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1章
5話
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今日も何も変わらない1日が始まる。
かわいい雀の鳴き声を遠くに聞きながら学校へと続く坂道を上る。
桜はもう散ってしまっている。
相変わらず、周りには私と同じような服装の生徒たちが歩く。
服装以外の部分を見ると、個性がそれぞれ生きている。
今日も、私は藍色のヘッドホンを頭に着ける。
流れる音楽はロック。
激しく場を包むドラムの音。
脳の奥まで響き渡るようなギターの音。
足の先を掴むようなベースの音。
そして、全身を震わせてくれるような歌声を持つ歌手が声を張る。
気分はいつも通り。
何事も起きないことを祈りながら平静を装う。
大きな門をくぐり、静かにあの教室に向かう。
1-2
クラスの戸を開けると、音を聞かなくても分かるほど騒ぐ面々が揃っている。
入学してから約1か月が過ぎた頃。
それほどの短い時間で意気投合しあえる仲間ができているのだ。
彼らを羨む気持ちは、ゼロではない。
ゆっくりと席に着く。
例え、私一人孤立していたとしてもこのクラスは変わらず存在する。
それほど自由なのだろう。
鞄の中から読みかけの本を取り出す。
読みかけのページには、音符マークの可愛い栞が挟まっている。
小さなときに、私が作ったものだろう。
記憶にないが、とても大切に使っている。
クラスの騒がしさを背中で感じながらページをゆったりとめくり読み進めた。
チャイムが鳴る。
目の前には、田中先生が立っている。
ホームルームの時間だ。
1日の移動教室や、その他配布物。
数日の内に慣れたその風景が繰り返される。
教師が壇上に立つと、ある程度の静まりがやってくる。
この教室は、とても環境がいいのだろう。
机の隅に読みかけの小説を置き、田中先生の言葉に耳を傾けるために、少し音量を下げる。
「今日も1日頑張りましょう。では、号令お願いします。」
その言葉で締めくくられる。
号令が終わり、先生好きな女生徒たちは、田中先生を囲んで話をする。
今日の髪型が綺麗だとか、服装がかわいいだとか。
田中先生も同じく褒めているようだ。
遠目でそれらを見ながら私は、次の時間の準備をする。
机の上には、必要な教科書や筆記用具などを揃え、準備はできている。
少し見渡せば、まだ楽しそうに騒ぐクラスメイトの姿を見かける。
チャイムが鳴り、1限目が始まる。
1限目は数学だ。
松田という教師の担当だ。
白髪の生えた40代くらいの先生で、面白おかしく数学を教えようとしてくれる。
頼れる先生の代表格のような存在だ。
クラスの面々からは、まっちゃんやまっさんなど呼ばれ親しまれているようだ。
私は、対照的に先生との距離の取り方に戸惑い、松田先生と丁寧に呼んでいる。
私にとって、少し手の届かない所にある数学も、松田先生のお陰で理解が進んでいるはずだ。
授業の始まりはいつものように前回分の復習から始まり、今回の授業とその発展問題。
日によっては、少し雑談が多くなり時間がつぶれることがあるが、もしかしたらそこが人気の秘訣かもしれない。
2限目は歴史だ。
塚内先生というおじいちゃん先生が教えてくれている。
綺麗なスキンヘッドが輝く笑顔が素敵な先生だ。
パワーポイントや、映像資料を使って分かりやすく教えてくれている。
たまに、雑学のようなものが入り面白い話や悲しい話など、広い知識で勉強のお手伝いができる先生だ。
課題の提出を忘れる男子生徒たちからは、寛容な態度で許す姿から塚内様と呼ばれている。
いろいろと輝いて見えるが、気のせいだ。
私は、4限まである授業を何とか耐え抜き、お昼の時間を迎えた。
耳に流れるのは、かわいらしい音が響く、変わった音楽だ。
お昼ご飯は、母の作ったお弁当。
程よい甘さの卵焼きが、私のお気に入りだ。
周りで固まって食べる人たちを置いて、一人で黙々と音楽とともにご飯を食べ進めた。
心の中で考えることといえば、苦手な目の前にあるトマトだ。
あの謎の感触が苦手なのだが、母は止まらない。
意を決して、一つ口に運ぶ。
ぐにりとしたジェル状のアレが歯に当たる感覚が、何とも言えない不快感を引き起こす。
呑み込めるほどに噛み、お茶で流し込む。
あと一つ残っていることを目の当たりにすると、聞こえないため息を漏らしてしまう。
激闘の末、弁当を空にして本を読む。
朝から続きが気になっていた。
朝という短時間の暇つぶしには最適だが、短時間ゆえに続きが気になって仕方がない。
耳に流れる音楽をBGMとして読み進める。
丁度、感動的なシーンだ。
このシーンは、ここでは読みたくないと思ってしまっている自分がいる。
我儘だと言い聞かせる。
それほどまでにこのシーンはゆったりと読んでいたい。
いつも通りの昼休憩。
変わらず騒がしい教室。
でも、意外と居心地の良さを感じる不思議さ。
そして、1日は流れ、終わる。
変わり映えない午後の授業も終わる。
わかりやすく教師陣から教わり、満足。
静かに教室を後に、自宅へと向かう。
部活をしない私にとって、帰り道はあまりにも静かだ。
朝と違い、ちらほらと見かける生徒たち。
