみたらあれってばすごいキスじゃないか!!
口直しにとミントタブレットを貰う度、思い出してしまって全身が熱くなる。
まるでパブロフの犬状態だっつーの。私の記憶力が恨めしい。
下手すればその状況を楽しむためにワザとやってるようにも思える。
要らないと拒否ればまた食べさせてやろうか? とニヤリ。
冗談じゃないっ! あんなキスはもうたくさん。つーか、結構です!
このままだと私の身が持たない気がする。
タブレットだけでこんなにうろたえてしまうんだからヤバイっつーの。
それに何だか高山の顔がまともに見れないしさ。
顔を洗って気を引き締めると鏡に向かって今後の対策を練る。
幸いにも2学期は明日。この機会に講師替えを申請すればいい。
もともと留学が終わったらそう決めてたことだし、強行してやるんだから!
理事長直々宛てに申請書を提出すれば絶対に大丈夫なはず。
今のうちに用意しておかなくては!と意気込むとご無沙汰していた勉強部屋へと駆け込む。
適当な理由を付けて完璧な特別講師変更の書類を作成。
「未来、今日の夕食は・・・」
見直しているとドアが開き、高山の声。
私は慌ててそれをクリアファイルに挟み込むと入ろうとする高山を追い出すように部屋を出た。
それから何食わぬ顔で夕食作りに勤しみ、時間を過ごした。
「未来、これは何だ?」
風呂上り、リビングルームに居た高山がピラリと一枚の紙を広げた。
ま、まさか!! 近づいてみると先程作成した申請書。
こんなにあっさりと見つかるとは。ファイルごと引き出しにしまっておくべきだった!
「それより、こんなことしても無駄だから」
「はっ? 何でよ?」
「オレが交代なんて許さないから」
「許さないって理事長から許可を得れば関係ないでしょう?」
「そんなこと、認めないって言ってるだろ? 何で急にこんなことをするんだ?」
高山は怒ったように私の腕を掴むとほんの少しだけ悲しそうな顔。
「・・・オーストラリアでの一件のせいか?」
思い当たったように悔やんでいるかの表情を見せる。
「どんな時も未来のそばに居てやるべきだった。そうすればあんなことには・・・」
逃走事件のこと? もうそんなこと気にしてないっつーのに!
「違う、そうじゃない・・・」
真っ直ぐな視線が突き刺さる。そんな瞳を見てられない。
やっぱり高山の顔をまともに見れない、何で?!
私は思いつくままの理由を述べてみた。そうしないと負けるような気がした。
「ほ、ほら高山は研究発表で忙しくなったりするんじゃないの? 来年早々だから今回呼び出されたわけでしょう? いっそのこと、残って手伝っても良かったのにさ。だから違う講師だっていいかなって。それにもしいなければ私一人でも勉強できるし・・・」
顔を背けながら掴まれた手を離そうとするけどさらに力が入ってくる。
「オレの代わりなんて居やしない。何でそんなこと、言う?」
高山は覗き込むようにして私の顔を見る。
何故だろう? いつもなら睨み付けてるのに。
面と向かって話してたら何だか負ける気がしてしょうがない。
気を張ってないと何かが壊れそうで、…怖い。
「未来!」
こんな風に高山が目の前に居るから悪いんだ。
冷静沈着で何事にも動じない私を取り戻すんだっつーの!!
「・・・私、これ以上、高山と一緒に居たくないの!」
そう言いきると心のどこかで安心していた。私でいられる気がした。
頭を抱えた高山は軽くため息をつくと私を見つめた。
「・・・いいからここに座るんだ。ちゃんと話そう」
ソファーに並んで座ると高山は少しだけ言いにくそうに切り出した。
「なあ、未来。何でオレが日本に居るか知ってる?」
私は首を振る。そんなこと知るわけが無い。
「そうだよな。オレだって未だに教師やってるなんて信じられないからな」
ため息交じりの高山。そういえばアーロン博士の助手だよね。
「・・・高山は何で教師やってるのよ?」
研究の手伝いって仕事があったのにワザワザ日本で教師してるのは変だ。
「知りたい?」
いたづらっぽく微笑む高山に何故だか動じないように身構える私。
「オレには理事長をやってる叔父がおりまして・・・」
「えっ? 理事長ってまさか・・・。徳栄・・・、の?」
頭の中が一気に情報収集と処理モードへと切り替わっていく。
「それと教師と何の関係があるって?」
私は不可解な高山の発言に困惑するのみだった。
長かった夏休みもついに終わりを迎えようとしていた。
1ヶ月間の留学生活だったからあっという間に過ぎたって感じだけど。
宿題は片付いてるし、時差ボケがあるわけでもないのに完全に気が抜けてる。
それもこれも高山のせいだっ!! ばかやろう~~!!
