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4章 三国鼎立

益州騒乱

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 丘力居が帰り、簡雍の元へと戻る義賢。
 簡雍「おや、話は済んだのかい?」
 義賢「あぁ、憲和。一緒に聴いているもんだとばかり思っていたがいつの間にかいなくなってるんだもんな」
 簡雍「アッシは、何回も聞かされてるからなぁ。外交官ってのも楽じゃないよ。全く、最近は元徳のやつだけじゃなく荀彧殿や諸葛亮もこき使ってくるからねぇ」
 義賢「憲和は、諸葛亮とは合わない?」
 簡雍「玄徳が3回も訪れて迎え入れた男とは聞いていたが、あそこまで厳格な感じだとこっちは疲れるってのが本音さ。そのくせして、なんでも口を出したがるから辟易してる奴はアッシ以外にも居るんじゃないかねぇ。元徳のお気に入りだから皆、良くも悪くも何もいえないのさ。その点、徐庶殿は気さくで良いやつだ。皆、徐庶殿に愚痴を聞いてもらって発散してるってのが現状さ」
 義賢「俺も民に降格されたしな。ハハハ」
 台所から董白の声が聞こえる。
 董白「それは義賢の自業自得でしょ。いくら民の無念を晴らすためとはいえ、無惨にも全滅させたんだから。李杏ちゃん、パン作りは大変なのよ。もうちょっとこねる」
 槃李杏「はい。董白姐様」
 義賢「全くごもっともで。夕食はパンか。憲和も食べていくだろ?」
 簡雍「いや。この話が終わったら、家に帰るさ」
 義賢「そうか」
 また台所から董白の声が聞こえる。
 董白「パンだけじゃなくてシチューもあるわよ」
 義賢「(俺と暮らして、董白にはパンだのシチューだの色々な言葉を教えたな。夜の生活の隠語なんかも)フフフ」
 董白「何、笑ってんのよ。気持ち悪いわね」
 義賢「いや、俺のことを支えてくれる董白が愛おしくなっただけさ」
 董白「なっなっ何言ってんのよ!(愛おしいだなんて、私の方が義賢のこと愛おしいんだからね)」
 槃李杏「赤くなってる董白姐様、可愛い」
 董白「赤くなってないから!もうそこ、また間違えてるわよ」
 槃李杏「あっ。だって、野菜を切るのがこんなに難しいなんて、肉もこんなに叩くなんて」
 董白「そのまま入れたら大きくて食べられないでしょ。肉は、叩いた方が身がしまって美味しくなるのよ。わかった?」
 槃李杏「はい。董白姐様」
 簡雍「楽しそうですな」
 義賢「あぁ。そうだな」
 簡雍「最後に益州について、話をしておくとするかね」
 義賢「益州?劉璋と張魯だっけ?まだ争ってんのか?」
 簡雍「あぁ、劉璋は漢中を得るため幾度も侵攻を重ねている。それこそ、私怨でもあるかのようにねぇ」
 義賢「私怨?そういや、さっき丘力居殿からなんか聞いたな。劉焉だったか?」
 簡雍「劉焉殿なら亡くなったと」
 義賢「それが、張角殿の作った診療所の療養施設にいたらしいんだよな」
 簡雍「はっ?あの診療所に何のようで?」
 義賢「いや、もうだいぶ歳だし、呆けが始まってるのか。張宝殿のことを張姜子って人と勘違いしてるみたいで、産まれてくる子は劉璋と名付けようとか。そんなことを口走っていたとか。あり得ないよな」
 簡雍「いや、確か張姜子を取り合って、劉焉と張衡が争って、張衡が勝ったとか。でも劉璋の産まれに関しては、疑問が多くい点もある。老人の呆けと断言するのは、浅はかかも知れないよ。それに、そうなら自分を捨てた母への復讐っていう私怨って捉えることもできる。それぐらい劉璋の漢中への執着は常軌を逸しているさ」
 義賢「でも、あり得ると思うか?俺は劉焉が単に混同しているだけだと思っているんだが」
 簡雍「うーむ。真意はわからんが。昔のことはよく覚えている。みたいな感じなのかも知れん」
 義賢「認知症ってやつか?」
 簡雍「認知症?その言葉は知らないが。歳をとったものの中には、突然豹変したり、妄想に取り憑かれたり、暴れるものがいると聞く。その類なのではないか?」
 義賢「にわかには信じられないが。だとしたら。劉璋と張魯は種違いの兄弟?」
 簡雍「種違いってお前さん。言い方が露骨すぎやしないかい。父違いで良いだろう」
 義賢「わかりやすいかなと」
 簡雍「いや、父違いの方がわかりやすいのではないかい」
 義賢「まぁ、どっちでも良いだろ」
 簡雍「はぁー。お前さんのそういう気配りのないところが女性にモテないんじゃないかね。董白殿も苦労するわけだ」
 台所から董白の声が聞こえる。
 董白「簡雍殿、わかってくれた。本当、苦労すんのよ義賢といるのは」
 槃李杏「その割に董白姐様は、楽しそうです」
 董白「もう、李杏ちゃん。そういうことは言わないの。ほら、鍋ちゃんとみないと。火加減もね」
 槃李杏「はわわ」
 義賢「俺は董白といるのすごく安心するしホッとするけどな」
 董白「義賢は、私にもっと感謝しなさいよ(私も同じ気持ちよ。もっと早く死ぬ運命だったのを救ってくれたのは、義賢と出会えたことなんだからね。でも、そういうことは言ってあげないんだから)フフッ」
 義賢「そこ、笑うところじゃないだろ!」
 董白「キザなセリフだったものだから。つい、ね」
 義賢「恥ずかしくなるだろ」
 簡雍「いや、聞いてるこっちが恥ずかしいんだけどねぇ」
 義賢「悪い悪い。で、憲和のその口ぶりからして、何かあったのか?」
 簡雍「あったなんてもんじゃないさ。涼州の馬超が華北に向かったのを良いことに、漢中への侵攻を開始したのさ」
 義賢「成程。かつての兄上に対しての包囲網のとき、馬超殿がこちらについてくれたことで警戒していたところ。馬超殿が曹操側として参戦したのを見て、行動を開始したわけだな」
 簡雍「そういうことさ。では話すとするかね」
 簡雍から益州のことが語られる。
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