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第21話 聖女VS剣聖

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 これでやっと寮に戻れると思った矢先――背後から声をかけられた。

「お前、もう帰るのか、少し付き合え」

 私はエストに声をかけられた。

 エスト=トレンド――

 私の義弟で俺様系の自信家で戦闘狂でもあった。ヒロイン様はエストに付き添い、彼の傷とアレを癒してあげることで友好度がUPする。

 闇の力に支配され、四天王でも最弱に身体を乗っ取られたダークエリザとエストが一騎打ちする場面があって、ヒロイン様は健気にその戦いを見守った。

 戦いの末、エリザはエストに半殺しにされて闇を払われた。後に王よりエリザは国外追放処分の刑にされるのだった。ヒロイン様に闇を払われたエリザは、闇の力に支配されていたとはいえ、ヒロイン様達に行った罪を深く反省して、贖罪 しょくざいの旅に出るのだった。

 ダークエリザ(四天王にも最弱)に利用されていたとはいえ、よくない噂が絶えなかった伯爵家当主ものちに断罪され、伯爵家はお取り潰しになった。その後エストは爵位の引き継ぎを断り、自由きままにヒロイン様と旅にでるのが個別エンド。エストは、ヒロイン様を壁ドンしたり、ヒロイン様を壁に押しつけてヤっちゃったりする。壁が大好きな聖なる王子様だった。

「突き合う? わたしと? ま、まさか私を壁につれこむつもりなの?」

「はぁ、お前なに言ってんだ。これだよ、これ」

 エストは腰に携えた剣を私に見せてきた。

「お前はアレに勝ったんだろう、俺とヤろうぜ」

「やだ」

 もう疲れた。無駄に体力を消耗したくない。帰ってお弁当を食べて、お風呂に入って私は寝る。

「くくく、そうだな、俺に勝ったらお前にいいものをくれてやるぞ」

 エストがくれるものって、お店で売れるもの? お金? 食べ物? 

「ふん、仕方がないから、突き合ってあげる」

「じゃ、俺に付いてこい、こっちだ」

 そして、私はエストの後についていく。

 古びた遺跡にあるような門の扉をくぐると、コロシアムのような闘技場があった。そこで私は木の槍を受け取った、彼は木の剣だ。

 そして、私達はコロシアムの中央に立った。

 彼は剣を構え、私も槍を構える。

「さぁ、やろうぜ、その力を見せてみな」

「ほいほい」

「なんだよ、それは、さぁ、いくぜ」

 エストの眼光が鋭くなった。周囲の気配がかわる。洗練された剣筋、一撃、一撃が速く、美しい。だけど私はやすやすと躱していく。

「へぇ、これを躱すか、なら」

 さらにエストは速くなった――けど、ほいっと、私は躱す。

「ちっ、なら、これならどうだ、行くぞ」

 エストは紫色の闘気をまといだす。その眼光は鋭く、私を捕らえた。彼の剣には殺気がみなぎっている。

 あの、エストさん、必殺技をつかうなんて私、聞いてないよ? まさか、わたしを本気でヤるつもりなの、そういえば、その技でエリザが切り刻まれて半殺しにされたんですよね。

「電光石火」

 雷の聖痕スキルと彼の攻撃スキルを合わせた複合技。

 稲妻の様に速く――、そして雷を帯びた

雷斬らいぎり」

 ――必殺の一撃だった。

 さすがに、これはまずい、わたしは、「縮地」を使う。

 その一撃を避けエストの背後に回り込み、槍の矛先を向ける。

「はい、チェックメイト」

「こいつを避けるか、ああ、俺の負けだ」

「それで、いいものって、なに?」

「そうだな、聖痕よ、見届けたか、我を超える者エリザに、我の聖痕を継承する」

「はぁ~?」

 彼の右手にあった雷の形をした紋章が浮かび上がり、そして消えた。片や私の右手に雷の聖痕が浮かび上がった。

「よっしゃ、これで、俺はあの家から晴れておさらばだぜ、またやろうぜ、次期当主、いや、聖女様よ」

 そういって、エストはすっきりしたような顔をしてコロシアムを【自由きままに】出ていった。

「ねぇ、これ、いらないから? ちょっと、まって、ねぇ」

 ここが継承の儀を行う場所だなんて私は知らなかった。
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