消毒とはいえ、よくよく考えてみたらあれってばすごいキスじゃないか!!
口直しにとミントタブレットを貰う度、思い出してしまって全身が熱くなる。
まるでパブロフの犬状態だっつーの。私の記憶力が恨めしい。
下手すればその状況を楽しむためにワザとやってるようにも思える。
要らないと拒否ればまた食べさせてやろうか? とニヤリ。
冗談じゃないっ! あんなキスはもうたくさん。つーか、結構です!
このままだと私の身が持たない気がする。
タブレットだけでこんなにうろたえてしまうんだからヤバイっつーの。
それに何だか高山の顔がまともに見れないしさ。
顔を洗って気を引き締めると鏡に向かって今後の対策を練る。
幸いにも2学期は明日。この機会に講師替えを申請すればいい。
もともと留学が終わったらそう決めてたことだし、強行してやるんだから!
理事長直々宛てに申請書を提出すれば絶対に大丈夫なはず。
今のうちに用意しておかなくては!と意気込むとご無沙汰していた勉強部屋へと駆け込む。
適当な理由を付けて完璧な特別講師変更の書類を作成。
「未来、今日の夕食は・・・」
見直しているとドアが開き、高山の声。
私は慌ててそれをクリアファイルに挟み込むと入ろうとする高山を追い出すように部屋を出た。
それから何食わぬ顔で夕食作りに勤しみ、時間を過ごした。
「未来、これは何だ?」
風呂上り、リビングルームに居た高山がピラリと一枚の紙を広げた。
ま、まさか!! 近づいてみると先程作成した申請書。
こんなにあっさりと見つかるとは。ファイルごと引き出しにしまっておくべきだった!
「それより、こんなことしても無駄だから」
「はっ? 何でよ?」
「オレが交代なんて許さないから」
「許さないって理事長から許可を得れば関係ないでしょう?」
「そんなこと、認めないって言ってるだろ? 何で急にこんなことをするんだ?」
高山は怒ったように私の腕を掴むとほんの少しだけ悲しそうな顔。
「・・・オーストラリアでの一件のせいか?」
思い当たったように悔やんでいるかの表情を見せる。
「どんな時も未来のそばに居てやるべきだった。そうすればあんなことには・・・」
逃走事件のこと? もうそんなこと気にしてないっつーのに!
「違う、そうじゃない・・・」
真っ直ぐな視線が突き刺さる。そんな瞳を見てられない。
やっぱり高山の顔をまともに見れない、何で?!
私は思いつくままの理由を述べてみた。そうしないと負けるような気がした。
「ほ、ほら高山は研究発表で忙しくなったりするんじゃないの? 来年早々だから今回呼び出されたわけでしょう? いっそのこと、残って手伝っても良かったのにさ。だから違う講師だっていいかなって。それにもしいなければ私一人でも勉強できるし・・・」
顔を背けながら掴まれた手を離そうとするけどさらに力が入ってくる。
「オレの代わりなんて居やしない。何でそんなこと、言う?」
高山は覗き込むようにして私の顔を見る。
何故だろう? いつもなら睨み付けてるのに。
面と向かって話してたら何だか負ける気がしてしょうがない。
気を張ってないと何かが壊れそうで、…怖い。
「未来!」
こんな風に高山が目の前に居るから悪いんだ。
冷静沈着で何事にも動じない私を取り戻すんだっつーの!!
「・・・私、これ以上、高山と一緒に居たくないの!」
そう言いきると心のどこかで安心していた。私でいられる気がした。
頭を抱えた高山は軽くため息をつくと私を見つめた。
「・・・いいからここに座るんだ。ちゃんと話そう」
ソファーに並んで座ると高山は少しだけ言いにくそうに切り出した。
「なあ、未来。何でオレが日本に居るか知ってる?」
私は首を振る。そんなこと知るわけが無い。
「そうだよな。オレだって未だに教師やってるなんて信じられないからな」
ため息交じりの高山。そういえばアーロン博士の助手だよね。
「・・・高山は何で教師やってるのよ?」
研究の手伝いって仕事があったのにワザワザ日本で教師してるのは変だ。
「知りたい?」
いたづらっぽく微笑む高山に何故だか動じないように身構える私。
「オレには理事長をやってる叔父がおりまして・・・」
「えっ? 理事長ってまさか・・・。徳栄・・・、の?」
頭の中が一気に情報収集と処理モードへと切り替わっていく。
「それと教師と何の関係があるって?」
私は不可解な高山の発言に困惑するのみだった。
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