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3.セシールの思惑
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私はセシールの罠に嵌められた。
そう気づくのに時間はかからなかった。
全ての始まりはきっとあの日からなんだろうと思う。
ゾロ王子に連れられて、初めてセシールに会った。
私が挨拶をすると
セシールは
「私は誰よりもお兄様を大切に思っているわ。
あんたはお兄様に相応しくないわ!」
そう憎しみのこもった目で私を見ていた。
ゾロ王子は
「誰を連れてきても、ああだよ。
セシールは私が誰かに取られることが気に入らないんだよ。
気にすることはない。
時間をかけて仲良くなってくれればいいよ。」
と、特に気にする風でもなく私にそういった。
けれど、初めて会った日から今日まで、セシールは常に私に嫌がらせをしてきた。
ある時は、もうすぐお城に着くというタイミングで
泥水をぶっかけられびしょ濡れになったり
ある時は、お父様が事故にあったと嘘の情報を聞かされ
大急ぎで自宅に戻った事もあった。
他にもありもしない嘘話に何度も騙された。
それはもう数えきれないほどだ。
でも、昨日は違った。
昨日のセシールは今までのセシールとは違ってとても親しみのある態度だった。
私はバカだ。
そんなセシールを信用してしまったのだから・・・
私は新しく作ったドレスの前に立っていた。
これを着て、明日はゾロ王子との婚約発表だと思うと
胸の高鳴りを感じていた。
そんな時、ドアがノックされ
メイドのルナが入ってきてこう言った。
「お嬢様、セシール様がお嬢様にお話ししたいことがあると
訪ねてこられています。
お部屋にお通ししても宜しいですか?」
セシールがわざわざ訪ねてくるなんて、嫌な予感しかしない。
けれど、訪ねてきてくれている以上追い返すことは出来ない。
どんなに憎い相手でも結婚すれば、
セシールも私の義理の妹になるのだから。
「ええ。お通ししてちょうだい」
私がそう答えるとしばらくしてセシールはルナに連れられてやってきた。
いつもなら意地の悪い笑みを浮かべているはずのセシールだったが
今日は様子が違う。
しおらしく元気がない。
私が口を開く前にセシールが話し始めた。
「シルクさん、今まで本当にごめんなさい。
私、お兄様の事が大好きで、お兄様をどうしても取られたくなかったの。
だから、ついシルクさんに意地悪ばかりしてしまったの。
でも、よく考えたら
私達もうすぐ血は繋がってないとはいえ、姉妹になるのよね。
姉妹になるのに、こんな関係のままではいけないと思ったの。
それに私、本当はシルクさんとずっと仲良くしたいと思っていたの。
だから、今日は仲直りしに来たの。」
そうしおらしくセシールが話す。
確かに、結婚することでセシールは義理の妹になる。
今の関係のままでは、きっとゾロ王子に迷惑をかけてしまうことになる。
私自身もセシールとの関係を何とかしたいと常々思っていたので
渡りに船だ。
ここはひとまず、セシールを受け入れよう。
「セシールさん。今日はわざわざ訪ねてきてくれてありがとう。
私もセシールさんとの関係で胸を痛めてきたわ。
けれど、今日こうやってあなたと話をすることが出来て
とても嬉しく思うわ。
明日、婚約発表すればあなたは義理の妹になるわ。
頼りのない姉だけれど、私もあなたといい関係を築いていきたいと
思っているわ。
どうぞ、よろしくね。」
そう答えると、セシールは嬉しそうに笑ってこう答えた。
「あ~良かった。もし、シルクさんが絶対に許さない。
なんて言ったらどうしようと思ってたの。
でも、こうして私を受け入れてくれて本当に良かった。
シルクさん、いえ、お姉さま。
これからどうぞよろしくお願いします」
今までのセシールからは考えられないくらいの
優しい微笑みで私を見ていた。
そう気づくのに時間はかからなかった。
全ての始まりはきっとあの日からなんだろうと思う。
ゾロ王子に連れられて、初めてセシールに会った。
私が挨拶をすると
セシールは
「私は誰よりもお兄様を大切に思っているわ。
あんたはお兄様に相応しくないわ!」
そう憎しみのこもった目で私を見ていた。
ゾロ王子は
「誰を連れてきても、ああだよ。
セシールは私が誰かに取られることが気に入らないんだよ。
気にすることはない。
時間をかけて仲良くなってくれればいいよ。」
と、特に気にする風でもなく私にそういった。
けれど、初めて会った日から今日まで、セシールは常に私に嫌がらせをしてきた。
ある時は、もうすぐお城に着くというタイミングで
泥水をぶっかけられびしょ濡れになったり
ある時は、お父様が事故にあったと嘘の情報を聞かされ
大急ぎで自宅に戻った事もあった。
他にもありもしない嘘話に何度も騙された。
それはもう数えきれないほどだ。
でも、昨日は違った。
昨日のセシールは今までのセシールとは違ってとても親しみのある態度だった。
私はバカだ。
そんなセシールを信用してしまったのだから・・・
私は新しく作ったドレスの前に立っていた。
これを着て、明日はゾロ王子との婚約発表だと思うと
胸の高鳴りを感じていた。
そんな時、ドアがノックされ
メイドのルナが入ってきてこう言った。
「お嬢様、セシール様がお嬢様にお話ししたいことがあると
訪ねてこられています。
お部屋にお通ししても宜しいですか?」
セシールがわざわざ訪ねてくるなんて、嫌な予感しかしない。
けれど、訪ねてきてくれている以上追い返すことは出来ない。
どんなに憎い相手でも結婚すれば、
セシールも私の義理の妹になるのだから。
「ええ。お通ししてちょうだい」
私がそう答えるとしばらくしてセシールはルナに連れられてやってきた。
いつもなら意地の悪い笑みを浮かべているはずのセシールだったが
今日は様子が違う。
しおらしく元気がない。
私が口を開く前にセシールが話し始めた。
「シルクさん、今まで本当にごめんなさい。
私、お兄様の事が大好きで、お兄様をどうしても取られたくなかったの。
だから、ついシルクさんに意地悪ばかりしてしまったの。
でも、よく考えたら
私達もうすぐ血は繋がってないとはいえ、姉妹になるのよね。
姉妹になるのに、こんな関係のままではいけないと思ったの。
それに私、本当はシルクさんとずっと仲良くしたいと思っていたの。
だから、今日は仲直りしに来たの。」
そうしおらしくセシールが話す。
確かに、結婚することでセシールは義理の妹になる。
今の関係のままでは、きっとゾロ王子に迷惑をかけてしまうことになる。
私自身もセシールとの関係を何とかしたいと常々思っていたので
渡りに船だ。
ここはひとまず、セシールを受け入れよう。
「セシールさん。今日はわざわざ訪ねてきてくれてありがとう。
私もセシールさんとの関係で胸を痛めてきたわ。
けれど、今日こうやってあなたと話をすることが出来て
とても嬉しく思うわ。
明日、婚約発表すればあなたは義理の妹になるわ。
頼りのない姉だけれど、私もあなたといい関係を築いていきたいと
思っているわ。
どうぞ、よろしくね。」
そう答えると、セシールは嬉しそうに笑ってこう答えた。
「あ~良かった。もし、シルクさんが絶対に許さない。
なんて言ったらどうしようと思ってたの。
でも、こうして私を受け入れてくれて本当に良かった。
シルクさん、いえ、お姉さま。
これからどうぞよろしくお願いします」
今までのセシールからは考えられないくらいの
優しい微笑みで私を見ていた。
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