そして、少し赤みがかった空を見上げ、静かなジャズの音楽に揺られながら校舎を後にする。
かわいい雀の鳴き声を遠くに聞きながら学校へと続く坂道を上る。
桜はもう散ってしまっている。
相変わらず、周りには私と同じような服装の生徒たちが歩く。
服装以外の部分を見ると、個性がそれぞれ生きている。
今日も、私は藍色のヘッドホンを頭に着ける。
流れる音楽はロック。
激しく場を包むドラムの音。
脳の奥まで響き渡るようなギターの音。
足の先を掴むようなベースの音。
そして、全身を震わせてくれるような歌声を持つ歌手が声を張る。
気分はいつも通り。
何事も起きないことを祈りながら平静を装う。
大きな門をくぐり、静かにあの教室に向かう。
1-2
クラスの戸を開けると、音を聞かなくても分かるほど騒ぐ面々が揃っている。
入学してから約1か月が過ぎた頃。
それほどの短い時間で意気投合しあえる仲間ができているのだ。
彼らを羨む気持ちは、ゼロではない。
ゆっくりと席に着く。
例え、私一人孤立していたとしてもこのクラスは変わらず存在する。
それほど自由なのだろう。
鞄の中から読みかけの本を取り出す。
読みかけのページには、音符マークの可愛い栞が挟まっている。
小さなときに、私が作ったものだろう。
記憶にないが、とても大切に使っている。
クラスの騒がしさを背中で感じながらページをゆったりとめくり読み進めた。
チャイムが鳴る。
目の前には、田中先生が立っている。
ホームルームの時間だ。
1日の移動教室や、その他配布物。
数日の内に慣れたその風景が繰り返される。
教師が壇上に立つと、ある程度の静まりがやってくる。
この教室は、とても環境がいいのだろう。
机の隅に読みかけの小説を置き、田中先生の言葉に耳を傾けるために、少し音量を下げる。
「今日も1日頑張りましょう。では、号令お願いします。」
その言葉で締めくくられる。
号令が終わり、先生好きな女生徒たちは、田中先生を囲んで話をする。
今日の髪型が綺麗だとか、服装がかわいいだとか。
田中先生も同じく褒めているようだ。
遠目でそれらを見ながら私は、次の時間の準備をする。
机の上には、必要な教科書や筆記用具などを揃え、準備はできている。
少し見渡せば、まだ楽しそうに騒ぐクラスメイトの姿を見かける。
チャイムが鳴り、1限目が始まる。
1限目は数学だ。
松田という教師の担当だ。
白髪の生えた40代くらいの先生で、面白おかしく数学を教えようとしてくれる。
頼れる先生の代表格のような存在だ。
クラスの面々からは、まっちゃんやまっさんなど呼ばれ親しまれているようだ。
私は、対照的に先生との距離の取り方に戸惑い、松田先生と丁寧に呼んでいる。
私にとって、少し手の届かない所にある数学も、松田先生のお陰で理解が進んでいるはずだ。
授業の始まりはいつものように前回分の復習から始まり、今回の授業とその発展問題。
日によっては、少し雑談が多くなり時間がつぶれることがあるが、もしかしたらそこが人気の秘訣かもしれない。
2限目は歴史だ。
塚内先生というおじいちゃん先生が教えてくれている。
綺麗なスキンヘッドが輝く笑顔が素敵な先生だ。
パワーポイントや、映像資料を使って分かりやすく教えてくれている。
たまに、雑学のようなものが入り面白い話や悲しい話など、広い知識で勉強のお手伝いができる先生だ。
課題の提出を忘れる男子生徒たちからは、寛容な態度で許す姿から塚内様と呼ばれている。
いろいろと輝いて見えるが、気のせいだ。
私は、4限まである授業を何とか耐え抜き、お昼の時間を迎えた。
耳に流れるのは、かわいらしい音が響く、変わった音楽だ。
お昼ご飯は、母の作ったお弁当。
程よい甘さの卵焼きが、私のお気に入りだ。
周りで固まって食べる人たちを置いて、一人で黙々と音楽とともにご飯を食べ進めた。
心の中で考えることといえば、苦手な目の前にあるトマトだ。
あの謎の感触が苦手なのだが、母は止まらない。
意を決して、一つ口に運ぶ。
ぐにりとしたジェル状のアレが歯に当たる感覚が、何とも言えない不快感を引き起こす。
呑み込めるほどに噛み、お茶で流し込む。
あと一つ残っていることを目の当たりにすると、聞こえないため息を漏らしてしまう。
激闘の末、弁当を空にして本を読む。
朝から続きが気になっていた。
朝という短時間の暇つぶしには最適だが、短時間ゆえに続きが気になって仕方がない。
耳に流れる音楽をBGMとして読み進める。
丁度、感動的なシーンだ。
このシーンは、ここでは読みたくないと思ってしまっている自分がいる。
我儘だと言い聞かせる。
それほどまでにこのシーンはゆったりと読んでいたい。
いつも通りの昼休憩。
変わらず騒がしい教室。
でも、意外と居心地の良さを感じる不思議さ。
そして、1日は流れ、終わる。
変わり映えない午後の授業も終わる。
わかりやすく教師陣から教わり、満足。
静かに教室を後に、自宅へと向かう。
部活をしない私にとって、帰り道はあまりにも静かだ。
朝と違い、ちらほらと見かける生徒たち。
そして、少し赤みがかった空を見上げ、静かなジャズの音楽に揺られながら校舎を後にする。
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