上 下
6 / 16

6.決意

しおりを挟む
「セロビナ王国から来たのか・・・」
何か考え込むように彼はセロビナ王国と繰り返した。

「ええ。あなたセロビナ王国を知っているのね。
あの、良かったらあなたの名前教えてくれない?」

シルクは久しぶりに人と話せる喜びで、もっと話したくなった。

少々愛想は悪いけれど、ずっと一人でいるよりはまだマシだと思えた。

「あぁ、俺の名前はトビーだ。」

「そう。トビーね。よろしく。ところでどうしてあなたはこの森を旅しているの?


シルクがそう尋ねると、

「君はもしかして何も知らずにこの森をさまよっているのか?」

軽蔑したような顔をこちらに向けた。

「エッ?・・・」

「実は、私はある疑いをかけられて
怒った王子様から国外追放されてしまったの。
それで屋敷にはもういられなくなってしまって・・・
仕方ないから隣の王国を目指すことにしたの。
屋敷を出るときに地図を両親から手渡されたわ。
私はその手渡された地図を見ながら、この森を抜けて
隣の国を目指しているの。」


「少しその地図を見せてくれないか?」

トビーは私の持っていた地図を覗き込んだ。
暫くその地図を見ながら何やら考え込み・・・
「なるほどね。そういうことか。」

と言った。

私は訳が分からずに、
「えっと~。どういうことなの?」


「君は何も知らないだろうけど、隣の国を目指すなら川を渡るのが
一番簡単なのさ。
けれど、この地図にはあえて森を抜けて隣の国へ向かうように書いてある。
どういう事か分かるか?」

「その答えは、あえて君をこの森に来させた。なんだよ。」

「それはこの森でもしかすると、あの小瓶を手に入れることが出来るかも
知れないという一縷の望みを託したんだ。」


「小瓶・・・」

そういえばさっきの大男も小瓶を渡せ!と言ってきた。
一体どういう事なんだろう?


「そういえばさっきの大男がブラータの小瓶が何とかって言ってたわ。」

シルクがそう言うと


「そうさ、この森にはブラータという森の魔物がいたんだ。
ブラータはすごい魔力を持っていた。
けれどブラータはある勇者によって倒された。
しかしブラータは自分が死ぬとき、その魔力を瓶に詰めて死んだんだ。
そしてその小瓶をどこかに隠してしまったんだ。
その小瓶を見つければ
そのブラータと同じ魔力を手に入れることが出来るんだ。」

「だから、みんな必死でブラータの小瓶を探している。
隠し場所は誰にも分からない。
分かっていることは、この森のどこかに隠されているということだけなんだ。」

私はその話を聞いて、胸が痛んだ。
私はこの旅を続けながら両親さえも恨んだ。
両親さえも私を捨てたのだと思っていた。

けれど、そんなことはなかったのだ。

両親の深い愛を感じずにはいられなかった。
そして決意した。

私は必ブラータの小瓶を手に入れる。

そして、私をこんな目に合わせた奴らに絶対に復讐してやる!!と誓った
しおりを挟む

処理中です...