咽び泣き

惰眠

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プロローグ

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 中学に上がったころからだろうか、私は、人の心の声が聞こえるようになった。

 それも気持ちの悪いものだ。

「苦しい。」
「死にたい。」
「もう、いやだ。」

 という、苦痛の声。

「殺す。」
「死ね。」
「バカみたい。」

 という、攻撃するような声。

 人の負の感情が、いつも私の耳に流れ込んだ。

 そんな時は、決まって動悸が激しくなり苦しくなる。
 健康と言える時は、まだましだが、体調を崩している時は、その声が私をより苦しめようとした。

 気を紛らわせるために、ヘッドホンが私には必須になった。
 周りの音があまり聞こえないように、音楽を聴き続けた。

 ヘッドホンを外すと、爆音のようにその声が私を襲う。
 それを考えると、ヘッドホンを外すのが時々怖くなる。

 家にいる時も、親が目の前にいると親の苦しそうな声や怒りのようなものが、私を痛めつけた。

 親はいつも優しくしてくれるが、心の声では私を攻撃しようとしていることを知っている。
 優しそうな顔をして、酷いことを言うのだ。

 私は、いつしか親の顔をまともに見れなくなった。

 まだ、信頼できる母親に何とかこのことを伝えられたおかげで、学校にも理解してもらえた。
 そのため、周りの目はあるが通えていた。

 慣れない中学のうちは、ほとんどが保健室登校だった。
 保健室の先生がおばあちゃん先生ということもあり、広い視野で私のことを受け入れてくれた。

 勉強はできる方だったが、何とかついていくのがやっとだった。

 彼女といる時は安心できたが、たまに来る担任たちが勉強を教えに来る時は、あの声が私を襲うのではないかと、不安感に駆られない時はなかった。

 あの声に苦しめられ、疲れた時は、長く眠ることにした。
 幸い保健室だったため、簡単に休むことができた。
 彼女も理解してくれていたので、伝えやすかった。


 今でも、ヘッドホンを外すのが怖いが、少し慣れてきた。
 そんな私も高校生になる。

 親と話し、自由な校風の学校に通うことにした。

 私立春雨高等学校。

 制服はあるが、個性を生かすことを理念にするこの学校では、頭髪やアクセサリーなどは、基本自由となっている。

 ここでなら、少しでも私は溶け込むことができるだろうと思った。

 私は、少しの期待とそれを押しのけるように存在する不安感を心に押し殺し、入学式へと向かった。

 春の清々しい風と共に流れる人波。

 このヘッドホンが外れてしまったら、今にでも倒れてしまうのではないかという恐怖感が強く私を捕らえて離さない。



 これは、負の感情を聞いてしまう不幸な私の物語。

 長くも短い高校生活。
 きっと、いい出会いも悪い出会いもあるだろう。

 私も知らないこの場所で、新たな生活を始めよう。

 目線は、まだ下を向き続けている。
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