えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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5章 天下統一

2人の英雄

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 ここに天に選ばれた2人の英雄がいる。
 1人は、覇道に生き、大義のために小さな犠牲を厭わないが家族への甘さゆえ、好機を逃した男、名を曹孟徳と言う。
 もう1人は、王道に生き、大義のための小さな犠牲さえも嫌だと抗い、家族をとても大切にし、共に歩み、ここまで来た男、名を劉玄徳と言う。
 劉備も曹操もこの世界においては、呪術を用いたとんでもない人災を受け、立て直すまでに5年の停戦を結んだ。
 そして、この日2人の英雄は、かつて曹操と袁紹が雌雄を決した場所である官渡にて、戦いの前、最後の会話を交わしていた。

 劉備「曹操、私は必ずお前を倒し、天下に安寧をもたらして見せる」

 曹操「劉備、俺はこの5年、今日のことを楽しみに待っていた。黄巾の乱の時より、お互い長かったな。天がどちらかを選ぶかなんて瑣末なことなどどうでも良い。俺はお前を倒しこの手に天下を掴む」

 劉備「(これほどまでの重圧のかかる圧倒的気迫とは。やはり曹操殿は侮れない男だ)」

 曹操「(良い目をするようになった。天を見据える英雄の目だ。だからこそ、俺はこれが例え暗躍する者たちの罠であったとしてもお前との最期の戦いを楽しみたいのだ。俺の全てを賭けて、お前を叩き潰してやるゆえ覚悟せよ。義勇兵から成り上がりし人徳の英雄、劉備よ)」

 2人は停戦明けの宣言をして、これより一週間後、開戦となることを約束した。

【曹操陣営】

 夏侯惇「孟徳、本気か!兗州と豫州を防衛するなど」

 曹操「あぁ。兗州に来るのは戦国最強と名高き名将、呂奉先だろう。こちらも防衛において、我が軍最強の男を置かなければ、防衛は無理だ。だから子考を置く」

 曹仁「承知。兗州は某にお任せを」

 夏侯淵「つっても、本当にあの呂布が攻めてくんのかねぇ。劉備に仕えてからは、牙が抜けたみたいに大人しいと思うんだがよ」

 郭嘉「曹操殿の読み通り、間違いなく動くと思うよ。呂布にとってもっとも守りたい相手が青州にいるわけだからね。それに呂布にとって兗州は全く知らない場所じゃない」

 陳宮「やはりあの時、討てなかったのは失敗だったか」

 曹真「それにしても更地の青州に劉備の弟の劉丁を送り込み要塞化するとは。向こうも厄介な相手を送り込んできましたな」

 曹休「誰が来ようとも殿のため、青州を奪還するのみ」

 曹純「虎豹騎隊の準備はできております」

 曹操「劉丁か(あの男は全く得体が知れない。黄巾の乱の首謀者を守り抜き、悪虐の限りを尽くすと言われた董卓が成り代わっていた霊帝様であると見抜き、それも保護した。そして、子桓が献帝様から帝を奪い魏王となったところで、霊帝様を伴い蜀漢を建国して、出鼻を挫いた。あの馬鹿息子にもう少し、先を見通す目があれば、ここまで人心が離れることはなかったのだが。だから立て直しに5年は短すぎたのが本音だ。用意できた兵は居ようとも。肝心要の将は、我が義兄弟たちを頼らざるを得ないのだからな。だがさらに時をかければ俺か劉備の寿命が先に来るかもしれん)曹休に曹純よ。決して無理はするな。劉丁を青州に閉じ籠らせることができるだけ、相手に大きな痛手を与えられるのだからな」

 曹休・曹純「はっ!」

 郭嘉「それにしても豫州の守りを満寵殿に任せるとは、流石だね」

 曹操「兗州と豫州無くして、天下を掴むことは不可能。俺は暗殺は好かんからな」

 郭嘉「あくまで正面から正々堂々と劉備と打ち合いたいわけだね。いやはや覇道を突き進む人が最後はなんと王道なことかな」

 曹操「俺は今楽しいのだ。皆と大暴れできるのもこれが最期だろう。だからこそ、俺はここにいる皆と勝利の美酒を分かち合いたいのだ」

 郭嘉「高級な酒をお願いしますよ殿」

 曹操「勿論だ」

【劉備陣営】

 劉備「呂布殿が兗州に向け、出陣した!?」

 諸葛亮「恐らく少しでも劉丁殿の負担を減らそうと考えたのでしょう。呂布将軍にとっても兗州は勝手知ったる土地です」

 霊帝「それだけではないだろう。ワシも呂布も婿殿には返しきれない恩がある。青州に赴任した時から呂布の奴は、我らに意図を悟らせぬように軍備を密かに増強し、兗州攻めの準備を整えていた。出陣したのなら勝利を信じるしかあるまい」

 荀彧「荀攸」

 霊帝「甥が心配なのはわかるが。呂布を止めなかったということは」

 荀彧「分かっています。勝算があると睨んだのでしょう」

 伝令「報告、袁燿様が兵を率いて豫州へ侵攻を開始!」

 劉備「袁燿が!?」

 諸葛亮「袁燿たちも劉丁殿には数えきれない恩があります。その恩を返すべく少しでも青州の劉丁殿に向かう兵力を足止めするつもりなのでしょう」

 霊帝「特に袁燿は、皇帝を勝手に名乗った袁術の子として、散々言われたこともある。それを守り通していたのは、婿殿だ。劉備よ。婿殿は、犠牲など厭わないなどと口で言っておきながら、いつだって、お前の意思に寄り添っていた。アイツが紡いだ絆を信じよ。お前は堂々としておれ」

 劉備「は、はい」

 張飛「大兄者は、身内に甘えからなぁ」

 関羽「翼徳。その言葉は某にとっても耳が痛い話だ」

 張飛「まぁ、俺の息子は伸び伸びしすぎちまってるけどよ」

 曹操は兗州と豫州は防衛に徹することを伝え、攻め先には青州と司隷の玄関口、洛陽を選ぶ。
 対する劉備は、呂布・袁燿の度重なる出陣に驚かされつつも、見守ることを選択、支援に徹することとする。
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